第三者配信ネットワークへ広告枠を提供する契約書。クッキー等の送信は電気通信事業法第27条の12、個人関連情報は個人情報保護法第31条に対応させる。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
アドネットワーク配信契約書
第1部: 書式本文
〇〇〇〇(以下「甲」という。配信事業者)と〇〇〇〇(以下「乙」という。媒体運営者)とは、乙が運営するウェブサイト又はアプリ(以下「本媒体」という。)に甲のアドネットワークを通じて第三者広告を配信することについて、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 甲は、甲のアドネットワークを通じて広告主の広告を本媒体上の広告枠に配信し、乙はこれを許諾する。
第2条(広告枠の提供) 乙は、本媒体上の別紙に定める広告枠を甲に提供し、甲は当該広告枠に第三者広告を配信する。
第3条(タグの設置及びクッキー等の送信) 1. 乙は、甲が指定する配信用タグを本媒体に設置する。 2. 甲が配信する広告に関連し、利用者の端末にクッキーその他の識別子を送信し、又は利用者の端末に記録された情報を外部に送信する場合、甲及び乙は、電気通信事業法第27条の12(送信先ごとの通知等の規律。いわゆる外部送信規律)に定める通知又は公表の措置を講ずる。 3. 前項の措置の具体的な実施方法及び役割分担は別紙のとおりとする。
第4条(個人関連情報の第三者提供) 1. 甲が本媒体を通じて取得するクッキー等の識別子に紐づく情報が個人情報保護法第2条第7項に定める個人関連情報に該当し、これを甲から広告主その他の第三者に提供する場合であって、提供先において個人データとして取得することが想定されるときは、甲は同法第31条第1項の規定に従い、提供先による本人同意の取得状況の確認等の措置を講ずる。 2. 乙は、甲が前項の措置を適切に講ずることができるよう、本媒体における情報取得の実態について甲に必要な情報を提供する。
第5条(プライバシーポリシーの整備) 乙は、本媒体のプライバシーポリシーにおいて、甲のアドネットワークを通じた第三者広告配信及びクッキー等の利用について、利用者が理解できる方法で説明する。
第6条(広告収益の分配) 甲は、本媒体への広告配信により生じた広告収益から甲の手数料を控除した金額を、別紙に定める方法により乙に分配する。
第7条(不適切な広告の除外) 1. 乙は、甲に対し、法令に違反する広告、乙の運営方針に反する広告その他不適切と判断する広告カテゴリの配信除外を申し入れることができる。 2. 甲は、前項の申入れを受けた場合、技術的に可能な範囲で当該カテゴリの広告の配信を停止する。
第8条(不正クリック及び不正インプレッションへの対応) 甲は、不正な手段により発生したクリック又はインプレッションを検知した場合、当該分を収益計算から除外することができる。
第9条(タグ設置に起因する不具合) 乙は、甲が指定する配信用タグの設置により本媒体の表示速度又は動作に不具合が生じた場合、甲に対しその旨を通知し、甲は合理的な範囲で技術的な対応を行う。
第10条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の履行の過程で知り得た相手方の営業上の秘密情報を第三者に開示してはならない。
第11条(契約期間) 本契約の有効期間は〇年間とし、期間満了の1か月前までにいずれかの当事者から書面による終了の申出がない限り、同一条件で1年間自動更新される。
第12条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 配信事業者向けの修正
A-1. 外部送信規律の実施義務の乙への一部移転
修正後:「本媒体における通知又は公表の実施(表示文言の掲載及び画面上の配置を含む。)は乙の責任において行うものとし、甲は通知又は公表に必要な情報を乙に提供するにとどまる。」 一言解説: 配信事業者は多数の媒体を横断的に取り扱うため、媒体固有の画面設計に関わる通知・公表の実装自体は媒体運営者の責任とする修正である。
A-2. 個人関連情報の提供先確認義務の限定
修正後:「甲は、広告主が個人情報保護法第31条第1項に定める本人同意を適切に取得していることについて、広告主との契約上の表明保証を得ることをもって、確認義務を履行したものとみなす。」 一言解説: 配信先の広告主ごとに個別に実態確認することは実務上困難であるため、契約上の表明保証取得をもって確認手続とする配信事業者側の簡素化である。
B. 媒体運営者向けの修正
B-1. 不適切広告除外申入れへの対応期限の設定
修正後:「甲は、乙からの配信除外の申入れを受けた場合、7営業日以内に技術的対応の可否を回答し、対応可能な場合は14日以内に配信を停止する。」 一言解説: 除外申入れへの対応が遅延すると媒体の信頼性が損なわれるため、媒体運営者側は具体的な対応期限を求める修正である。
B-2. タグ設置による表示速度低下時の収益補填
追加条文例:「甲の配信用タグの設置により本媒体の表示速度が別紙に定める基準を超えて低下したことが確認された場合、甲は原因究明及び改善を行うとともに、改善までの期間について広告収益の分配率を乙に有利に調整する。」 一言解説: 広告タグによるページ表示速度の低下は媒体のユーザー体験や検索順位に影響するため、媒体運営者側が補償措置を求める修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、媒体運営者が自社サイト・アプリの広告枠を第三者配信ネットワーク(アドネットワーク)に提供し、複数の広告主の広告を自動的に配信させる場面で用いる。他方、特定の広告主と直接交渉して固定枠の広告を掲載する場合には、広告媒体掲載契約書を用いるべきであり、本書式はネットワーク経由の自動配信を前提とする点で異なる。
根拠法令 本契約で特に重要な法令は、令和5年施行の改正電気通信事業法第27条の12(いわゆる外部送信規律)である。同条は、電気通信事業者又は第三者に対し、利用者の端末に対して情報を送信させる指令を行う際に、当該送信される情報の内容や送信先について、利用者にあらかじめ通知し、又は容易に知りうる状態に置くことを義務付けている。アドネットワークによるクッキー等を通じた情報収集はこの規律の典型的な適用場面であり、媒体運営者と配信事業者のいずれが通知・公表の実装主体となるかを契約上明確にしておく必要がある。あわせて、個人情報保護法第31条は、個人関連情報(生存する個人に関する情報であって個人情報、仮名加工情報及び匿名加工情報のいずれにも該当しないもの)を第三者に提供する場合において、提供先が個人データとして取得することが想定されるときは、提供元が本人同意の取得状況等を確認する義務を負う旨を定めている。クッキーに紐づく識別子情報を広告主に提供する場合に、この規律が適用されうる点に留意が必要である。
実務でよくある失敗と対策 第一に、外部送信規律への対応義務が配信事業者・媒体運営者のいずれの責任か曖昧なまま運用し、通知・公表の実装が漏れる失敗がある。第3条及びA-1のように役割分担を契約上明記することが対策となる。第二に、個人関連情報の第三者提供規制(個人情報保護法第31条)への対応を、広告主の数が多いことを理由に事実上放置してしまう失敗がある。A-2のように、少なくとも契約上の表明保証取得の仕組みを整備することが対策となる。第三に、不適切な広告(アダルト、詐欺的商材等)が配信され、媒体の信頼性が損なわれても、除外申入れの実効性を担保する条項がなく対応が後手に回る失敗がある。B-1のような対応期限の明記が対策となる。
外部送信規律及び個人関連情報の第三者提供規制への該当性は情報の取得方法や提供先の利用実態によって異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 広告枠の提供範囲及び配信用タグの設置箇所を特定したか
- [ ] 電気通信事業法第27条の12(外部送信規律)への対応の役割分担を明確にしたか
- [ ] 個人関連情報の第三者提供(個人情報保護法第31条)への対応方法を確認したか
- [ ] プライバシーポリシーにアドネットワーク利用について記載したか
- [ ] 広告収益の分配方法及び手数料率を定めたか
- [ ] 不適切な広告カテゴリの除外申入れの手続及び対応期限を定めたか
- [ ] 不正クリック・不正インプレッションの検知時の収益調整方法を定めたか
- [ ] タグ設置による表示速度低下等の不具合発生時の対応を定めたか
- [ ] 秘密保持義務の対象範囲(収益データ等)を確認したか
- [ ] 契約終了時のタグ撤去及びデータ取扱いの終了方法を定めたか