セット内容
- 賃金規程(就業規則附属)Word形式
- 割増賃金(時間外・休日・深夜)の計算例
- 諸手当(通勤・役職・住宅等)の設計例
こんな場面で
就業規則本体とは別に賃金の決定・計算・支払方法を詳細に定めた規程を整備したい事業者が、賃金体系を明文化する場面。
特長
- 基本給・諸手当・割増賃金の算定方法を条項として明記し、未払い残業代トラブルを予防
- 昇給・賞与の決定基準(記載する場合の留意点)を解説
- 雇用契約書(koyou-keiyakusho-kihon)・労働条件通知書と整合させる運用ポイントを収録
賃金規程(就業規則附属)(監修用ドラフト)
⚠ 本ファイルは弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布を禁止する。
商品ID: chingin-kitei / 価格: 3,480円 / 立場バージョン: 事業者(社内規程)/賃金形態: 月給制(標準型)・固定残業代(みなし残業代)導入型
本ドラフトは第2部で「月給制(固定残業代を含まない標準型)」と「固定残業代(みなし残業代)を導入する版」の差分を提示する構成とし、第1部には固定残業代を含まない標準型をベース条文として掲載する。
第1部: 規程本文(標準構成)
賃金規程
第1条(目的)
本規程は、〇〇株式会社(以下「会社」という。)の就業規則第〇条に基づき、従業員の賃金に関する事項を定めるものである。
第2条(適用範囲)
- 本規程は、会社と労働契約を締結した正社員に適用されるものと解される。
- 契約社員、パートタイマー、アルバイトその他の名称を問わず、正社員以外の雇用形態の従業員の賃金については、別に定める場合を除き、個別の労働契約又は雇用契約書(
koyou-keiyakusho-kihon)の定めるところによる。
第3条(賃金の構成)
賃金は、次の各号に掲げるものをもって構成する。 (1)基本給 (2)役職手当 (3)職務手当 (4)通勤手当 (5)家族手当 (6)時間外勤務手当、休日勤務手当及び深夜勤務手当(以下「割増賃金」と総称する。) (7)その他会社が定める諸手当
第4条(基本給)
- 基本給は、従業員の職務内容、職務遂行能力、勤続年数その他会社が定める基準に基づき、個別に決定する。
- 基本給の額は、労働契約締結時に個別に決定し、雇用契約書又は労働条件通知書に明記するものとする。
- 基本給には、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する割増賃金を含まないものとし、割増賃金は第10条の定めるところにより別途支給する。
第5条(役職手当)
- 役職手当は、次の各号に定める役職にある者に対し、当該役職にある期間、支給する。 (1)部長職 (2)課長職 (3)その他会社が指定する管理監督者に相当する役職
- 役職手当の額は、役職ごとに会社が別に定める基準による。
- 労働基準法第41条第2号に定める監督若しくは管理の地位にある者(以下「管理監督者」という。)に該当するかどうかは、役職の名称のみによらず、職務内容、責任と権限、勤務態様(労働時間に関する裁量の有無等)及び賃金等の待遇を実態に即して判断するものと解される。
第6条(職務手当)
職務手当は、特定の職務(専門資格を要する業務、特殊な技能を要する業務等会社が指定するもの)に従事する従業員に対し、会社が別に定める基準により支給する。
第7条(通勤手当)
- 通勤手当は、従業員が住居から会社が指定する就業場所まで通勤するために要する実費相当額について、会社が定める上限の範囲内で支給する。
- 会社が指定する就業場所以外の場所(テレワーク実施時の自宅等)から就業する場合の通勤手当の取扱いは、テレワーク勤務規程その他会社が別に定めるところによる。
第8条(家族手当)
家族手当は、従業員が扶養する配偶者及び子について、会社が別に定める基準により支給する。
第9条(賃金の計算期間及び支払日)
- 賃金は、毎月1日から末日までを計算期間とし、翌月〇日に従業員が指定する金融機関口座への振込みにより支払う。
- 支払日が金融機関の休業日に当たる場合は、その前営業日に支払うものとする。
- 賃金の計算期間の途中で入社又は退職した従業員の賃金は、当該計算期間の所定労働日数を基礎として日割計算により支給する。
第10条(割増賃金の計算方法)
- 時間外勤務手当、休日勤務手当及び深夜勤務手当は、労働基準法第37条の定めるところにより、次の各号の計算式により算定する。 (1)時間外勤務手当: 1時間当たりの賃金額 × 1.25 × 時間外労働時間数 (2)休日勤務手当: 1時間当たりの賃金額 × 1.35 × 法定休日労働時間数 (3)深夜勤務手当: 1時間当たりの賃金額 × 0.25 × 深夜労働時間数(時間外労働と重複する場合は1.50、法定休日労働と重複する場合は1.60とする。)
- 1か月の時間外労働時間数が60時間を超えた場合、その超えた部分の時間外勤務手当は、1時間当たりの賃金額に1.50を乗じて算定する。
- 「1時間当たりの賃金額」は、次の算式により算定する。 月給(基本給及び第3条各号に定める手当のうち、家族手当、通勤手当その他労働基準法施行規則第21条に定める除外賃金を除いたものの合計額) ÷ 1年間における1か月平均所定労働時間数
第11条(1か月平均所定労働時間数)
前条第3項の1か月平均所定労働時間数は、次の算式により算定し、毎事業年度の開始時に会社が定めて従業員に周知するものとする。 (365日(うるう年は366日)- 年間所定休日日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12か月
第12条(欠勤、遅刻及び早退の場合の賃金控除)
- 従業員が欠勤、遅刻又は早退をした場合、その時間に相当する賃金は控除する。
- 前項の控除額は、第10条第3項に定める1時間当たりの賃金額を基礎として、次の算式により算定する。 1時間当たりの賃金額 × 欠勤、遅刻又は早退の時間数
第13条(昇給)
- 会社は、年1回、原則として〇月に、従業員の勤務成績、会社の業績その他会社が定める基準を総合的に考慮し、昇給の可否及び額を決定する。
- 会社の業績の著しい悪化その他やむを得ない事由がある場合、前項の昇給を行わないことがある。
- 昇給の実施は会社の経営状況に応じて判断されるものであり、従業員に対し将来の昇給を保証するものではないと解される。
第14条(賞与)
- 会社は、会社の業績及び従業員の勤務成績を勘案し、原則として年2回(〇月及び〇月)、賞与を支給することがある。
- 賞与の額は、算定対象期間における会社の業績及び従業員個人の勤務成績、貢献度その他会社が定める基準により、その都度決定する。
- 賞与の支給日に在籍していない従業員(支給日前に退職した者を含む。)に対しては、賞与を支給しないことができるものとする。
- 前3項の規定は、賞与の支給を会社に義務付けるものではなく、会社の業績その他の事情により賞与を支給しないことがある旨を確認的に定めるものと解される。
第15条(賃金の控除)
会社は、賃金の支払いに際し、法令に定めのあるもの(所得税、住民税、社会保険料等)のほか、労使協定に定めるものについて、賃金から控除して支払うことができる。
第16条(休職者等の賃金)
休職、休業その他労務の提供がない期間の賃金の取扱いについては、就業規則その他会社が別に定めるところによる。
第17条(非常時払い)
従業員又はその収入によって生計を維持する者が、出産、疾病、災害その他労働基準法施行規則第9条に定める非常の場合の費用に充てるために請求したときは、会社は、既往の労働に対する賃金を支払期日前であっても支払うものとする。
第18条(賃金の改定)
本規程に定める賃金の体系及び計算方法は、法令の改正、経済情勢の変動その他会社の経営上の必要に応じて見直すことがあるものとする。
第19条(規程の改廃)
本規程の改廃は、就業規則の変更手続に準じ、労働基準法第90条に定める過半数労働組合又は過半数代表者からの意見聴取その他所定の手続を経て行うものとする。
第20条(施行期日)
本規程は、〇〇〇〇年〇〇月〇〇日から施行する。
以上
第2部: バージョン差分
本商品は、「月給制(固定残業代を含まない標準型)」と「固定残業代(みなし残業代)を導入する版」の2バージョンを想定する。第1部は標準型であり、以下は固定残業代導入版へ調整する際の差分(代替条文)及び導入時の留意点である。
A. 固定残業代(みなし残業代)を導入する版への変更
A-1. 第4条(基本給)に固定残業代の除外を明記
修正後: 「基本給には、時間外労働、休日労働及び深夜労働に対する割増賃金を含まないものとし、割増賃金は第10条の定めるところにより別途支給する。ただし、固定残業代を導入する場合、当該固定残業代に相当する部分は基本給と明確に区別して第10条の2に定めるところによる。」
解説: 固定残業代を基本給に含めて一体的に支給する方式(いわゆる「基本給組込み型」)は、後述のとおり通常の労働時間に対する賃金部分と割増賃金に相当する部分とを判別できないおそれが高く、近年の裁判例の傾向に照らし採用を避けるべきと考えられる。
A-2. 第10条の次に「固定残業代(業務手当等)」に関する条文を新設
追加条文例(第10条の2として新設):
「1. 会社は、時間外勤務手当、休日勤務手当及び深夜勤務手当(以下「割増賃金」という。)の支払いに代え、又はこれと併せて、固定残業代として業務手当(月額〇〇〇〇円)を支給する。 2. 前項の業務手当は、1か月当たり〇〇時間分の時間外労働(うち深夜労働〇時間、法定休日労働〇時間を含む場合はその内訳)に対する割増賃金に相当するものとし、その計算の基礎、時間数及び金額を雇用契約書及び給与明細に明記するものとする。 3. 従業員の実際の時間外労働等の時間数に基づき算定した割増賃金の額が前項の業務手当の額を超えるときは、会社は、その差額を当該計算期間の賃金支払日に支払うものとする。 4. 会社は、固定残業代に相当する時間数を超える時間外労働等を従業員に恒常的に行わせることのないよう、労働時間管理に努めるものとする。」
解説: 固定残業代を有効なものとして扱うためには、(i)通常の労働時間に対する賃金部分と割増賃金に相当する部分とが明確に区別できること(明確区分性)、及び(ii)当該手当が時間外労働等の対価として支払われるものであること(対価性)の2要件を満たす必要があると解されている。第2項で対象時間数・金額を具体的に明記し、第3項で超過分の差額精算義務を明記することは、この2要件を充足する上で重要な要素になると考えられる。
A-3. 第13条・第14条(昇給・賞与)に固定残業代の影響を除外する旨の確認規定を追加
追加条文例: 「固定残業代(業務手当)は、昇給及び賞与の算定基礎に含めないものとする。」
解説: 固定残業代を賞与や退職金の算定基礎に含めるかどうかは、企業ごとに運用が分かれる論点であるが、固定残業代の性質(割増賃金の代替)に照らし、通常の賃金体系上の手当と区別して扱う例が多いと考えられる。
A-4. 求人票・雇用契約書との整合性に関する運用上の留意事項(条文外の運用ルール)
固定残業代を導入する場合、労働条件通知書及び求人票において、基本給と固定残業代の内訳(何時間分の時間外労働に対する対価か、金額はいくらか)を分離して明示することが、職業安定法及び労働基準法施行規則が求める労働条件明示の観点から必要と解される。内訳を明示せず「月給〇〇万円(固定残業代含む)」とのみ記載する運用は、明確区分性の要件を欠くと評価されるリスクが高いと考えられる。
A-5. 固定残業代の対象時間数の設定水準に関する留意事項
固定残業代の対象時間数を1か月当たり45時間又はそれに近い時間数に設定する例が見られるが、労働基準法第36条に基づく時間外労働の上限規制(原則月45時間、年360時間)との関係で、常態的に上限に近い時間外労働を前提とする設計は、長時間労働を追認するものとして、労務管理上望ましくないと考えられる。対象時間数の設定に当たっては、実際の平均的な時間外労働の実態と乖離しない水準とすることが望ましい。
B. 月給制(固定残業代を含まない標準型)の位置づけ
第1部の本文がこれに該当する。基本給と割増賃金を明確に分離して計算する構成であり、固定残業代を巡る紛争リスクを避けたい事業者、又は残業時間の変動が大きく固定額での運用になじまない事業者に適した構成である。
第3部: 逐条解説(購入者向け)
第1条・第2条(目的・適用範囲)
賃金規程は就業規則の一部又は附属規程として位置づけられるのが一般的であり、就業規則本体に賃金に関する詳細を書き切れない場合に、別規程として整備する例が多い。契約社員・パートタイマー等については、雇用契約書(koyou-keiyakusho-kihon)及び労働条件通知書との整合性を確保する必要があり、特に同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法第8条・第9条)の観点から、正社員との待遇差について不合理な相違がないかを別途整理しておくことが望ましいと考えられる。
第3条〜第8条(賃金の構成・各手当) 諸手当の性質を明確にすることは、後述の割増賃金の計算基礎(第10条第3項)から除外すべき手当(家族手当、通勤手当等、労働基準法施行規則第21条各号に列挙されたもの)を正しく切り分けるための前提として重要である。手当の名称が「家族手当」であっても、扶養家族の有無によらず一律に支給される場合は、実態として除外賃金に該当しないと判断されるリスクがある点に留意が必要である。同様に、通勤手当についても、実際の通勤距離や実費に応じて算定されたものでなく、一律定額で支給されている場合には、労働基準法施行規則第21条の除外賃金には該当しないと解される余地があり、規程上の手当の名称と実際の支給実態を照合しておくことが望ましいと考えられる。
除外賃金に該当し得る手当を安易に増設し、実質的な基本給部分を除外賃金として扱う運用は、割増賃金の計算基礎額を不当に圧縮するものと評価され、未払い賃金の指摘を受けるリスクが高いと考えられる。手当を新設する際は、当該手当が家族数や通勤距離等の除外事由に連動した合理的な算定基準に基づくものかを確認することが望ましい。
第4条(基本給)・第5条(役職手当) 役職手当と管理監督者性(労働基準法第41条第2号)の関係は、いわゆる「名ばかり管理職」を巡る紛争で繰り返し問題となってきた論点である。役職手当を支給していること自体は管理監督者性を基礎付ける一事情にすぎず、職務内容、責任と権限の実態、労働時間に関する裁量の有無、待遇の水準等を総合的に考慮して判断されるものと解される。管理監督者に該当しないと判断された場合、当該従業員には時間外労働及び休日労働に対する割増賃金の支払義務が生じる一方、深夜労働に対する割増賃金は管理監督者であっても支払いを要すると解されている点にも留意が必要である。役職手当の額を検討する際は、管理監督者性が否定された場合を想定し、想定される割増賃金額との比較を行っておくことが望ましいと考えられる。
第9条(賃金の計算期間及び支払日) 賃金支払いの5原則(通貨払い・直接払い・全額払い・毎月1回以上払い・一定期日払い、労働基準法第24条)を満たす必要がある。日割計算の方式(暦日ベースか所定労働日ベースか)は複数の考え方があり、就業規則・雇用契約書との整合性を確認すべき箇所である。
第10条(割増賃金の計算方法) 割増賃金の計算方法は、未払い残業代トラブルの中心的な争点になりやすい部分である。2023年4月から中小企業にも適用された月60時間超の時間外労働に対する割増率引上げ(1.5倍)は、本条第2項に反映済みであるが、購入者の事業規模・施行時期に応じた確認が必要である。1時間当たりの賃金額の算定基礎(第3項)から除外できる手当は労働基準法施行規則第21条に限定列挙されており、規程上「除外賃金」として整理した手当が実質的にこれに該当するかどうかは、名称ではなく支給実態に即して判断される点に留意すべきである。
第10条の2(固定残業代、導入版のみ) 固定残業代を巡っては、最高裁判所の複数の判例において、割増賃金として支払われたと認められるためには、(i)通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別できること(明確区分性)、及び(ii)割増賃金として支払われた金額が、労働基準法所定の計算方法により算定した割増賃金の額を下回らないこと(対価性を含む充足性)が必要であるとされてきた傾向にあると整理される。近年の判例では、雇用契約書等において固定残業代に相当する時間外労働の時間数や金額が具体的に明記されているかどうかが重視される傾向が指摘されており、単に「固定残業代を含む」とのみ記載する運用では要件を満たさないと評価されるリスクが高いと考えられる。固定残業代を超過する時間外労働について差額を清算する実務運用がなされているかどうかも、対価性の判断において重視される要素の一つとされる。
第11条(1か月平均所定労働時間数) 年間の所定休日日数の変動(うるう年、祝日の巡り等)により、1時間当たりの賃金額が年度によって変動し得る点に留意が必要である。毎年度の平均所定労働時間数の周知を怠ると、割増賃金の計算根拠が不明確になり、未払い賃金の争いに発展しやすいと考えられる。
第12条(欠勤等の賃金控除) ノーワーク・ノーペイの原則に基づく規定であるが、遅刻・早退の控除時間数の端数処理(15分単位、30分単位等)について就業規則との整合性を確認する必要がある。過度に不利な端数処理(切り上げの多用等)は、賃金全額払いの原則との関係で問題視される可能性がある。
第13条・第14条(昇給・賞与) 賞与を「支給することがある」との裁量的な文言にとどめるか、支給基準を具体的に定めるかによって、賞与請求権の発生要件に関する解釈が異なり得る。支給日在籍要件(第14条第3項)については、支給日前に自己都合退職した従業員との関係で有効性が認められる傾向にあるとされるが、会社都合退職や解雇が絡む事案では別途慎重な検討を要すると考えられる。
第15条〜第17条(賃金控除・休職者等の賃金・非常時払い) 賃金控除は労使協定に基づくものに限られ、根拲のない控除は賃金全額払いの原則(労働基準法第24条)に抵触するおそれがある。非常時払い(第17条)は労働基準法上の権利であり、就業規則・賃金規程に明記していない場合でも従業員から請求され得る点に留意する必要がある。
第18条〜第20条(賃金改定・改廃・施行期日) 賃金体系の不利益変更は、労働契約法第9条・第10条の趣旨に照らし、従業員の個別同意又は変更の合理性(変更の必要性、内容の相当性、代償措置の有無等)が求められるものと解される。固定残業代を新たに導入する場合や、既存の手当を固定残業代に組み替える場合は、実質的な不利益変更に該当し得るため、慎重な移行手続の検討が必要と考えられる。
固定残業代導入時の移行実務に関する補足 既存の月給制(標準型)から固定残業代導入版へ移行する場合、実務上は次のような段階を踏むことが望ましいと考えられる。第一に、現状の平均的な時間外労働時間数を集計し、固定残業代の対象時間数が実態とかけ離れたものにならないよう設計する。第二に、基本給の一部を固定残業代へ振り替える設計とする場合、当該振替により従業員の総支給額が従前を下回らないようにする代償措置を検討する。第三に、対象従業員に対し、変更の趣旨、対象時間数、超過分の精算方法について書面で説明し、個別の同意書を取得することが、後日の紛争予防の観点から望ましいと考えられる。これらの移行手続を欠いたまま固定残業代を導入した場合、仮に第10条の2の要件(明確区分性・対価性)を満たしていたとしても、労働条件の不利益変更として別途争われるリスクが残る点に留意すべきである。
退職金への影響に関する留意事項 本規程は退職金を対象としていないが、退職金規程を別途設ける場合、退職金の算定基礎に固定残業代を含めるかどうかについても、本規程の第2部A-3(昇給・賞与の算定基礎からの除外)と平仄を合わせて整理することが望ましいと考えられる。退職金の算定基礎に割増賃金の性質を持つ手当を含めることは、退職金制度の趣旨(功労報償・賃金後払い等)との整合性の観点からも再検討を要する場合があると考えられる。
端数処理に関する実務上の補足 1か月の賃金計算において生じる時間外労働時間数や賃金額の端数について、労働基準法上、事務簡便化のための一定の端数処理(1か月における時間外労働等の合計時間数に1時間未満の端数がある場合に30分未満を切り捨て30分以上を切り上げる取扱い等)は、労働者の不利益にならない範囲で認められる方法として行政解釈上示されてきた例がある。もっとも、日々の労働時間の端数を切り捨てる処理(日次の端数を毎回切り捨てる等)は、賃金全額払いの原則に反すると評価されるリスクがあるため、端数処理の単位と対象(日次か月次か)を区別して規程上明記することが望ましいと考えられる。
第4部: 監修者への確認依頼事項
- 第10条の割増賃金計算式について、2023年4月施行の月60時間超割増率引上げ(中小企業への適用)の反映内容が現時点の法令に照らして正確か確認いただきたい。
- 第10条の2(固定残業代条項、第2部A-2)の明確区分性・対価性の要件に関する記載が、近年の最高裁判例の傾向に照らして正確かつ最新の実務水準に適合しているか確認いただきたい。
- 固定残業代の対象時間数の設定水準(第2部A-5)について、時間外労働の上限規制(月45時間等)との関係で、購入者向け解説にどの程度具体的な数値目安を示すべきか確認いただきたい。
- 第5条第3項の管理監督者性の判断要素の記載について、いわゆる「名ばかり管理職」に関する裁判例の傾向を踏まえ、追加すべき考慮要素があるか確認いただきたい。
- 第14条第3項の賞与支給日在籍要件について、有効性が認められる場合と認められない場合の判断基準に関する解説の粒度が適切か確認いただきたい。
- 雇用契約書(
koyou-keiyakusho-kihon)及び労働条件通知書との整合性について、本規程の第2条・第7条・固定残業代条項に関し、他商品との文言・定義の齟齬がないか確認いただきたい。 - 同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)との関係について、正社員以外の賃金を「個別の労働契約による」とする整理(第2条第2項)だけで足りるか、追加の留意事項を購入者向けに示すべきか確認いただきたい。
- 固定残業代から標準型(又はその逆)へ制度変更する場合の不利益変更該当性及び必要な手続(労働契約法第9条・第10条との関係)について、第3部の解説内容で実務上十分な注意喚起になっているか確認いただきたい。