いずれの名義でストア配信するかと審査対応の役割を定める覚書。ストア規約の遵守に加え、特定商取引法の表示義務者と課金収益の精算方法を明確にする。

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アプリストア配信に関する覚書

第1部: 書式本文

〇〇〇〇(以下「甲」という。開発会社)と〇〇〇〇(以下「乙」という。配信名義者)とは、両者が共同で開発又は運営するアプリ(以下「本アプリ」という。)のApp Store及びGoogle Play(以下「各ストア」という。)への配信について、次のとおり覚書(以下「本覚書」という。)を締結する。

第1条(目的) 本覚書は、本アプリの各ストアへの配信にあたり、いずれの当事者の名義で配信を行うか、審査対応の役割分担及び課金収益の精算方法を明確にすることを目的とする。

第2条(配信名義) 本アプリは、〇の名義(デベロッパーアカウント名〇〇〇〇)により各ストアに配信するものとする。

第3条(審査対応の役割分担) 1. 各ストアへの申請及び審査に必要な資料の準備は甲が行う。 2. 各ストアの審査基準に関する問い合わせ対応及びやり取りは、配信名義者である当事者(以下「配信名義者」という。)が行う。 3. 審査不通過又は指摘事項があった場合、甲及び配信名義者は協力して是正対応を行う。

第4条(特定商取引法上の表示義務者) 1. 本アプリ内で有料コンテンツ又は継続課金サービスを提供する場合、当該取引は特定商取引法上の通信販売に該当しうるため、同法第11条に定める表示事項(事業者名、連絡先、解約条件等)を本アプリ内又は関連ウェブサイトに掲示する。 2. 前項の表示義務者は、本アプリの提供主体として実質的に取引の当事者となる者とし、別紙において具体的に特定する。配信名義者と表示義務者は必ずしも一致しない場合があることを甲及び乙は相互に確認する。

第5条(課金収益の精算) 1. 各ストアのプラットフォーム手数料を控除した後の課金収益は、配信名義者のアカウントにいったん入金される。 2. 配信名義者は、入金された課金収益から、別紙に定める分配割合に従い算定した金額を、他方当事者に対し月次で精算する。

第6条(アカウント情報の管理) 配信名義者は、デベロッパーアカウントのログイン情報を厳重に管理し、甲が申請作業に必要な範囲でのみアクセス権限を付与する。

第7条(規約遵守) 甲及び乙は、各ストアの開発者向け利用規約及び審査ガイドラインを遵守し、いずれかの規約違反によりアカウントが停止された場合に生じる損害について、帰責事由のある当事者が責任を負う。

第8条(配信終了時の対応) 本覚書が終了する場合、配信名義者は、本アプリの配信を継続するか、又は停止するかについて、甲と協議のうえ決定する。

第9条(秘密保持) 甲及び乙は、本覚書の履行の過程で知り得た相手方の営業上の秘密情報を第三者に開示してはならない。

第10条(合意管轄) 本覚書に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 開発会社向けの修正

A-1. 配信名義を開発会社に一本化

修正後:「本アプリは甲の名義により配信するものとし、乙は本アプリの企画及び運営に関する役割を担うが、デベロッパーアカウントの管理は甲が単独で行う。」 一言解説: 複数のアプリを横断的に管理する開発会社が、審査対応やアカウント管理の一貫性を確保するために自社名義での配信を求める修正である。

A-2. 精算遅延時の遅延損害金条項の追加

追加条文例:「配信名義者が第5条の精算を正当な理由なく期限までに行わない場合、甲は年3%の割合による遅延損害金を請求することができる。」 一言解説: 収益がいったん配信名義者のアカウントに入金される構造上、精算の遅延・未払いリスクを開発会社が負うため、これを牽制する修正である。

B. 配信名義者向けの修正

B-1. アカウント停止リスクの責任分担明確化

修正後:「甲の提供する本アプリの内容(コンテンツ、機能仕様)が原因でストア規約違反と判定されアカウントが停止された場合、甲は乙に対し、当該停止によって乙に生じた損害(他の配信アプリへの影響を含む。)を賠償する。」 一言解説: 配信名義者が単一のアカウントで複数のアプリを配信している場合、1つのアプリの規約違反によりアカウント全体が停止されるリスクがあるため、原因を作った当事者への責任集中を求める修正である。

B-2. 特定商取引法上の表示義務者の限定

修正後:「特定商取引法上の表示義務者は甲とし、乙は配信名義者としての地位にとどまり、取引当事者としての表示義務を負わない旨を本アプリ内に明記する。」 一言解説: 配信名義者が取引の実質的な当事者ではない場合、消費者からの問い合わせ等の矢面に立たされることを避けるため、表示義務者を実質的な提供主体に限定する修正である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、開発会社と運営会社が共同で1つのアプリを提供する場合において、いずれの名義で各ストアに配信するかが問題となる場面で用いる。単独の事業者がアプリを開発し自社名義で配信する場合には本覚書は不要であり、複数当事者が関与し名義と実質的な提供主体が分離しうる場面に限って必要となる。

根拠法令 本覚書で特に重要な論点は、特定商取引法第11条に定める表示義務の名宛人の特定である。同条は、通信販売を行う「販売業者」又は「役務提供事業者」に対し、事業者名、住所、電話番号、代金の支払時期・方法、解約条件等の表示を義務付けている。アプリ内課金という取引において、ストアへの配信名義(デベロッパーアカウント名義)と、実際に消費者との間で売買契約又は役務提供契約の当事者となる者(取引の実質的な提供主体)は、必ずしも一致しない場合がある。例えば、開発会社の名義でアプリを配信しつつ、実際のコンテンツ提供・カスタマーサポートを別会社が行っているようなケースでは、特定商取引法上の表示義務者は取引の実質的な当事者である後者と解される可能性が高く、この点を契約上明確にしておかないと、消費者からの問い合わせやクレームへの対応主体が曖昧になる。

実務でよくある失敗と対策 第一に、配信名義とは別に実質的な取引主体が存在するにもかかわらず、特定商取引法上の表示を配信名義者の情報のみで行ってしまい、実際の提供主体が特定できず消費者からの問い合わせに適切に対応できない失敗がある。第4条第2項のように、配信名義者と表示義務者を書き分け、別紙で具体的に特定することが対策となる。第二に、課金収益がいったん配信名義者のアカウントに入金される構造であるにもかかわらず、精算のタイミングや遅延時の対応を定めておらず、開発会社側が資金繰りに窮する失敗がある。A-2のような遅延損害金条項の設定が対策となる。第三に、1つのデベロッパーアカウントで複数のアプリを配信している場合に、あるアプリの規約違反によりアカウント自体が停止され、無関係な他のアプリの配信まで停止してしまう失敗がある。B-1のように原因を作った当事者への責任集中を明記することが対策となる。

各ストアの規約は頻繁に改定されるため、特定の条項が現行の規約と抵触しないか、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 配信名義(デベロッパーアカウント名義)をいずれの当事者とするか明確にしたか
  • [ ] 審査対応における役割分担(申請資料準備・問い合わせ対応)を定めたか
  • [ ] 特定商取引法上の表示義務者を実質的な取引主体に即して特定したか
  • [ ] 課金収益の精算方法及び精算頻度を定めたか
  • [ ] 精算遅延時の遅延損害金その他の措置を定めたか
  • [ ] デベロッパーアカウントのアクセス権限管理方法を定めたか
  • [ ] 一方の帰責事由によるアカウント停止時の責任分担を定めたか
  • [ ] 各ストアの規約遵守義務を確認したか
  • [ ] 覚書終了時の配信継続・停止の意思決定プロセスを定めたか
  • [ ] 秘密保持義務の対象範囲(収益データ等)を確認したか