学校設置者が部活動指導員を委嘱する際の契約書。学校教育法施行規則に基づく職務内容や引率の権限、事故時の対応と報酬・服務規律を定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
部活動指導員委嘱契約書
第1部: 書式本文
【学校設置者・教育委員会名】(以下「甲」という。)は、【氏名】(以下「乙」という。)に対し、【学校名】(以下「本校」という。)における部活動指導員としての職務を委嘱するにあたり、次のとおり委嘱契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(委嘱) 甲は、乙を本校【部活動名】の部活動指導員として委嘱し、乙はこれを受託する。
第2条(委嘱期間) 委嘱期間は【〇年〇月〇日】から【〇年〇月〇日】までとする。ただし、甲乙いずれかが期間満了の【〇〇】日前までに別段の意思表示をしない限り、同一条件で更新することができる。
第3条(職務内容) 乙は、本校長の監督を受け、次の各号に掲げる職務のうち甲が指定する範囲を行う。 一 部活動の実技指導及び学校外での活動(大会・練習試合等)における引率 二 用具、機器の点検及び施設の管理 三 部活動の活動計画の作成及び学校長への報告 四 生徒指導に係る対応(部活動顧問教員との連携を含む。) 五 保護者等への連絡 六 部活動中の事故が発生した場合における現場での初期対応
第4条(単独指導及び単独引率) 乙は、本校長が別途指定する範囲において、部活動顧問教員の同行なく、単独で技術指導又は学校外での活動への引率を行うことができる。
第5条(服務) 乙は、職務の遂行にあたり、生徒の安全に配慮し、体罰その他生徒の心身に不当な影響を与える指導を行ってはならない。
第6条(秘密保持) 乙は、職務上知り得た生徒及び保護者に関する情報を、正当な理由なく第三者に漏らしてはならない。この義務は、本契約終了後も存続する。
第7条(信用失墜行為の禁止) 乙は、本校及び甲の信用を損なうような行為をしてはならない。
第8条(報酬及び費用弁償) 甲は乙に対し、職務の対価として【時間額・日額】による報酬を支払うほか、職務遂行に伴い生じた交通費等の実費については、甲の定める基準に従い費用弁償する。
第9条(事故発生時の対応及び保険) 乙は、部活動中に生徒の傷病その他の事故が発生した場合、直ちに本校長に報告し、応急措置その他必要な対応を行う。甲は、乙の職務遂行中の事故に備え、必要な保険への加入その他の措置を講ずるよう努める。
第10条(研修) 乙は、甲が実施する部活動指導員としての資質向上のための研修を受講するものとする。
第11条(解嘱) 甲は、乙が本契約に違反した場合、心身の故障により職務の遂行に支障があると認める場合その他相当の事由がある場合、委嘱期間中であっても本契約を解除(解嘱)することができる。
第12条(身分) 乙の職務は、地方公務員法上の非常勤職員としての位置付けに基づくものであり、その任用形態、勤務条件及び報酬の支給方法は、甲の定める条例その他の関係規程による。
第13条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、甲の主たる事務所の所在地を管轄する裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 学校設置者・教育委員会(甲)向けの修正
A-1. 単独引率の範囲を大会規程等の外部基準に連動させる修正
修正後:「第4条の単独引率は、乙が所定の研修を修了し、かつ当該大会又は競技団体の規程上、部活動指導員による引率が認められている場合に限り行うことができる。」 一言解説: 大会主催団体や競技連盟によって引率者の資格要件が異なることが多いため、外部規程との整合性を担保する修正である。
A-2. 兼職・兼業に関する事前届出義務の追加
修正後:「乙は、他の教育機関その他の団体において指導業務に従事しようとする場合、事前に甲に届け出るものとする。」 一言解説: 非常勤職員としての服務規律の一環として、利益相反や指導の質の確保の観点から兼業状況を把握するための修正である。
B. 部活動指導員(乙)向けの修正
B-1. 職務範囲外の事務作業を依頼された場合の取扱いの明確化
修正後:「乙は、第3条各号に掲げる職務以外の事務(会計処理その他部活動運営に付随する管理業務を除く。)を依頼された場合、追加の職務として実施するか否かを甲と協議の上、決定することができる。」 一言解説: 部活動指導員の職務範囲が曖昧なまま拡大解釈されないよう、指導員側から範囲外業務への対応方針を明確化する修正である。
B-2. 事故発生時の責任の所在に関する確認条項
修正後:「乙が甲の指示及び本契約に定める職務範囲に従って行った指導又は引率に起因して生じた事故については、乙に故意又は重大な過失がある場合を除き、乙は個人として責任を負わない。」 一言解説: 非常勤の立場で指導にあたる乙が、通常の職務遂行中の事故について過度な個人責任を負わされないようにするための確認的な修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面
本書式は、学校の設置者又は教育委員会が、部活動の技術指導等を担う指導員を非常勤の立場で委嘱する場面に用いる。部活動顧問教員としての委嘱や、外部の民間事業者との業務委託契約とは法的性質が異なるため、実態に応じて適切な形式を選択する必要がある。
根拠法令
学校教育法施行規則第78条の2は、部活動指導員が、中学校等における部活動(スポーツ、文化、科学等に関する教育活動)について技術的な指導等に従事するものとし、校長の監督を受ける旨を定めている。単独での引率や事故発生時の現場対応を含む具体的な職務の範囲は、同条を踏まえて国が示す運用上の留意事項等でも整理されており、委嘱契約書上は、これらを参考にしつつ設置者ごとの実情に応じて職務内容を具体的に列挙しておくことが望ましい。部活動指導員を教育委員会等が非常勤職員として任用する場合、その勤務条件や報酬については、地方公務員法上の会計年度任用職員に関する規律及び地方自治法上の報酬・費用弁償に関する規律を踏まえ、条例その他の関係規程に従って定める必要がある。
実務でよくある失敗と対策
第一に、施行規則上の職務範囲を確認せず、部活動指導員に顧問教員相当の広範な事務を担わせてしまい、職務の範囲及び責任の所在が不明確になる例がある。委嘱書に列挙した職務以外の依頼が生じた場合の取扱いをあらかじめ定めておくことが望ましい。第二に、単独引率を認める場合の要件(研修修了、大会規程との整合性等)を定めずに実施し、大会側で引率資格を認められないなどのトラブルが生じる例がある。第三に、事故発生時の報告体制及び保険加入の要否を検討しないまま委嘱を開始し、事故発生時の対応が後手に回る例もある。第四に、報酬の算定方法(時間額か日額か)や費用弁償の対象となる交通費等の範囲が条例その他の関係規程と整合していないまま契約書を作成し、後日、支給額をめぐって指導員との認識の齟齬が生じる例もある。委嘱契約書の内容は、必ず設置者側の給与・報酬に関する条例及び規則と突き合わせて確認する必要がある。個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 委嘱する職務内容が学校教育法施行規則第78条の2の想定する範囲に沿っているか確認したか
- [ ] 校長の監督体制及び顧問教員との連携方法を明記したか
- [ ] 単独指導・単独引率を認める範囲及び要件(研修修了等)を明確にしたか
- [ ] 生徒及び保護者に関する秘密保持義務を明記したか
- [ ] 事故発生時の報告手順及び初期対応の内容を具体的に定めたか
- [ ] 職務遂行中の事故に備えた保険加入の要否を検討したか
- [ ] 非常勤職員としての身分、報酬及び費用弁償の根拠規程を確認したか
- [ ] 兼職・兼業の届出義務の要否を検討したか
- [ ] 解嘱事由及び解嘱手続を明記したか
- [ ] 委嘱期間及び更新の要否・手続を明記したか
- [ ] 報酬の算定方法及び費用弁償の対象範囲が関係条例・規則と整合しているか確認したか