保証人や物上保証人が債務を弁済した後、民法第499条及び第501条の代位により債権者の権利を行使して支払を求める請求書です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
弁済による代位に基づく請求書
第1部: 書式本文
弁済による代位に基づく請求書
宛先: 【主債務者住所】 【主債務者氏名・名称】 殿
作成日: 【西暦】年【月】月【日】日
差出人: 【代位弁済者(保証人・物上保証人)住所】 【代位弁済者氏名・名称】 【担当部署・担当者名】 印
件名: 弁済による代位に基づく求償金及び原債権の請求について
当職は、下記のとおり主債務者に代わって債務を弁済したので、民法第499条及び第501条に基づき代位した権利を行使し、下記金員の支払を請求する。
- 原債務の表示。債権者【原債権者名】、発生原因【契約名・契約日】、原債務額【原債務額】円、弁済期【弁済期】。
- 当職の地位。【保証人・連帯保証人・物上保証人・第三取得者・後順位担保権者】として、【保証契約書・担保設定契約書等の日付及び名称】に基づき本債務について責任を負う立場にあった。
- 当職は、【弁済日】、債権者【原債権者名】に対し、金【弁済金額】円を弁済し、主債務者に代わってその債務を消滅させた。
- 民法第499条により、当職は弁済をするについて正当な利益を有する者として、弁済と同時に債権者に代位し、債権者が有していた原債権及びこれに付随する担保権を行使することができる。
- 民法第500条により、当職が弁済をするについて正当な利益を有する者であるため、対抗要件としての債権譲渡通知又は承諾を要しない。
- 民法第501条第1項及び第2項により、当職は、原債権及びこれに付随する担保権を行使することができる。
- 求償権の元本。当職が代位により行使する求償権元本は金【求償金額】円であり、原債権の範囲内である。
- 遅延損害金。求償権について【約定利率・法定利率】による遅延損害金を付す。
- 担保権の状況。原債権には【抵当権・保証人等】の担保が付されており、当職はこれを代位行使する予定である。
- 主債務者は、【支払期限】までに、上記求償金及び遅延損害金を当職指定の口座へ支払われたい。
- 上記期限までに支払がない場合、当職は担保権の実行その他法的手続を検討する。
- 本請求は、当職が有するその他の権利を放棄する趣旨のものではない。
- 当職は、原債権者から交付を受けた債権証書及び担保に関する権利の移転手続を完了しており、必要に応じてその写しを開示する。
- 主債務者が求償金の支払を拒む場合、当職は、民法第501条第1項に基づき原債権者が有していた保証人・連帯保証人への請求も含め、権利行使の対象を検討する。
以上
お振込先・お問い合わせ先 【振込先口座情報】 【担当部署・担当者名】 【電話番号・メールアドレス】
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 代位弁済した側
修正後の文例:
当職は、物上保証人として担保に供していた【不動産の表示】について、原債権者からの担保権実行を回避するため、【弁済日】に金【弁済金額】円を代位弁済した。民法第501条第1項により、当職は原債権者が有していた抵当権を行使することができるため、主債務者に対し求償金の支払を求めるとともに、支払がないときは当該担保権の実行を検討する。
一言解説: 物上保証人の場合は求償権の根拠が保証人と異なる(民法第372条・第351条等)ため、自らの地位を明記し、行使できる担保権の範囲を具体的に特定する。
B. 主債務者側
修正後の文例:
貴殿主張の代位弁済の事実及び弁済金額について、当職は【契約書・入金記録等】に基づき確認した結果、【認める/一部争う】。求償金額のうち、【求償できない費用・貴殿の過失により生じた損害等】については民法第442条第2項の求償の範囲に含まれないと考えるため、当該部分を除いた金額での協議を求める。
一言解説: 主債務者としては、代位弁済の事実そのものと、求償できる範囲(必要費・有益費・損害賠償を含むかなど)を分けて検討し、争う部分を明確にする。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、保証人や物上保証人などが主債務者に代わって債権者へ弁済を行い、その後、民法第499条の代位により債権者が有していた原債権及び担保権を行使して求償金の支払を求める場面で使用する。単なる求償権の請求にとどまらず、原債権に付随する担保権の行使まで視野に入れる場合に適する書式であり、逆に弁済の事実自体が未確定な段階や、求償権の消滅時効が既に完成している疑いがある場合には、そのまま送付すべきではない。
根拠法令は、民法第499条(弁済をするについて正当な利益を有する者の代位)、第500条(正当な利益を有する者について対抗要件を要しないこと)、第501条第1項及び第2項(代位者が原債権及び担保権を行使できること並びにその要件)である。あわせて、求償権の発生根拠として、保証人については民法第459条から第465条まで、物上保証人については民法第351条及び第372条の準用規定も踏まえて整理する必要がある。
実務でよくある失敗の一つ目は、代位により行使できる「原債権」と、代位弁済者が本来有する「求償権」を混同し、両者の金額や遅延損害金の起算日を区別せずに請求してしまうことである。原債権と求償権は法的性質も消滅時効の起算点も異なり得るため、混同すると相手方から金額の根拠を争われやすい。対策として、本文7項で求償権元本を独立して明記し、原債権とは別に整理する構成としている。
二つ目の失敗は、一部弁済にとどまる場合の代位割合の按分を誤ることである。民法第502条により、債権の一部について代位弁済をした者は、債権者の同意を得て、その弁済をした価額に応じて債権者とともにその権利を行使するにとどまり、単独で全部の担保権を実行できるわけではない。対策として、一部弁済の事案では本文9項の担保権行使に関する記載を修正し、代位割合及び債権者の同意状況を明記することを想定している。
三つ目の失敗は、正当な利益を有する者に該当するかどうかの検討が不十分なまま、対抗要件不要(民法第500条)を前提に主債務者へ直接請求してしまうことである。単なる第三者弁済(正当な利益を有しない者による弁済)の場合は、民法第467条に準じた対抗要件が必要になる場合があるため、自らの地位づけを誤ると請求の前提が崩れる。対策として、本文2項で代位弁済者の地位を具体的に特定する条項を設けている。求償できる範囲や担保権行使の可否は個別の契約関係により異なるため、個別事案は専門家に確認したうえで請求内容を確定することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 代位弁済者が「弁済をするについて正当な利益を有する者」に該当するか確認したか
- [ ] 弁済日、弁済金額、弁済先を裏付ける資料(振込明細・領収書等)を確保したか
- [ ] 求償権の発生根拠(保証契約・担保設定契約等)を特定したか
- [ ] 求償権の範囲(元本・利息・費用・損害賠償)を条項ごとに整理したか
- [ ] 一部弁済の場合、代位割合及び債権者の同意の有無を確認したか
- [ ] 行使予定の担保権(抵当権等)の登記状況を確認したか
- [ ] 求償権及び原債権それぞれの消滅時効の起算点を確認したか
- [ ] 主債務者からの反論(求償範囲の争い等)を想定した記載になっているか
- [ ] 振込先口座及び支払期限を明記したか
- [ ] 内容証明郵便・配達証明の利用要否を検討したか
- [ ] 原債権者から債権証書及び担保関係書類の引き渡しを受けたか