通行や引水、眺望の確保のため他人の土地に地役権を設定する場面の契約書。民法第280条以下の地役権規定と不動産登記法に基づく登記手続・対価の定めを収録。

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地役権設定契約書

第1部: 書式本文

第1条(当事者及び目的) 承役地所有者甲は、要役地所有者乙のため、甲所有の別紙物件目録記載の土地(以下「承役地」という。)に、乙所有の別紙物件目録記載の土地(以下「要役地」という。)の便益に供する地役権(以下「本地役権」という。)を設定する。

第2条(地役権の内容) 本地役権の内容は、〔選択A: 通行/選択B: 引水/選択C: 眺望確保のための高さ制限/選択D: 電線路敷設〕を目的とする。具体的な範囲及び方法は別紙図面のとおりとする。

第3条(地役権の範囲) 本地役権の行使範囲は、承役地のうち別紙図面に着色した部分(面積約〇平方メートル)とする。

第4条(対価) 乙は甲に対し、本地役権設定の対価として金〇〇円を支払う。〔又は: 分割払いとし、月額金〇〇円を〇年間支払う。〕

第5条(存続期間) 本地役権の存続期間は、〔選択A: 期間の定めなし(承役地又は要役地が存する限り存続)/選択B: 〇年間〕とする。

第6条(承役地の使用制限) 甲は、本地役権の行使を妨げる工作物の設置その他の行為をしてはならない。

第7条(要役地所有者の維持管理義務) 乙は、本地役権の行使に必要な設備(通路の舗装、水路等)を自己の費用で維持管理する。

第8条(登記への協力) 甲及び乙は、本地役権設定契約締結後、遅滞なく地役権設定登記の申請手続に協力する。

第9条(承継人への効力) 本地役権は、要役地又は承役地の全部又は一部が譲渡された場合であっても、それぞれの譲受人に承継される(民法第281条)。

第10条(地役権の消滅事由) 本地役権は、承役地又は要役地の滅失、混同その他法令の定める事由により消滅する。

第11条(合意管轄) 本契約に関する紛争は、承役地所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 承役地所有者向けの修正

A-1. 使用範囲の限定及び原状回復義務の追加

追加条文例:「乙は、本地役権の行使にあたり、承役地上の甲の使用収益を必要最小限度において妨げないよう配慮し、設備の設置・撤去にあたっては速やかに原状回復する。」 一言解説: 承役地所有者が引き続き土地を自ら利用する場面(通路以外の部分での耕作、駐車等)を想定し、要役地所有者の権利行使に一定の配慮義務を課す修正である。

B. 要役地所有者向けの修正

B-1. 承役地所有者の妨害行為に対する差止請求権の明記

追加条文例:「甲が本地役権の行使を妨げる工作物を設置した場合、乙は当該工作物の撤去を求めることができ、甲はこれに応じるものとする。」 一言解説: 地役権は物権であり第三者に対する妨害排除請求権が認められるが、契約上も確認的に明記することで紛争予防効果を高める修正である。

B-2. 承役地の分筆・区画変更時の権利保全条項の追加

追加条文例:「承役地の全部又は一部が将来分筆される場合であっても、本地役権は分筆後の各土地のうち本地役権の行使範囲を含む土地について、当然に存続する。」 一言解説: 承役地が将来分筆されて複数の土地に分かれた場合でも、地役権が消滅せず存続することを確認的に明記し、要役地所有者の権利の安定性を高める修正である。

C. 開発事業者(要役地・承役地双方に関与する場合)向けの修正

C-1. 造成工事に伴う一時的な地役権の変更条項の追加

追加条文例:「承役地において造成工事又はインフラ整備工事が行われる場合、甲及び乙は協議のうえ、工事期間中に限り本地役権の行使方法を一時的に変更することができる。」 一言解説: 分譲開発等で複数区画に地役権を設定する場合、造成工事の進捗に応じて通路の位置等を一時的に変更する必要が生じることがあるため、その調整手続をあらかじめ定める修正である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、ある土地(要役地)の利便性を高めるために、隣接又は近接する他人の土地(承役地)に通行、引水、眺望確保等の目的で地役権を設定する場面で用いる。一時的な利用にとどまる場合(工事期間中のみの通行等)は、地役権という物権を設定するよりも、賃貸借契約や使用貸借契約、又は前掲の私道通行承諾書のような債権的合意で足りることが多く、恒久的・対世的な権利として保護したい場合に地役権の設定登記まで行う実益がある。

根拠法令 民法第280条は、地役権者は設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する旨を定める。同法第281条は、地役権は要役地の所有権に従たるものとして、要役地とともに移転し、又は要役地に存する他の権利の目的となる旨を定めており、要役地の譲渡に伴い地役権も当然に承継される。同法第285条は継続的で外形上認識できる地役権について取得時効の対象となりうる旨を、同法第289条以下は承役地の使用に関する規定を定める。地役権の対抗要件は不動産登記法に基づく地役権設定登記であり、登記をしなければ第三者に対抗できない(民法第177条)。

実務でよくある失敗と対策 第一に、地役権設定契約を締結したのみで登記手続を怠り、承役地が第三者に譲渡された際に地役権を対抗できなくなる失敗がある。第8条のように登記への協力義務を明記し、実際に登記手続を完了させることが重要である。第二に、地役権の行使範囲(通路の幅員、引水管の位置等)を図面上明確にせず、後日、承役地所有者との間で範囲についての認識の相違が生じる失敗がある。第3条のように図面を添付し、面積・位置を具体的に特定することが望ましい。第三に、承役地上の設備(通路の舗装、水路の管理等)の維持管理責任を定めず、老朽化した際に修繕義務の所在をめぐって紛争になる失敗がある。第7条のように維持管理義務の主体を明確にすることが有効である。

第四に、地役権の存続期間を「期間の定めなし」としたにもかかわらず、承役地の相続や譲渡の際に新所有者から地役権の存在を知らなかったとして紛争になる失敗もある。登記を完了させておけば対抗要件は具備されるが、実務上は登記の存在を新所有者に周知する意味でも、不動産売買の重要事項説明において地役権の負担を確実に説明することが望ましい。第五に、眺望確保のための高さ制限を目的とする地役権について、制限の対象となる建築物の高さの基準点や測定方法を具体的に定めないまま契約し、将来の建替え時に基準の解釈をめぐって争いになる失敗もある。高さ制限を目的とする場合は、基準点(地盤面等)及び測定方法を図面や数値で明確にしておくことが重要である。

地役権の内容設計は土地の利用状況によって多様であり、対価の算定や登記手続の詳細は個別の事案に応じて専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 要役地・承役地の登記事項証明書を確認したか
  • [ ] 地役権の目的(通行・引水・眺望確保等)を具体的に特定したか
  • [ ] 行使範囲を示す図面を添付したか
  • [ ] 対価の有無及び支払方法を確認したか
  • [ ] 存続期間の定めの有無を確認したか
  • [ ] 地役権設定登記の申請手続を実施する準備をしたか
  • [ ] 承役地上の設備の維持管理責任者を明確にしたか
  • [ ] 承役地所有者による妨害行為への対応(撤去請求等)を明記したか
  • [ ] 承役地の分筆時における地役権の存続について確認したか
  • [ ] 眺望確保等を目的とする場合、高さ制限の基準点・測定方法を具体的に定めたか
  • [ ] 重要事項説明において地役権の負担を説明する準備をしたか