自社著作物の利用を他社に認める場面の基本書式。著作権法第63条の利用許諾に基づき、利用範囲・期間・媒体・対価を明確に定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
著作物利用許諾契約書
第1部: 書式本文
【甲:許諾者(著作権者)の氏名又は名称】(以下「甲」という。)と【乙:利用者(被許諾者)の氏名又は名称】(以下「乙」という。)は、甲が著作権を有する著作物の利用許諾に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 本契約は、著作権法第63条第1項の規定に基づき、甲が乙に対し下記著作物(以下「本著作物」という。)の利用を許諾するにあたり、利用の範囲、対価その他必要な事項を定めることを目的とする。 記 名称:【著作物の名称】/種別:【著作物の種類】/内容の特定:【原稿・データファイル名等】
第2条(利用許諾) 1. 甲は乙に対し、本著作物について、次条に定める範囲内で利用することを許諾する。 2. 本契約に基づく許諾は、著作権法第61条にいう著作権の譲渡を意味するものではなく、甲は本著作物に係る著作権を引き続き保有する。 3. 本許諾は【独占的・非独占的】許諾とする。
第3条(利用許諾の範囲) 乙は、次に定める範囲内においてのみ本著作物を利用することができる(著作権法第63条第2項)。 利用方法:【複製・上演・上映・公衆送信・翻訳・翻案等の別】 媒体:【書籍・ウェブサイト・アプリケーション・映像・放送等】 地域:【日本国内・全世界等】 期間:【契約期間中・別途定める期間】
第4条(独占的利用の特約) 本許諾が独占的利用許諾である場合、甲は許諾期間中、本著作物につき第3条に定める範囲と重複する利用について、乙以外の第三者に利用許諾を行わず、また甲自らも同範囲での利用を行わない。ただし、本条の定めは甲乙間の債務にとどまり、甲がこれに違反して第三者に許諾した場合の当該第三者との契約の効力自体を否定するものではない。
第5条(対価) 1. 乙は甲に対し、本許諾の対価として、【定額/利用実績に応じた従量制/売上に対する料率】により算定される利用許諾料を、【支払時期・方法】により支払う。 2. 従量制又は料率による場合、乙は【四半期に1回・年に1回】、利用実績を甲に報告するものとする。
第6条(再許諾の制限) 乙は、甲の事前の書面による承諾を得ない限り、本著作物の利用に係る権利を第三者に再許諾し、又は本契約上の地位を第三者に譲渡してはならない。
第7条(利用権の対抗力) 甲が本著作物に係る著作権を第三者に譲渡した場合であっても、乙は著作権法第63条の2の規定により、本契約に基づく利用権をもって当該著作権の譲受人その他の第三者に対抗することができる。
第8条(著作者人格権の尊重) 乙は、本著作物の利用にあたり、甲又は本著作物の著作者の氏名表示権及び同一性保持権(著作権法第19条、第20条)に配慮し、本著作物の内容に改変を加える場合は、事前に甲の承諾を得るものとする。
第9条(契約期間) 本契約の有効期間は、本契約締結日から【 】年間とする。ただし、期間満了の【 】か月前までにいずれの当事者からも書面による終了の申出がないときは、同一条件でさらに【 】年間更新されるものとし、以後も同様とする。
第10条(契約終了後の措置) 本契約が期間満了又は解除により終了した場合、乙は速やかに本著作物の利用を停止する。ただし、契約終了時点で現に製造又は制作済みの在庫については、終了後【 】か月間に限り、頒布を継続することができる。
第11条(表明保証) 甲は乙に対し、本著作物について乙に許諾する権利を適法に有していること、及び本許諾が第三者との既存の契約に抵触しないことを表明し、保証する。
第12条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の締結及び履行を通じて知り得た相手方の営業上又は技術上の秘密を、相手方の事前の書面による承諾なく第三者に開示又は漏えいしてはならない。
第13条(解除) 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、相当の期間を定めた催告後も是正されないときは、本契約を解除することができる。
第14条(準拠法及び管轄) 1. 本契約は日本法に準拠し、これに従って解釈される。 2. 本契約に関する紛争については、【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。
【契約締結日】 甲:【住所・氏名又は名称】㊞ 乙:【住所・氏名又は名称】㊞
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 許諾者(ライセンサー)向け
A-1 第4条の修正例(独占許諾の実効性を高める違約金条項)
「甲が本条の禁止事項に違反して重複利用又は重複許諾を行った場合、甲は乙に対し、違約金として金【 】円を支払う。本違約金の支払いは、乙が別途被った損害の賠償請求を妨げない。」 一言解説:独占的利用許諾はあくまで甲乙間の債務であり第三者への許諾自体を無効にする効力はないため、甲側の違反を実効的に抑止するには違約金や損害賠償の予定を明記しておくことが有効である。
A-2 第9条の修正例(不使用時の解除権)
「乙が本契約締結後【 】か月以内に本著作物の利用を開始しない場合、甲は乙に対する催告を要せず本契約を解除することができる。」 一言解説:許諾者にとっては、対価が売上連動である場合に乙が利用を開始しないまま権利だけを押さえられる「塩漬け」リスクがあるため、不使用解除権を設けておくことが望ましい。
B節: 利用者(ライセンシー)向け
B-1 第7条の修正例(対抗要件を前提とした継続利用の確認)
「甲が本著作物に係る著作権を第三者に譲渡した場合、甲は当該第三者に対し、本契約の内容及び乙が著作権法第63条の2に基づく利用権を有する旨を書面により通知する。」 一言解説:令和2年改正で導入された当然対抗制度により乙の利用権は譲受人にも対抗できるが、実務上のトラブルを避けるため、甲から譲受人への通知義務を明記しておくと安全である。
B-2 第6条の修正例(グループ会社への再許諾を認める例外)
「前条の定めにかかわらず、乙は、乙の親会社又は子会社(会社法第2条第3号及び第4号に定める会社をいう。)に対しては、甲への事前通知のみをもって本著作物を利用させることができる。」 一言解説:利用者側では、グループ内での円滑な利用のため再許諾禁止の原則に例外を設け、承諾取得の手間を軽減しておく必要がある。
C節: 独占/非独占切替
C-1 独占的許諾とする場合の第2条・第3条の修正例
「本許諾は独占的許諾とし、甲は許諾期間中、乙以外の第三者に対し第3条に定める範囲と同一又は類似の範囲での利用許諾を行わない。」 一言解説:独占の対象範囲(媒体・地域・期間)を狭く区切ることで、他の媒体や地域については甲が別途第三者に許諾できる余地を残すことができる。
C-2 非独占的許諾とする場合の第4条の修正例
「本許諾は非独占的許諾とする。甲は、乙への許諾と並行して、第三者に対しても本著作物の利用を許諾することができる。」 一言解説:非独占の場合は第4条(独占的利用の特約)自体を削除し、対価も一般に独占許諾より低額に設定されることが多い点を当事者間で認識合わせしておく。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、自社が著作権を保有する著作物について、他社にその利用を認めるものの、著作権そのものは自社に留保したい場面で用いる基本書式である。著作権自体を相手方に移転させたい場合には、本書式ではなく著作権譲渡契約書を用いるべきであり、両者は法的性質が異なる。利用許諾は甲乙間の債権的合意にとどまり、乙が取得するのは「許諾の範囲内で利用できる」という契約上の地位であって、著作権そのものではない。
根拠法令は、著作権法第63条第1項(利用の許諾)及び第2項(許諾を受けた者は許諾に係る利用方法及び条件の範囲内で利用できる旨)、第63条の2(利用権の対抗力、令和2年10月1日施行)である。利用許諾が債権的な合意であることは、独占的許諾の実効性にも影響する。
実務でよくある失敗として、第一に、「独占的利用許諾」という表現を用いれば当然に第三者への重複許諾を差し止められると誤解し、実際に甲が別の第三者に許諾してしまった場合に、乙が当該第三者の利用行為自体を止められないという事態が生じる。独占許諾はあくまで甲乙間の債務にすぎない点を認識し、違約金条項等で実効性を補う必要がある。第二に、再許諾(サブライセンス)の可否を定めないまま契約を締結した結果、乙が甲に無断で第三者に本著作物を利用させ、甲の意図しない範囲まで利用が拡散するケースがある。第6条のような再許諾制限条項を置くことが対策となる。第三に、契約期間満了後の在庫処分や利用停止の猶予期間を定めなかったために、期間満了直後から乙の既存在庫が違法な利用状態になってしまうという紛争が生じやすい。
なお、対価を売上や利用実績に連動させる場合は、算定の基礎となる報告義務や監査権を条項に盛り込むことが望ましい。独占許諾とする範囲・対価水準・再許諾の可否といった条件設定は個別事案ごとに大きく異なるため、専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本許諾が独占的許諾か非独占的許諾かを明確にしたか
- [ ] 利用方法・媒体・地域・期間を具体的に特定したか
- [ ] 独占的許諾の場合、重複利用・重複許諾に対する違約金等の実効性担保を検討したか
- [ ] 利用許諾料の算定方法(定額・従量・料率)及び支払時期を定めたか
- [ ] 従量制・料率の場合、利用実績の報告義務を定めたか
- [ ] 再許諾(サブライセンス)及び契約上の地位の移転の可否を定めたか
- [ ] 著作権法第63条の2に基づく利用権の対抗力について、譲渡時の通知義務等を検討したか
- [ ] 著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権)への配慮及び改変時の承諾手続を定めたか
- [ ] 契約期間及び更新条件(自動更新の有無)を定めたか
- [ ] 契約終了後の利用停止時期及び在庫処分の猶予期間を定めたか
- [ ] 甲の権利保有及び第三者権利非抵触に関する表明保証を置いたか
- [ ] 準拠法及び管轄裁判所を定めたか