建設現場で元方事業者と関係請負人が安全衛生協議組織を運営するための協定書。労働安全衛生法の統括安全衛生責任者の職務を踏まえ、災害防止措置と会議の開催を定める。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
安全衛生協議会に関する協定書
第1部: 書式本文
安全衛生協議会に関する協定書
【元方事業者名】(以下「甲」という。)と、本工事現場において作業を行う関係請負人各社(以下「乙」と総称する。)は、労働災害の防止を目的とする安全衛生協議組織の運営に関し、次のとおり協定(以下「本協定」という。)を締結する。
第1条(目的) 本協定は、【工事名称・現場名】(以下「本現場」という。)における混在作業に伴う労働災害を防止するため、甲及び乙が組織する安全衛生協議会(以下「本協議会」という。)の設置目的、構成、運営方法及び関係者の義務を定めるものとする。
第2条(設置) 甲は本現場に本協議会を設置し、その事務局を運営する。乙は本現場において作業を行う限り、本協議会の構成員として参加する義務を負う。
第3条(構成員) 1. 本協議会は、甲が選任する統括安全衛生責任者及びその補佐者、並びに乙各社が選任する安全衛生責任者をもって構成する。 2. 乙は、本現場における作業開始前に、自社の安全衛生責任者を選任し、その氏名を甲に届け出る。 3. 新たに本現場での作業に参加する関係請負人が生じたときは、甲は当該関係請負人に対し本協議会への参加手続を速やかに案内し、乙は当該関係請負人を第2項の届出後、直ちに本協議会の構成員に加える。
第4条(開催頻度) 本協議会は、毎月1回以上、定例で開催するほか、甲が必要と認めたとき又は乙の過半数から要請があったときは臨時に開催する。
第5条(協議事項) 本協議会は、次の各号に掲げる事項について協議する。 (1) 作業間の連絡及び調整に関する事項 (2) 本現場における労働災害の防止対策に関する事項 (3) 使用する機械、設備及び有害物に関する情報の共有 (4) 新規入場者に対する安全衛生教育の実施状況の確認 (5) その他労働災害の防止に関し甲又は乙が必要と認める事項
第6条(参加義務及び代理出席) 乙は、自社の安全衛生責任者又はこれに代わる者を本協議会に出席させる。やむを得ない事情により安全衛生責任者が出席できないときは、乙は代理者を選任し出席させるものとし、代理者の権限は安全衛生責任者と同等とする。
第7条(統括安全衛生責任者の職務) 甲が選任する統括安全衛生責任者は、本協議会の運営のほか、作業間の連絡調整、作業場所の巡視、乙が行う安全衛生教育に対する指導及び援助その他労働安全衛生法第30条第1項各号に定める事項を統括管理する。
第8条(災害発生時の連絡・報告体制) 1. 本現場において労働災害又はこれに準ずるおそれのある事象(以下「災害等」という。)が発生したときは、当該災害等を認知した乙は、直ちに甲の統括安全衛生責任者に報告する。 2. 甲は、前項の報告を受けたときは、負傷者の救護その他必要な措置を講じるとともに、遅滞なく本協議会の構成員に対し災害等の内容及び再発防止策を周知する。 3. 甲は、労働基準監督署への報告その他法令上必要な手続について、関係する乙に対し協力を求めることができる。
第9条(議事録の作成・保存) 甲は、本協議会の開催のつど議事録を作成し、これを本現場に備え置くとともに、本現場の工事完了後【 】年間保存する。
第10条(費用負担) 本協議会の運営に要する費用は、甲が負担する。ただし、乙が本協議会への参加に伴い自ら負担すべき費用(自社従業員の労務費等)については乙の負担とする。
第11条(是正指示) 甲は、乙が本現場における労働災害防止対策を遵守していないと認めるときは、当該乙に対し是正を指示することができ、乙は正当な理由なくこれを拒むことができない。
第12条(有効期間) 本協定の有効期間は、本現場における工事の着工日から完成日までとする。
第13条(協議事項) 本協定に定めのない事項について疑義が生じたときは、甲乙誠実に協議して解決する。
以上を証するため本協定書を作成し、甲及び乙各社が記名押印のうえ、それぞれ1通を保有する。
【締結日】 甲(元方事業者)【住所・商号・代表者名・印】 乙(関係請負人)【住所・商号・代表者名・印】(各社分)
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 元方事業者に有利な修正例
A-1. 協議会不参加時の作業停止権 「乙が正当な理由なく本協議会に3回連続して欠席したときは、甲は当該乙に対し、是正されるまでの間、本現場における作業の全部又は一部の停止を求めることができる。」 一言解説: 協議会が名目化することを防ぐため、継続的な欠席に対する実効的な措置を元方に付与する修正である。
A-2. 議事録確認・押印義務 「本協議会に出席した乙の安全衛生責任者は、当該回の議事録の内容を確認し、署名又は押印するものとする。」 一言解説: 議事録が形式的に作成されるだけで内容の正確性が担保されない事態を防ぎ、出席者による内容確認を義務化する。
B. 関係請負人に有利な修正例
B-1. 協議会での是正要求権 「乙は、本協議会において、他の関係請負人の作業に起因して自社の作業員の安全に危険を生じさせるおそれがあると認める事項について、甲に対し是正を求めることができ、甲は合理的な期間内にその対応結果を乙に報告する。」 一言解説: 元方主導になりがちな協議会運営に対し、下位の請負人からも具体的な是正要求ができる双方向の仕組みを設ける。
B-2. 新規参入時の受入手続の明確化 「甲は、乙のうち新たに本現場での作業を開始する者に対し、作業開始日の前日までに本協議会への参加案内及び直近の議事録の写しを提供するものとする。」 一言解説: 新規参入業者が協議会の存在や過去の協議内容を把握しないまま作業を開始することを防ぎ、情報格差を解消する。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面の解説 本書式は、建設工事の現場において元方事業者と複数の関係請負人が混在して作業を行う場合に、労働災害防止のための協議組織を正式に立ち上げる場面で用いる。単独の事業者のみが作業する現場や、関係請負人が常時10人未満の小規模な現場等、法令上の統括管理義務の対象とならない現場にまで形式的に適用する必要はない。
根拠法令の解説 労働安全衛生法第30条は、建設業その他政令で定める業種の元方事業者で、その労働者及び関係請負人の労働者が同一の場所で作業を行うことによって生じる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、作業間の連絡及び調整、作業場所の巡視その他同条第1項各号に定める事項を統括管理させなければならないと定める。同法第30条の2は、これに準じる規模の現場について、注文者が請負人に対し安全衛生協議組織の設置及び運営その他労働災害防止に関する必要な措置を講じなければならない旨を定めており、元方事業者としての立場にない注文者にも同様の協議組織運営の枠組みが及ぶ場合がある。
実務でよくある失敗と対策の解説 第一に、協議会を設置した旨を書面上整えるだけで、実際には毎月の開催がされず、議事録も作成されないまま形骸化する例がある。第4条及び第9条のように開催頻度と議事録作成・保存を条文で明確に義務付け、A-2のように出席者に議事録確認を求めることが対策になる。第二に、工事途中から現場に加わる新規参入の関係請負人が協議会に参加していない状態が放置され、当該業者の作業と既存業者の作業との調整が不十分になる例がある。第3条第3項及びB-2のように、新規参入時の参加案内手続を条文化することが有効である。第三に、現場で災害が発生した際、どの経路で元方事業者に報告すべきかが協定書上明確でなく、報告の遅延により初動対応が遅れる例がある。第8条のように報告経路と統括安全衛生責任者の対応手順を明記することが望ましい。個別の事案については専門家(弁護士等)に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象現場が労働安全衛生法第30条又は第30条の2の統括管理義務の対象に該当するか確認したか
- [ ] 統括安全衛生責任者及び各社の安全衛生責任者の選任・届出手続を定めたか
- [ ] 本協議会の開催頻度(毎月1回以上)を明記したか
- [ ] 作業間の連絡調整及び災害防止対策を協議事項として明記したか
- [ ] 新規参入する関係請負人への参加案内手続を定めたか
- [ ] 代理出席の取扱いを定めたか
- [ ] 災害発生時の報告経路及び初動対応の手順を明記したか
- [ ] 議事録の作成・保存期間を定めたか
- [ ] 協議会不参加が続いた場合の対応措置を検討したか
- [ ] 本協定の有効期間を工事の着工から完成までと整合させたか