労働契約法第5条の安全配慮義務違反を理由に損害賠償を求める請求書です。就労実態、健康被害、損害額の内訳を整理して通知します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求書
第1部: 書式本文
【文書日付】令和【 】年【 】月【 】日 【宛先】【会社名】 【代表者役職・氏名】殿 【差出人】【被災労働者本人/遺族(続柄【 】)】【氏名】 【住所】【 】 【連絡先】【 】 【代理人(選任している場合)】【氏名・資格・連絡先】
損害賠償請求書(安全配慮義務違反)
貴社における下記の事実関係に基づき、貴社の安全配慮義務違反により生じた損害について、下記のとおり賠償を請求します。
【就労実態】 所属・職務内容【 】/雇用期間【 】/発症・被災前【 】か月間の時間外労働時間の推移【 】 【健康被害の経過】 初期症状の発現時期【 】/受診・診断の経過【診断名、診断年月日、診断医療機関】/休業の有無・期間【 】 【会社の安全配慮義務違反と評価する事実】 1. 長時間労働の常態化及び是正措置の懈怠 2. 健康診断・産業医面談等の未実施又は結果を踏まえた措置の懈怠 3. ハラスメント等の申告に対する対応の懈怠(該当する場合) 4. 労働時間管理体制の不備 (該当する事実のみ具体的に記載)
【損害額の内訳】 治療費【 】円/休業損害【 】円(算定期間・算定方法を付記)/後遺障害逸失利益【 】円(該当する場合)/死亡逸失利益【 】円(該当する場合)/慰謝料【 】円/葬儀費用【 】円(該当する場合)/弁護士費用相当額【 】円 【既払金・損益相殺の対象】労災保険給付の支給状況【 】(休業補償給付、障害補償給付等の受給状況) 【請求金額】合計【 】円 【支払期限】本書面到達後【 】日以内 【振込先】【 】 【回答期限】本書面到達後【 】日以内に書面での回答を求める 【交渉窓口の希望】【本人/代理人のいずれを窓口とするか、代理人選任の場合はその旨明記】 【今後の手続方針(任意記載)】【回答内容により、労働審判・訴訟提起等を検討する旨】
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 請求する労働者・遺族側
- 記載例1: 「精神疾患による自殺事案の場合、【健康被害の経過】欄に発症前おおむね6か月間の時間外労働時間を月単位で一覧化し、時間外労働と発症との関連を示す資料(勤怠記録、業務用メールの送信時刻等)を添付資料として明示する。」 一言解説: 過重労働による精神障害発症の主張では、発症前の労働時間の推移が中心的な争点となるため、月ごとの時間数を一覧化することで主張の具体性が高まる。
- 記載例2: 「身体災害事案の場合、【会社の安全配慮義務違反と評価する事実】欄に、当該作業に関する安全教育の実施状況、保護具の支給・使用状況、過去の同種事故・ヒヤリハットの有無を具体的に記載する。」 一言解説: 身体災害では設備面・教育面の不備が義務違反の中心的根拠となることが多く、抽象的な「安全配慮が不十分だった」との記載では足りない。
- 記載例3: 「遺族による請求の場合、差出人欄に相続関係を示す資料(戸籍謄本等)の準備状況を付記し、損害額の内訳のうち死亡逸失利益・慰謝料の算定根拠(就労可能年数、生活費控除率等)を明示する形に書き換える。」 一言解説: 遺族からの請求では相続人の範囲及び相続分の確定が前提となるため、算定根拠を示すことで会社側の検討を円滑にする効果もある。
B節: 会社側
- 記載例1: 「請求内容の一部又は全部を争う場合、事実関係のうち認める部分と争う部分を区別した回答書に転用し、争う部分については具体的な反論根拠(労働時間管理記録、健康診断結果等)を示す。」 一言解説: 争う場合であっても全面否定の回答は交渉の停滞を招きやすく、事実の認否を区別することで論点整理が進みやすい。
- 記載例2: 「損害賠償責任を一部認める場合、既に支給された労災保険給付との調整(損益相殺)を踏まえた支払可能額を提示する回答書に書き換える。」 一言解説: 労災保険給付と民事損害賠償は填補の重複を避けるための調整が必要となるため、既払給付の内容を確認したうえで金額を提示することが望ましい。
- 記載例3: 「請求内容を全面的に争う方針を固めた場合であっても、初回の回答書では事実確認のための追加資料提出を求めるにとどめ、責任の有無に関する結論的な判断は次回以降に留保する形に書き換える。」 一言解説: 初動で性急に責任を否定すると交渉が硬直化しやすいため、事実確認を優先する回答とすることで後の選択肢を残すことができる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、業務に起因する健康被害(過重労働による精神疾患、業務上の傷病等)について、会社の安全配慮義務違反を理由に損害賠償を請求する場面で使用する。使用すべき場面は、労災保険給付の対象となる事案において、労災保険給付では填補されない慰謝料等を含めた損害の全部又は一部について会社に対して民事上の責任を追及する場合であり、使ってはならない場面は、業務起因性や義務違反の根拠となる事実関係が未整理のまま、金額のみを一方的に提示して交渉を進めようとする場合である。事実関係の裏づけを欠く請求は、かえって会社側の争う姿勢を強め、早期解決を妨げるおそれがある。
法的根拠として、労働契約法第5条は使用者が労働契約に伴い労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする義務(安全配慮義務)を負う旨を定めている。この義務違反に基づく損害賠償請求は、債務不履行構成(民法第415条)又は不法行為構成(民法第709条)のいずれによっても可能であるが、消滅時効の起算点や期間が異なり得るため、いずれの構成による請求かを明示することが望ましい。人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権については、民法第167条(債務不履行構成の場合)及び第724条の2(不法行為構成の場合)により、時効期間が20年に伸長されている点にも留意する必要がある。
実務でよくある失敗として、第一に、義務違反の評価事実を抽象的に記載し、具体的にいつ・何が不十分であったかを特定しない例がある。対策として、長時間労働の常態化、健康診断後の措置の懈怠等、類型ごとに具体的事実を記載する構成とした。第二に、損害額の内訳を示さず総額のみを請求し、会社側が検討できない例がある。対策として、治療費・休業損害・逸失利益・慰謝料を項目ごとに区分した。第三に、労災保険給付との調整(損益相殺)を考慮せず、給付済みの部分まで重ねて請求してしまう例がある。対策として、既払金・損益相殺の対象欄を設け、労災保険給付の受給状況を明記する構成とした。なお、安全配慮義務違反の有無や損害額の算定、時効の起算点等は事案の内容や証拠関係により判断が分かれるため、個別事案については弁護士等の専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 就労実態(職務内容・時間外労働の推移)を具体的に記載しているか
- [ ] 健康被害の経過(診断名・診断日・休業期間)を明記しているか
- [ ] 安全配慮義務違反と評価する事実を類型ごとに具体的に記載しているか
- [ ] 損害額を治療費・休業損害・逸失利益・慰謝料等の項目ごとに区分しているか
- [ ] 労災保険給付の受給状況と損益相殺の対象を明記しているか
- [ ] 債務不履行構成・不法行為構成のいずれによる請求かを明示しているか
- [ ] 消滅時効の起算点・期間を確認しているか
- [ ] 遺族による請求の場合、相続関係を示す資料の準備状況を確認しているか
- [ ] 回答期限・支払期限を明記しているか
- [ ] 断定的な責任認定を会社側に強要する表現になっていないか
- [ ] 交渉窓口(本人・代理人)を明確にしているか
- [ ] 回答内容によっては労働審判・訴訟提起等を検討する旨を示しているか