オフィスビルや商業施設の日常清掃・定期清掃を委託する契約書。建築物衛生法の清掃基準や登録業者制度を踏まえ、作業仕様と鍵管理責任を規定します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
ビル清掃業務委託契約書
第1部: 書式本文
【発注者商号】(以下「甲」という。)と【清掃業者商号】(以下「乙」という。)とは、甲が管理する建築物の清掃業務の委託に関し、次のとおりビル清掃業務委託契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 本契約は、甲が乙に対し、後記対象建築物における日常清掃及び定期清掃の業務(以下「本業務」という。)を委託し、乙がこれを受託することについて、甲乙間の権利義務関係を定めることを目的とする。
第2条(対象建築物及び登録) 1. 対象建築物は【建築物名称・所在地】とし、当該建築物は建築物における衛生的環境の確保に関する法律(以下「建築物衛生法」という。)第2条に定める特定建築物に【該当する・該当しない】。 2. 乙は、建築物衛生法第12条の2に定める建築物清掃業の登録を受けている場合はその登録番号を甲に通知するものとし、登録の取消しその他登録に影響する事由が生じたときは直ちに甲に報告する。
第3条(業務内容及び作業基準) 1. 本業務の内容は、日常清掃(床面清掃、ゴミ収集、共用部清掃)及び定期清掃(床面ワックス処理、窓ガラス清掃、貯水槽清掃等)とし、詳細は別紙業務仕様書に定める。 2. 乙は、建築物衛生法及び厚生労働省が定める建築物環境衛生管理基準に沿った清掃方法及び頻度により本業務を実施する。
第4条(作業日及び作業時間) 1. 日常清掃は【毎営業日】、定期清掃は【月1回・年4回】実施するものとし、具体的な実施日は甲乙協議の上、月間作業予定表として乙が作成する。 2. 甲の施設利用に支障が生じないよう、乙は原則として【営業時間外・早朝】に本業務を実施する。
第5条(鍵の管理) 1. 甲は、本業務の遂行に必要な範囲で、対象建築物の鍵又は入退室用IDカード(以下「本件鍵等」という。)を乙に貸与する。 2. 乙は、本件鍵等を善良な管理者の注意をもって管理し、複製、第三者への貸与又は目的外使用をしてはならない。 3. 乙は、本件鍵等の紛失又は盗難が生じたときは、直ちに甲に報告し、甲の指示に従って錠前の交換等の措置に協力する。この場合の費用負担は甲乙協議の上定める。
第6条(従事者の管理) 1. 乙は、本業務に従事する清掃員(以下「本件従事者」という。)を自らの雇用又は指揮監督の下に置き、業務の実施方法について自ら指示・管理する。 2. 乙は、本件従事者の氏名、健康状態その他甲が対象建築物への立入りに関し合理的に求める情報を事前に甲に通知する。
第7条(第三者への責任転嫁の禁止) 乙は、本業務の全部又は一部を第三者に再委託する場合、事前に甲の書面による承諾を得るものとし、再委託先の行為について甲に対する責任を免れない。乙は、再委託を理由として本契約上の義務を軽減又は免除されるものではない。
第8条(検査及び是正) 1. 甲は、本業務の実施状況について随時検査を行うことができ、清掃基準に適合しない箇所を発見したときは乙に是正を求めることができる。 2. 乙は、前項の是正要求を受けたときは、速やかに再作業その他必要な措置を講じる。
第9条(損害賠償及び保険) 1. 乙又は本件従事者の故意又は過失により、対象建築物の設備、備品又は第三者に損害が生じた場合、乙は自らの費用と責任においてこれを賠償する。 2. 乙は、清掃業務対応の賠償責任保険に加入し、その加入状況を甲に開示する。
第10条(委託料及び支払方法) 1. 本業務の委託料は月額【〇〇】円(消費税別途)とし、甲は乙に対し、毎月末日締め翌月末日までに乙の指定する口座に振り込む方法により支払う。 2. 定期清掃のうち別紙仕様書に含まれない特別作業を実施する場合の対価は、都度甲乙協議の上定める。
第11条(契約期間) 本契約の有効期間は、【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】から【1】年間とし、期間満了の【1】か月前までに甲乙いずれからも書面による別段の意思表示がないときは、同一条件で【1】年間自動更新するものとし、以後も同様とする。
第12条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の履行に関連して知り得た相手方の営業上の情報、対象建築物の入退室管理情報等を、相手方の書面による事前の承諾なく第三者に開示又は漏えいしてはならない。
第13条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団その他の反社会的勢力に該当せず、これらと関係を有しないことを表明し保証する。相手方が本条に違反した場合、催告を要せず本契約を解除することができる。
第14条(協議及び合意管轄) 1. 本契約に定めのない事項又は解釈に疑義が生じた事項は、甲乙誠意をもって協議し解決する。 2. 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上の合意を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各自1通を保有する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
(甲) 住所:【 】 商号又は名称:【 】 代表者:【 】 印
(乙) 住所:【 】 商号又は名称:【 】 代表者:【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 発注者(ビルオーナー・管理会社)向け書き換え
A-1. テナント入居中の複合ビルで清掃を委託する場合
第4条2項修正例:「乙は、テナントの営業時間及び共用部の利用状況を踏まえ、テナントごとの専有部と共用部とで作業時間帯を区分した清掃計画を作成し、甲の事前確認を受けるものとする。」 解説: テナントが混在するビルでは作業音や動線がクレームの原因になりやすく、区分ごとの時間管理を明記して苦情対応の根拠とする。
A-2. 特定建築物に該当し空気環境測定等の管理義務がある場合
第3条2項追加例:「乙は、貯水槽清掃及び空調設備の清掃を実施したときは、実施記録を作成し、甲が建築物衛生法上保存すべき記録として遅滞なく甲に提出する。」 解説: 特定建築物の所有者等は建築物環境衛生管理基準の遵守記録保存義務を負うため、清掃実施記録の提出を契約上明記し証跡を残す。
B. 清掃業者向け書き換え
B-1. テナント入居中の複合ビルで清掃を受託する場合
第8条2項修正例:「乙は、是正要求を受けた箇所について、甲の指定する期限までに再作業を実施するものとし、当該再作業に係る追加費用は、乙の作業基準不適合に起因する場合を除き甲乙協議の上定める。」 解説: 是正要求のたびに無償対応を求められると業者の採算が悪化するため、追加費用の負担ルールを事前に切り分けておく。
B-2. 鍵・IDカードの貸与を受けて業務を行う場合
第5条3項追加例:「本件鍵等の紛失が乙の管理体制の不備に起因しないことが甲乙協議により確認された場合、錠前交換費用は甲の負担とする。」 解説: 鍵紛失時の費用を一律乙負担とする条項は業者側のリスクが過大になりやすく、帰責事由の有無による負担区分を明記する。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、オフィスビルや商業施設の所有者又は管理会社が、日常清掃及び定期清掃を清掃専門業者に委託する場合に用いる。清掃業務に加えて設備管理や警備業務まで包括的に委託するいわゆる総合ビルメンテナンス契約の場合は、業務範囲ごとに適用法令や責任関係が異なるため、本書式をそのまま用いず業務ごとに条項を分離するか、包括契約用の書式を別途検討すべきである。
根拠法令及び留意点 建築物衛生法第2条は一定規模以上の建築物を「特定建築物」と定義し、同法第4条は特定建築物の所有者等に対し建築物環境衛生管理基準に従った維持管理を義務付けている。清掃業務自体は同法第12条の2に基づく都道府県知事等への登録制度(建築物清掃業の登録)が設けられており、第2条2項はこれを確認する条項である。もっとも清掃業の登録は営業のための必須要件ではなく、未登録業者への委託自体が直ちに違法となるわけではない点には留意する必要がある。鍵の管理責任については建築物衛生法に直接の定めはないが、善管注意義務(民法第400条)の考え方に基づき第5条で契約上明確化している。
実務でよくある失敗と対策 第一に、清掃基準が「通常の清掃を行う」といった抽象的な記載にとどまり、仕上がりの水準について発注者と業者の認識が食い違う失敗がある。第3条のように建築物環境衛生管理基準に準拠した作業基準を仕様書で具体化する。第二に、再委託先の作業ミスについて「再委託先の責任であり乙は関知しない」との主張がなされ、責任の所在が不明確になる失敗がある。第7条のように再委託時も乙が甲に対する責任を免れない旨を明記する。第三に、鍵やIDカードの紛失時に費用負担が定められておらず、その都度紛争化する失敗がある。第5条3項のように帰責事由の有無に応じた負担ルールをあらかじめ定める。これらは一般的な留意点にとどまるため、対象建築物の規模や契約形態に応じた調整は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象建築物が建築物衛生法上の特定建築物に該当するか確認したか
- [ ] 乙の建築物清掃業登録の有無及び登録番号を確認したか
- [ ] 作業基準(頻度・方法)を建築物環境衛生管理基準を踏まえ仕様書に具体化したか
- [ ] 作業日・作業時間帯とテナント営業時間との調整方法を定めたか
- [ ] 鍵・IDカードの貸与範囲、管理方法、紛失時の費用負担を明記したか
- [ ] 本件従事者の指揮監督が乙にあることを明記し偽装請負を回避しているか
- [ ] 再委託の可否及び再委託先の行為に対する乙の責任を明記したか
- [ ] 検査・是正要求の手続と追加費用の負担ルールを定めたか
- [ ] 損害賠償の範囲及び乙の賠償責任保険加入を確認したか
- [ ] 特定建築物の場合、清掃実施記録の作成・提出義務を定めたか