墓地の永代使用権を設定する契約書です。使用料と管理料、承継の手続、使用権の返還と改葬時の取扱いを規定します。想定される例外的な場面への対応方針も補足しています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
墓地使用契約書
第1部: 書式本文
墓地使用契約書
【墓地管理者名】(以下「甲」という)と【使用者名】(以下「乙」という)は、乙が甲の管理する墓地の一区画について永代使用権の設定を受けるにあたり、次のとおり契約を締結する。
第1条(契約の目的) 甲は、乙に対し、甲が経営する墓地【墓地名称・所在地】内の下記区画(以下「本件区画」という)について、永代使用権を設定する。本件区画は墓地、埋葬等に関する法律(以下「墓埋法」という)10条に基づく経営許可を受けた墓地の一部である。 区画番号 【 】 面積 【 】平方メートル
第2条(永代使用権の性質) 本契約に基づき乙が取得する権利は、本件区画の土地を独占的排他的に使用し、墳墓を設置して埋蔵・埋葬を行うことができる債権的な権利(永代使用権)であり、当該土地の所有権その他の物権を取得するものではない。
第3条(使用料) 乙は、本契約締結時に、永代使用料として金【 】円を甲に支払う。使用料は本件区画の使用権設定の対価であり、契約が解除又は終了した場合を除き返還しない。
第4条(管理料) 乙は、本件区画及び墓地共用部分の維持管理費用として、年額金【 】円(又は月額金【 】円)の管理料を、毎年【 】月末日までに甲に支払う。
第5条(墳墓の設置) 乙は、甲の定める墓地使用細則に従い、本件区画に墳墓を設置することができる。墳墓の意匠・石材については、事前に甲の確認を受けるものとする。
第6条(埋蔵・埋葬の手続) 本件区画への焼骨の埋蔵は、墓埋法3条の規定に従い、市町村長の許可を受けた墓地においてのみ行うことができる。乙は、埋蔵の都度、甲所定の申請書及び埋葬許可証(死体埋火葬許可証)を甲に提出する。
第7条(承継) 乙が死亡した場合、乙の親族又は祭祀を承継する者(民法897条参照)は、甲所定の承継手続を経て本件区画の使用権を承継することができる。承継の際、甲は所定の承継手数料を徴収することができる。
第8条(管理料の滞納) 乙が管理料の支払を【 】年以上怠り、甲が相当の期間を定めて催告してもなお支払わないときは、甲は本契約を解除することができる。
第9条(無縁墳墓の取扱い) 乙及びその承継者と連絡が取れない状態が長期間継続し、墓埋法施行規則に定める手続(官報公告及び現地掲示等)を経てもなお申出がない場合、甲は当該墳墓を無縁墳墓として改葬し、合葬墓等に移すことができる。
第10条(改葬) 乙が本件区画の焼骨を他の墓地等に移す(改葬する)場合、墓埋法5条・8条に基づき、あらかじめ市町村長の改葬許可を受けなければならない。乙は、改葬許可証の写しを甲に提出したうえで焼骨を引き取るものとする。
第11条(契約の終了) 乙が本件区画の使用を終了し焼骨をすべて引き取った場合、又は第8条により契約が解除された場合、本契約は終了し、本件区画は甲に返還される。既払いの永代使用料は返還しない。
第12条(協議事項) 本契約に定めのない事項については、甲乙誠意をもって協議のうえ定める。
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 墓地管理者の立場からの書き換え
A-1. 使用料不返還の原則を明確にする場合
追加条文例:「第3条にかかわらず、契約締結後【 】日以内に乙の都合により契約を解除する場合に限り、甲は永代使用料から事務手数料【 】円を控除した残額を返還する。」 一言解説: 永代使用料は原則として返還しない特約が一般的だが、契約直後の解約についてのみ一部返還を認める例外を設けることで、消費者トラブルの防止と管理者側の実務上の柔軟性を両立させる修正である。
A-2. 無縁化した際の合祀への移行手続を詳細化する場合
追加条文例:「甲は、第9条の無縁墳墓の認定にあたり、墓地、埋葬等に関する法律施行規則3条に定める官報公告及び当該墳墓への1年間の立札設置を行い、その期間内に申出がないときに限り改葬の手続を進める。」 一言解説: 無縁墳墓の改葬は使用者の権利に重大な影響を与えるため、管理者側は公告手続の要件を条項上明記し、後日の紛争(使用者側からの異議申立て)に備えることが望ましい。
B. 使用者の立場からの書き換え
B-1. 承継者を事前に指定しておく場合
追加条文例:「乙は、本契約締結時に、乙の死亡後に本件区画の使用権を承継する者として【承継予定者氏名】をあらかじめ甲に届け出ることができる。届出後の変更は乙が甲に書面で通知することにより行う。」 一言解説: 使用者があらかじめ承継予定者を届け出ておくことで、使用者の死亡後に相続人間で承継者が定まらず無縁化するリスクを軽減できる。
B-2. 管理料の値上げに上限を設ける場合
追加条文例:「甲が第4条の管理料を改定する場合、改定前の年額の【 】パーセントを上限とし、改定の【 】か月前までに乙に書面で通知する。」 一言解説: 管理料は契約上甲が一方的に改定できる定めとなっていることが多いため、使用者側は改定幅や予告期間に制限を設ける修正を求めることで、想定外の負担増を防ぐことができる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、寺院、公営墓地又は民営墓地の経営者が、新たに墓地区画の使用権を設定する場面や、既存の使用者との契約内容を書面で整理し直す場面で用いる。他方、墓地の経営許可(墓埋法10条)を受けていない区画については、そもそも埋蔵行為自体が違法となるおそれがあるため、本書式を用いる前提として経営許可の有無を必ず確認する必要がある。また、樹木葬や納骨堂のように区画への墳墓設置を前提としない形態の場合は、本書式ではなく別途その形態に応じた使用契約書を用いるべきである。
根拠法令 墓埋法3条は、埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に行ってはならない旨を定め、墓地の設置場所を規制している。墓埋法10条は、墓地を経営しようとする者は都道府県知事(政令指定都市等では市長)の許可を受けなければならない旨を定める。永代使用権については墓埋法その他の法律に明文の定めはなく、判例・通説上、墓地の区画を使用する権利は土地の所有権や地上権のような物権ではなく、墓地経営者との契約に基づく債権的な権利であると解されている。これは、民法175条が定める物権法定主義(法律に定める物権以外は創設できないという原則)のもとで、当事者間の契約のみによって新たな物権を作出することができないためである。改葬(焼骨を他の墳墓又は納骨堂に移すこと)については、墓埋法5条が市町村長の許可を要する旨を、同法8条が改葬許可証の交付について定めている。
実務でよくある失敗と対策 第一に、永代使用権を土地の所有権であるかのように説明してしまい、使用者が誤解したまま契約する失敗がある。第2条のように、永代使用権が債権的権利であり所有権を取得するものではないことを明記することが対策となる。第二に、使用者の死亡後、承継者が定まらないまま長期間放置され、無縁墳墓化の判断や合祀への移行手続をめぐって近隣住民や親族との間で紛争になる失敗がある。A-2及びB-1のように、承継手続と無縁化対応の双方をあらかじめ条項化しておくことが対策となる。第三に、改葬を希望する使用者に対し、市町村長の改葬許可が必要であることを説明しないまま焼骨を引き渡してしまい、後日、墓埋法違反を指摘される失敗がある。第10条のように改葬許可証の提出を契約上の前提条件とすることが対策となる。
永代使用権の法的性質や管理料改定の当否、無縁墳墓の認定手続の適法性については、墓地の設置形態や自治体の条例によって取扱いが異なる場合があるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 墓地が墓埋法10条に基づく経営許可を受けているか確認したか
- [ ] 永代使用権が債権的権利であり所有権ではないことを契約書上明記したか
- [ ] 使用料及び管理料の金額・支払時期・改定条件を明確にしたか
- [ ] 使用料の不返還の原則及びその例外を定めたか
- [ ] 埋蔵・埋葬の際に必要な許可証(死体埋火葬許可証等)の提出手続を定めたか
- [ ] 使用者死亡後の承継手続及び承継手数料の要否を定めたか
- [ ] 管理料滞納時の催告・解除手続を定めたか
- [ ] 無縁墳墓と認定する際の公告手続(墓埋法施行規則3条相当)を条項に反映したか
- [ ] 改葬時に必要な墓埋法5条・8条の改葬許可証の提出を契約上の要件としたか
- [ ] 契約終了時の区画の返還方法及び原状回復の要否を定めたか