解体改修工事の前に行う石綿の有無の調査結果を報告する書式です。調査者の資格、調査方法、分析結果の記載要領を示します。実務で迷いやすい記載箇所には解説コメントを付しています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
石綿事前調査結果報告書
第1部: 書式本文
建築物等の解体等の作業に係る石綿事前調査結果報告書
第1条(報告の趣旨) 本報告書は、大気汚染防止法第18条の15及び石綿障害予防規則第3条の規定に基づき、【元請業者名】が、解体・改修工事に着手する前に実施した石綿含有建材の有無に関する事前調査の結果を、【労働基準監督署長・都道府県知事等】に報告するものとする。
第2条(工事の概要) 一 工事名称:【工事名称】 二 施工場所:【所在地】 三 発注者:【氏名又は名称】 四 元請業者:【商号・建設業許可番号】 五 工事の種類:【解体工事・改修工事(内装・外壁等)の別】 六 請負代金の額:【○○円】
第3条(報告対象工事の該当性) 本工事は、次のいずれかに該当し、大気汚染防止法上の事前調査結果報告の対象となるものであることを確認する。 一 建築物の解体工事:床面積合計【80】㎡以上 二 建築物の改修工事:請負代金額【100万円】以上 三 特定の工作物の解体・改修工事:【該当する場合はその概要】
第4条(調査者) 一 調査者氏名:【氏名】 二 資格の種類:【建築物石綿含有建材調査者・一般建築物石綿含有建材調査者等】 三 登録番号:【○○号】
第5条(調査年月日及び方法) 一 調査年月日:【年月日】 二 調査方法:設計図書等の書面調査及び現地目視調査【並びに試料採取による分析調査】 三 対象範囲:【建築物全体・解体等を行う部分に限定等】
第6条(調査結果) 一 石綿含有building材の有無:【有・無・不明の別】 二 石綿含有が確認された建材の種類及び使用箇所:【建材名・使用箇所・面積又は数量】 三 分析による確認を行った場合の分析機関及び結果:【機関名・分析方法・含有率】 四 みなし処理(分析を行わず石綿含有として扱う場合)の適用の有無:【有・無】
第7条(石綿含有建材が確認された場合の除去等の方法) 一 除去等の作業方法:【湿潤化・隔離養生・負圧除塵装置の設置等】 二 作業に係る特別教育の受講状況:【概要】 三 産業廃棄物としての処理方法:【特別管理産業廃棄物該当性、処分委託先】
第8条(石綿事前調査結果報告システムへの報告) 本調査結果は、大気汚染防止法及び石綿障害予防規則に基づき、石綿事前調査結果報告システムを通じて電子的に報告するものとし、報告日を【年月日】とする。
第9条(発注者への説明) 元請業者は、本調査結果を工事着手前に発注者に対し書面で説明し、発注者の確認を得るものとする。
第10条(記録の保存) 本調査結果及び関係資料(分析結果報告書、写真等)は、工事終了後【3年間】保存するものとする。
第11条(掲示) 元請業者は、事前調査の結果概要を、工事現場の公衆の見やすい場所に掲示するものとし、掲示期間は工事期間中とする。
第12条(調査後の設計変更等への対応) 工事着手後に設計変更等により調査対象外の部分に施工が及ぶ場合、元請業者は当該部分について追加の事前調査を実施し、結果を本報告書に追記する。
第13条(下請業者への周知) 元請業者は、本調査結果を下請業者に周知し、石綿含有建材が確認された箇所における作業手順を共有するものとする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 元請業者の視点
元請業者にとっては、事前調査の実施主体・分析方法の記録を明確にし、後日の是正指導や近隣トラブルの際に調査の適正性を立証できるようにしておくことが重要となる。
Before(第6条・原案): 「石綿含有building材の有無:【有・無・不明の別】」
After(元請業者に有利な修正): 「石綿含有建材の有無について『不明』と判定した部分がある場合、元請業者はみなし処理の適用又は追加調査の実施方針を明記し、当該方針を決定した日時及び判断根拠を記録する。」 一言解説:「不明」のまま工事を進めると調査義務違反を問われるおそれがあるため、不明部分への対応方針を条文上具体化しておく必要がある。
B節: 労働基準監督署・自治体の視点に立った記載整備
行政庁側の審査実務を踏まえると、調査者の資格要件及び分析結果の根拠資料の添付状況が確認の重要ポイントとなる。
Before(第4条・原案): 「調査者氏名:【氏名】、資格の種類:【建築物石綿含有建材調査者等】、登録番号:【○○号】」
After(行政実務に即した修正): 「調査者は、石綿障害予防規則第3条第7項に定める要件を満たす有資格者であることを証する登録証の写しを本報告書に添付し、調査者以外の者が現地調査を代行した事実がないことを元請業者が確認する。」 一言解説:無資格者による調査や名義貸しが疑われる事案が生じうるため、登録証の添付と実地調査者の同一性確認を条文化しておくことが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、解体工事(床面積80㎡以上)又は改修工事(請負代金100万円以上)等、大気汚染防止法上の報告対象工事に該当する場合に、元請業者が事前調査の結果を報告する場面で使用する。報告対象規模に満たない小規模な工事や、事前調査自体を実施していない段階では使用すべきではなく、必ず有資格者による調査の実施後に作成する。
根拠法令 大気汚染防止法第18条の15(事前調査及び結果報告)、石綿障害予防規則第3条(事前調査)、労働安全衛生法に基づく関連規制、石綿事前調査結果報告システムへの電子報告義務を中心的な根拠とする。報告対象工事の規模基準の適用関係は個々の工事内容によって異なりうるため、断定的な判断は避けるべきである。
よくある失敗と対策 第一に、事前調査を無資格者や社内の非専門担当者が実施し、後日調査の有効性が争われるケースがある。対策として、第4条において調査者の資格・登録番号を明記し、登録証の写しを添付する運用とする。 第二に、書面調査(設計図書等)のみで済ませ、現地での目視・試料採取を省略してしまう失敗がある。対策として、第5条において調査方法を明確に区分し、試料採取の要否とその判断根拠を記録する。 第三に、石綿事前調査結果報告システムへの電子報告を失念し、書面のみで完結してしまうケースがある。対策として、第8条のように電子報告の実施日を明記し、報告完了の証跡(受付番号等)を保存する。
第四に、工事着手後の設計変更で調査対象外の部分に作業が及んだにもかかわらず、追加調査を行わないまま作業を進めてしまうケースもある。対策として、第12条のように設計変更等が生じた場合の追加調査義務を明記しておく。
事前調査の要否・報告対象規模の該当性については個別の事案によって判断が分かれる場合があるため、弁護士・行政書士等の専門家又は所轄の労働基準監督署等に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 工事が報告対象規模(解体80㎡以上・改修100万円以上等)に該当するか確認したか
- [ ] 調査者が建築物石綿含有建材調査者等の有資格者であるか確認したか
- [ ] 調査年月日及び調査方法(書面・現地目視・試料採取の別)が記載されているか
- [ ] 石綿含有建材の有無及び使用箇所が具体的に特定されているか
- [ ] 「不明」と判定した部分への対応方針(みなし処理・追加調査)が明記されているか
- [ ] 分析を実施した場合の分析機関・分析方法・含有率が記載されているか
- [ ] 除去等の作業方法及び特別管理産業廃棄物としての処理方法が記載されているか
- [ ] 石綿事前調査結果報告システムへの電子報告を完了しているか
- [ ] 発注者への事前説明及び確認が行われているか
- [ ] 調査結果及び関係資料の保存期間・保存方法が定められているか