サービスにAIを用いる旨と入力データの学習利用を説明し同意を得る書面。個人情報保護法第21条の利用目的の通知公表と出力の限界の説明責任に対応。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
AI利用に関する顧客説明・同意書
第1部: 書式本文
第1条(本書の目的) 本書は、〇〇〇〇(以下「当社」という。)が提供するサービス〇〇〇〇(以下「本サービス」という。)においてAI技術を利用することについて、利用者に説明し、その同意を得ることを目的とする。
第2条(AIの利用箇所) 当社は、本サービスの次の機能においてAI技術を利用する。 一 〇〇〇〇(例:チャットボットによる問い合わせ対応) 二 〇〇〇〇(例:入力内容に基づくレコメンデーション) 三 〇〇〇〇(例:文書の自動生成・要約)
第3条(入力データの取扱い) 1. 当社は、利用者が本サービスに入力した情報(以下「入力データ」という。)を、本サービスの提供及び品質向上の目的で利用する。 2. 当社は、入力データを外部のAIサービス提供事業者に送信して処理する場合、送信先の名称及び当該事業者における入力データの取扱い(学習データとして利用されるか否かを含む。)について、別紙のとおり説明する。 3. 入力データに個人情報が含まれる場合、当社は個人情報保護法第21条に定める利用目的の通知又は公表の義務に従い、本書及び当社プライバシーポリシーにおいてその利用目的を明示する。
第4条(出力内容の限界に関する説明) 1. 当社は、本サービスのAI機能により生成される回答、提案又は文書(以下「AI出力」という。)について、その内容の正確性、完全性又は特定の目的への適合性を保証するものではないことを説明する。 2. AI出力には、事実と異なる内容が含まれる場合があり、利用者は、重要な判断を行うにあたり、AI出力の内容を鵜呑みにせず、必要に応じて自ら情報の裏付けを確認することが望ましい。
第5条(人による最終確認の要否) 当社は、本サービスにおいて、契約締結や重要な意思決定に関わる場面ではAI出力のみに基づいて処理を完結させず、当社の担当者による最終確認を経る運用としていることを説明する。(当該運用がない場合は、その旨を明示する。)
第6条(同意の取得) 利用者は、本書の内容を理解したうえで、本サービスのAI機能の利用及び入力データの取扱いに同意するものとする。
第7条(同意の撤回) 利用者は、いつでも本サービスのAI機能の利用停止(利用可能な場合)又は退会を申し出ることができる。ただし、AI機能が本サービスの中核的な機能である場合、AI機能のみの利用停止は技術上できない場合があることを、当社は別紙のとおり説明する。
第8条(問い合わせ窓口) 利用者は、本サービスのAI機能に関する疑問又は苦情について、当社の別紙記載の窓口に問い合わせることができる。
第9条(本書の変更) 当社は、本サービスの機能変更又は法令の改正等に応じて、本書の内容を変更することがあり、変更後の内容は当社ウェブサイトへの掲示により周知する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 提供事業者向けの修正
A-1. 保証否定文言の強化
修正後:「AI出力の内容に起因して利用者に生じた損害について、当社は、当社の故意又は重過失による場合を除き、責任を負わない。」 一言解説: AI出力の性質上、完全な正確性を保証できないことを踏まえ、責任範囲を限定する事業者側の修正である。
A-2. 外部AIサービス利用に関する包括的説明への簡素化
修正後:「当社は、本サービスの提供にあたり複数の外部AIサービスを組み合わせて利用する場合があり、個別の送信先を逐一開示することに代えて、外部AIサービスにおいて入力データが学習に利用されない契約上の取決めを行っていることを説明するにとどめる。」 一言解説: 利用する外部AIサービスが多岐にわたり頻繁に変更される場合、個別列挙に代えて包括的な説明とすることで運用負荷を下げる修正である。
B. 顧客向けの修正
B-1. 個別送信先の開示請求権の追加
追加条文例:「利用者は、当社に対し、自己の入力データが送信された外部AIサービス提供事業者の名称の開示を求めることができ、当社は合理的な範囲でこれに応じる。」 一言解説: 自己の情報がどの事業者に渡っているかを把握したい利用者のため、開示請求権を明記する修正である。
B-2. 人による確認プロセスの適用範囲の拡大
修正後:「当社は、契約締結及び重要な意思決定に関わる場面に加え、利用者から異議が述べられた場合には、当該場面についてもAI出力のみに基づく処理を行わず、当社担当者による確認を経るものとする。」 一言解説: AIによる自動処理への異議申立ての機会を利用者に確保し、人による再確認を求められる場面を拡大する修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、チャットボット、レコメンデーション機能、自動文書生成機能等、AI技術を組み込んだサービスを一般消費者又は事業者顧客に提供するにあたり、AI利用の事実と入力データの取扱いについて説明し、同意を取得する場面で用いる。他方、自社内の業務効率化のために従業員が生成AIを利用する場面には適さず、社内向けには生成AI利用ガイドラインを別途整備すべきである。
根拠法令 本書式の中核は個人情報保護法第21条に定める利用目的の通知・公表義務である。同条第1項は、個人情報取扱事業者が個人情報を取得した場合、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかにその利用目的を本人に通知し、又は公表しなければならない旨を定める。AI機能により入力データを外部のAIサービス提供事業者に送信して処理する構成をとる場合、この送信及び処理の実態が「利用目的」の内容として利用者に適切に伝わっている必要があり、単に「AIを利用しています」という抽象的な説明では、個人情報の取扱いに関する実質的な説明責任を果たしたとはいえない可能性がある。また、AI出力の内容が誤りを含みうることについて事業者がどこまで説明責任を負うかは法律上明文の規定があるわけではないが、消費者契約法第4条の不実告知・不利益事実の不告知に関する規律や、事業者の説明義務違反による不法行為責任(民法第709条)に関する一般法理が適用されうる場面であり、AI出力の限界について誠実に説明しておくことが、後日の紛争予防の観点から重要である。
実務でよくある失敗と対策 第一に、AI機能の利用について「本サービスはAIを活用しています」といった抽象的な説明にとどまり、入力データがどの外部事業者に送信され、どのように取り扱われるか(学習に利用されるか否か)が利用者に伝わらない失敗がある。第3条第2項のように送信先及び取扱い内容を具体的に説明することが対策となる。第二に、AI出力の内容を利用者が全面的に信頼し、誤った情報に基づいて意思決定を行った結果生じたトラブルについて、事業者が「AIの限界について説明していなかった」との指摘を受ける失敗がある。第4条のように出力内容の限界について明確に説明することが対策となる。第三に、重要な意思決定(与信判断、採用選考等)がAIのみによって自動的に行われているにもかかわらず、その旨が利用者に説明されておらず、後日プロファイリングやAIによる自動判断への懸念が問題視される失敗がある。第5条のように人による確認の有無を明示することが対策となる。
AI利用に関する説明義務の具体的な範囲は、サービスの性質や利用者の属性(消費者か事業者か)によって異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] AI技術を利用する機能を具体的に列挙したか
- [ ] 入力データの外部AIサービスへの送信の有無及び送信先を説明したか
- [ ] 送信先における入力データの学習利用の有無を確認・説明したか
- [ ] 個人情報保護法第21条の利用目的の通知・公表義務を満たしているか確認したか
- [ ] AI出力の正確性・完全性を保証しない旨を明記したか
- [ ] 重要な意思決定における人による最終確認の有無を明示したか
- [ ] 同意の取得方法(明示的な同意画面等)を確認したか
- [ ] 同意撤回及び利用停止の可否・方法を定めたか
- [ ] 問い合わせ窓口を設置したか
- [ ] 本書の変更時の周知方法を定めたか