自動車部品等の長期供給を確認する取引確認書。民法第1条第2項の信義則と独占禁止法の優越的地位の濫用に配慮し、生産終了後の補給義務を定めます。

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部品供給に関する長期取引確認書

第1部: 書式本文

部品供給に関する長期取引確認書

【部品メーカー名】(以下「甲」という。)と【完成品メーカー名】(以下「乙」という。)は、乙が製造する完成品に組み込む部品を甲が長期にわたり供給する取引に関し、次のとおり確認書(以下「本確認書」という。)を締結する。

第1条(目的) 本確認書は、乙の完成品のモデルライフ全体を通じ甲が部品(以下「本部品」という。)を安定的に供給する取引の基本条件を確認し、量産期間中及び生産終了後の双方の義務関係を明確にすることを目的とする。

第2条(対象部品及び採用決定) 1. 本部品は、乙の完成品【対象完成品名】に組み込まれる別紙記載の部品とする。 2. 甲は、乙による量産採用決定(以下「本採用決定」という。)後、乙の求める仕様、品質基準及び工程管理体制に従い量産の準備を行う。

第3条(量産準備費用の負担) 本採用決定後、乙専用の金型、治具又は検査設備の新設が必要となる場合、その費用負担は別紙に定めるとおりとし、負担の定めがない事項については甲乙協議の上決定する。

第4条(個別契約による発注) 乙は、内示(生産計画に基づく需要見込みの通知)及び確定発注により本部品を発注し、甲はこれに応じて生産計画を策定する。内示から確定発注までの期間及び変更許容範囲は別紙のとおりとする。

第5条(品質保証) 1. 甲は、本部品が乙の定める仕様書及び品質保証協定に適合することを保証する。 2. 甲は、量産開始前に乙の定める工程監査を受け、量産中も継続的な品質改善活動(不良率の低減、工程能力指数の維持等)に努める。

第6条(価格の維持及び改定) 1. 本部品の単価は、量産開始時点で甲乙合意した金額を維持することを原則とする。 2. 原材料価格又は労務費の著しい変動その他経済情勢の変化により現行単価の維持が甲にとって著しく不合理となった場合、甲は乙に対し根拠資料を示して価格改定を申し入れることができ、乙はこれに誠実に対応する。乙が正当な理由なく協議を拒絶し、又は一方的に単価の据置きを強要することは、独占禁止法上の優越的地位の濫用に該当するおそれがあることを甲乙は確認する。

第7条(供給義務及び生産能力の確保) 甲は、乙の内示に基づく需要見込みに対応できるよう、本部品の生産能力を合理的な範囲で維持し、乙の完成品生産計画に支障を生じさせないよう供給する。

第8条(設計変更) 乙が本部品の設計変更を求める場合、乙は変更内容及び反映時期を甲に通知し、当該変更に伴い甲に生じる追加費用の負担については甲乙協議の上決定する。甲は、正当な理由なく変更対応を拒むことができない一方、乙は追加費用を一方的に甲に転嫁してはならない。

第9条(生産終了の通知及び補給義務) 1. 乙が対象完成品の生産を終了する場合、乙は甲に対し生産終了予定日の【6】箇月前までに書面で通知する。 2. 甲は、乙の完成品生産終了後も、当該完成品のアフターサービス及び保守部品としての需要に対応するため、生産終了日から【10】年間、乙の発注に応じて本部品の補給(以下「補給対応」という。)を行う。 3. 補給対応の期間中、甲が本部品の製造設備の維持が困難となった場合、甲は乙に対し【1】年前までに書面で通知し、代替生産方式への切替え又は乙による設備・金型の引取りその他の代替措置について協議する。

第10条(補給対応の価格) 補給対応期間中の本部品の単価は、量産終了時点の単価を基礎とし、少量生産に伴う製造原価の上昇を考慮して甲乙協議の上見直すことができる。

第11条(金型・治具の帰属) 乙が費用を負担して製作した金型及び治具の所有権は乙に帰属し、甲は本部品の生産及び補給対応の目的でこれを無償で使用できる。生産終了後、乙が金型及び治具の返還を求めた場合、甲は補給対応に支障のない範囲でこれに応じる。

第12条(秘密保持) 甲及び乙は、本確認書に関連して知り得た相手方の設計情報、原価情報その他の営業上・技術上の秘密を、本確認書の目的以外に使用し、又は第三者に開示してはならない。

第13条(信義則に基づく協力) 甲及び乙は、長期にわたる継続的取引関係の当事者として、民法第1条第2項に定める信義誠実の原則に従い、生産計画の急激な変更、一方的な取引条件の変更その他相手方の事業運営に不当な不利益を及ぼす行為を避けるよう努める。

第14条(有効期間) 本確認書の有効期間は、締結日から対象完成品の生産終了後の補給対応期間満了日までとする。

第15条(準拠法及び管轄) 本確認書は日本法に準拠し、本確認書に関する紛争は【管轄裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上、本確認書の成立を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。

【締結日】

甲(部品メーカー) 住所: 名称: 代表者: 印 乙(完成品メーカー) 住所: 名称: 代表者: 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 部品メーカー(供給側)向け

A-1 価格転嫁協議の実効性確保 修正後:「乙は、甲からの第6条第2項に基づく価格改定の申入れを受けた場合、申入れ受領後【30】日以内に回答するものとし、正当な理由なく回答を留保し、又は根拠を示さずに改定を拒絶してはならない。」 一言解説: 優越的地位にある完成品メーカーが価格協議への回答を先延ばしにすることで実質的に転嫁を拒む事例が下請取引で問題視されている。回答期限を明記することで、下請中小企業振興法の趣旨にも沿った実効的な協議の場を確保する。

A-2 補給対応期間中の一方的取引終了の防止 追加条文例:「乙は、第9条第2項の補給対応期間中、甲以外の第三者に本部品と同一仕様の代替部品の製造を発注してはならない。ただし、甲が正当な理由なく供給を怠った場合はこの限りでない。」 一言解説: 補給義務を甲にのみ負わせながら、乙が並行して安価な代替調達先を確保し甲への発注を細らせると、甲は少量生産のための設備維持コストのみを負担させられる不均衡が生じる。乙の並行調達を制限することで負担の公平を図る。

B. 完成品メーカー(調達側)向け

B-1 補給対応不履行時の代替措置 修正後:「第9条第3項の協議が調わない場合、乙は自ら又は第三者をして金型及び治具を用いた本部品の製造を行うことができるものとし、甲はこれに必要な技術情報の開示その他の協力を行う。」 一言解説: 甲が設備維持困難を理由に補給対応を打ち切った場合、乙が保守部品を確保できなくなり完成品のアフターサービス責任(製品の安全に関する社会的責任を含む。)を果たせなくなるおそれがある。乙による代替製造の途を確保しておくことが重要である。

B-2 設計変更費用の負担基準の明確化 修正後:「第8条の追加費用は、乙の設計変更要請に起因する場合は乙が負担し、甲の製造工程都合による変更の場合は甲が負担する。負担割合について合意に至らない場合、双方の見積り根拠を開示した上で協議する。」 一言解説: 費用負担の基準が曖昧なまま「協議の上決定する」とのみ定めると、力関係の強い当事者が費用を一方的に押し付ける事態を招きやすい。原因者負担の原則を明記し、見積り根拠の開示を義務付けることで協議の透明性を高める。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、自動車部品、産業機械部品、家電部品等、完成品メーカーの製品モデルライフに合わせて長期間・継続的に供給される部品取引において使用する。単発のスポット発注や、部品ではなく完成品そのものの仕入れには適さない。また、原材料の供給には規格適合や価格改定の考え方が異なるため、原材料供給契約書など別の書式を用いるべきである。

根拠法令の解説 本確認書は、部品メーカーと完成品メーカーとの間の力関係の格差を踏まえ、民法第1条第2項が定める信義誠実の原則を基礎に据え、生産終了後の補給義務という民法に明文のない実務慣行を契約上明確化するものである。また、完成品メーカーが優越的な取引上の地位を利用して一方的に代金を据え置く行為や、下請代金支払遅延等防止法(下請法)第4条第1項各号が禁止する買いたたき等に該当する行為は、独占禁止法第2条第9項第5号の優越的地位の濫用として問題となりうるため、価格改定協議の実効性を担保する条項を設けることが望ましい。

実務でよくある失敗と対策 第一に、量産期間中の取引条件のみを定め、生産終了後の補給義務について何も定めないまま量産終了を迎え、乙が保守部品を確保できず紛争化するケースがある。対策として第9条のように生産終了通知と補給対応期間を明記する。第二に、価格改定の申入れ手続を定めても回答期限がなく、乙が回答を先送りし続けることで実質的に協議が機能しないケースがある。対策としてA-1のように回答期限を設ける。第三に、金型・治具の所有権や生産終了後の取扱いを定めないまま量産を開始し、補給対応の可否や引取り条件を巡って対立するケースがある。対策として第11条のように所有権の帰属と生産終了後の使用・返還ルールをあらかじめ整理しておく。

個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 対象部品及び対象完成品を別紙で具体的に特定しているか
  • [ ] 量産準備費用(金型・治具・検査設備)の負担割合を定めているか
  • [ ] 内示から確定発注までの手続及び変更許容範囲を定めているか
  • [ ] 価格改定協議の申入れ手続及び回答期限を定めているか
  • [ ] 優越的地位の濫用に該当しうる行為を甲乙で確認する条項を設けているか
  • [ ] 設計変更時の費用負担基準を明確にしているか
  • [ ] 生産終了通知の時期及び補給対応期間を定めているか
  • [ ] 補給対応期間中の単価見直しルールを定めているか
  • [ ] 金型・治具の所有権の帰属及び生産終了後の取扱いを定めているか
  • [ ] 秘密保持の対象及び存続期間を定めているか
  • [ ] 補給対応が困難となった場合の代替措置(乙による代替製造等)を定めているか