労働契約承継法第4条・第5条に基づき労働者が承継の有無に異議を述べる書面です。提出期限と効果を明示した実務用の様式です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
会社分割に伴う労働者異議申出書
第1部: 書式本文
異議申出書ひな形
労働契約承継に関する異議申出書
【提出年月日】 【分割会社の商号】御中
申出人 所属:【所属部署】 氏名:【氏名】 印
私は、貴社が【年月日】を効力発生日として実施する会社分割に伴う労働契約の承継について、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(以下「労働契約承継法」という。)に基づき、次のとおり異議を申し出ます。
該当する異議の種類(いずれかにチェック) □ 承継事業に主として従事しているにもかかわらず労働契約が承継会社等に承継されない旨の通知を受けたことについての異議(労働契約承継法第4条第3項) □ 承継事業に主として従事していないにもかかわらず労働契約が承継会社等に承継される旨の通知を受けたことについての異議(労働契約承継法第5条第3項)
異議申出の理由 【現在の従事業務の内容、承継事業との関係、通知内容に対する具体的な反論等を記載】
添付資料 【業務従事状況を裏付ける資料がある場合はその名称】
以上のとおり異議を申し出ます。本書面は【提出方法:持参・郵送・電子メール】により提出します。
記載要領(記載項目一覧)
- 提出日及び提出先(分割会社の商号・宛先)を明記する。
- 申出人の所属部署及び氏名を記載し、押印又は署名を行う。
- 異議の種類(労働契約承継法第4条に基づくものか第5条に基づくものか)を明確に区別する。
- 異議申出の理由には、現在の従事業務の実態と会社からの通知内容との齟齬を具体的に記載する。
- 提出期限は分割契約又は分割計画の効力発生日の前日までであることを確認する。
- 提出方法(持参・郵送・電子メール等)及び到達の証拠化の方法を記載する。
- 異議申出後の効果(労働契約が承継会社等に承継される、又は承継されない)を確認欄で示す。
- 異議申出書の控えを申出人が保管できるよう、受領印又は受領書の交付を求める記載を設ける。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 異議を申し出る労働者向けの修正
A-1. 提出期限が迫っている場合の即日提出用の簡略化
修正後:「私は、本書面をもって労働契約承継法第4条第3項に定める異議を申し出ます。詳細な理由は追って書面で補充します。」 一言解説: 提出期限(効力発生日の前日)を徒過すると異議申出の効果が生じないため、理由の詳細化よりも期限内提出を優先する簡略書式である。
A-2. 従事業務の実態を裏付ける資料添付欄の追加
追加条文例:「添付資料として、業務日報の写し【期間】及び上長作成の業務分担表を添付する。」 一言解説: 主として従事していたか否かの判断は業務実態に基づくため、労働者側が客観的資料を添付できる欄を設ける修正である。
B. 会社(分割会社・承継会社等)向けの修正
B-1. 受領記録欄の追加
追加条文例:「本異議申出書は【年月日】【時刻】に【受領担当者氏名】が受領した。受領印:【印】」 一言解説: 異議申出の到達時期は効果発生の判断に直結するため、会社側が受領日時を記録に残す欄を追加する修正である。
B-2. 異議申出後の対応方針通知への修正
修正後:「会社は、本異議申出を受領した日から【期間】以内に、労働契約の取扱いに関する対応方針を申出人に書面で通知する。」 一言解説: 異議申出により労働契約の帰属が法律上当然に変更される場合であっても、労働者に対する事後の説明が実務上必要となるため、対応方針の通知期限を明記する修正である。
B-3. 複数名の労働者から同種の異議が出された場合の一括対応欄
追加条文例:「同一の承継事業に関して複数の労働者から同種の異議申出があった場合、会社は各申出人に対し共通する説明事項をまとめた回答文書を作成し、個別の事情がある部分のみ別途対応する。」 一言解説: 同一部署から多数の異議申出が予想される場合、会社側の対応を効率化しつつ個別事情への配慮も欠かさない運用を定める修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、会社分割に伴い労働契約承継法第2条の通知を受けた労働者が、自らの労働契約の承継の有無について異議を述べる場面で用いる。通知内容に納得しており異議を述べる意思がない場合や、そもそも会社分割ではなく事業譲渡による転籍の場面(この場合は個別同意の問題であり異議申出制度は適用されない)では本書式を用いるべきではない。
根拠法令 労働契約承継法第4条は、承継事業に主として従事する労働者について労働契約を承継させる旨の分割契約等の定めがない場合に、当該労働者が異議を申し出ることにより労働契約が承継会社等に承継されたものとみなされることを定めている。同法第5条は、逆に承継事業に主として従事していない労働者について労働契約を承継させる旨の定めがある場合に、当該労働者が異議を申し出ることにより労働契約が分割会社に留まったものとみなされることを定めている。いずれの異議申出も、分割契約等の効力発生日の前日までに行う必要がある。同法第2条は分割会社による通知義務を、第3条は承継事業に主として従事する労働者の労働契約の原則的な承継関係を、それぞれ定めており、これらの規定と一体で理解する必要がある。
実務でよくある失敗と対策 第一に、異議申出の期限(効力発生日の前日)を労働者が誤解し、期限後に申し出て効果が生じない失敗がある。記載要領5のとおり期限を明記し、提出方法を確実なものにすることが対策となる。第二に、異議申出書に異議の種類(第4条か第5条か)が明記されず、会社側が対応方針を判断しづらい失敗がある。記載要領3のとおりチェック欄で種類を明確化することが対策となる。第三に、会社側が異議申出書の受領日時を記録しておらず、期限内提出であったか争いになる失敗がある。B-1のように受領記録欄を設けることが対策となる。主として従事していたか否かの評価は業務実態に即した個別判断を要するため、個別事案は専門家に確認しながら対応することが望ましい。
また、労働契約承継法第2条の通知には、承継される事業の内容、労働契約が承継されるか否かの取扱い及び異議申出に関する事項を記載することが求められており、通知内容が不十分な場合には労働者が異議申出の要否を正しく判断できないおそれがある。会社側は、異議申出書のひな形とあわせて、通知書面の記載内容が法定事項を満たしているかを事前に点検しておく必要がある。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 通知を受けた労働契約承継法第4条・第5条のいずれの類型に該当するかを確認したか
- [ ] 異議申出の提出期限(効力発生日の前日まで)を確認したか
- [ ] 申出人の所属・氏名・押印又は署名の記載漏れがないか確認したか
- [ ] 異議申出の理由を従事業務の実態に即して具体的に記載したか
- [ ] 提出方法及び到達の証拠化(受領印・配達記録等)を決めたか
- [ ] 会社側の受領記録欄を設けたか
- [ ] 異議申出後の労働契約の帰属(承継の有無)を確認欄で示したか
- [ ] 異議申出後の対応方針の通知期限を定めたか
- [ ] 従事業務を裏付ける資料の添付の要否を確認したか
- [ ] 申出人が控えを保管できる体制(受領書交付等)を整えたか
- [ ] 労働契約承継法第2条通知の記載事項が法定要件を満たしているか点検したか
- [ ] 複数名から同種の異議が出された場合の対応方針を事前に検討したか