個別の発注と受注を書面化する注文書・注文請書のひな形。民法第522条の申込みと承諾、商法第509条の諾否通知義務を踏まえ、数量・納期・代金を明示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
注文書・注文請書
第1部: 書式本文
本書式は、基本契約の枠内又は単発の取引において、個別の発注(申込み)とその承諾を書面化するための2点セットである。注文書は発注者が交付し、注文請書は受注者がこれに応じて発行する。両者が揃うことで個別契約の成立時期・内容が明確になる。
様式1: 注文書
注 文 書
【受注者商号・住所】 御中
発注者:【発注者商号・住所・担当者名・連絡先】 発注日:【20●●年●●月●●日】 注文番号:【●●●●】
下記のとおり注文いたします。本注文書記載の条件により、貴社が【7】営業日以内に承諾の回答(注文請書の返送を含む)をされない場合、本注文は撤回されたものとして取り扱います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 品名・仕様 | 【品名、型番、仕様詳細】 |
| 数量 | 【数量・単位】 |
| 単価 | 【単価(税別/税込の別を明記)】 |
| 代金合計 | 【合計金額】 |
| 納期 | 【20●●年●●月●●日】 |
| 納入場所 | 【納入場所住所】 |
| 検収条件 | 【検査基準・検査期間】 |
| 支払条件 | 【締日・支払日・支払方法】 |
| その他特記事項 | 【個別に付す条件、基本契約書の適用有無等】 |
本注文は、甲乙間で別途締結する取引基本契約書(締結日:【20●●年●●月●●日】)が適用される場合、同契約書の規定に従うものとし、本注文書に別段の定めがある場合はこれを優先します。
発注者印:【印】
様式2: 注文請書
注 文 請 書
【発注者商号・住所】 御中
受注者:【受注者商号・住所・担当者名・連絡先】 回答日:【20●●年●●月●●日】 注文番号:【●●●●】(注文書記載の番号を引用)
貴社より【20●●年●●月●●日】付でいただきました注文書記載の内容につき、下記のとおり確認のうえ、これを承諾いたします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 品名・仕様 | 【注文書の記載を転記】 |
| 数量 | 【注文書の記載を転記】 |
| 単価・代金合計 | 【注文書の記載を転記】 |
| 納期 | 【注文書の記載どおり、又は変更後の納期】 |
| 一部変更の有無 | 【変更がある場合はその内容と理由を明記。なければ「変更なし」】 |
なお、上記のうち一部変更がある場合、当該変更事項について貴社の再確認をもって注文内容とすることに同意いただくものとし、貴社より【3】営業日以内に異議の申出がないときは、本注文請書記載の内容にて契約が成立するものとします。
受注者印:【印】
運用上の留意点 1. 注文書のみで注文請書の返送がない場合でも、商法第509条の規定により、商人が平常取引をする者からその営業の部門に属する契約の申込みを受けた場合には、遅滞なく諾否の通知を発する義務があり、これを怠ったときは当該申込みを承諾したものとみなされる場合がある。取引基本契約でみなし承諾規定を別途置いている場合はそちらが優先する。 2. 注文請書の内容が注文書の内容と一部でも異なる場合、民法上は新たな申込み(変更を加えた承諾、民法第528条)とみなされ得るため、発注者側の再承諾手続を明確にしておく必要がある。 3. 電子発注システムやEDIを利用する場合は、書面の「交付」を電磁的方法による提供に置き換える旨の合意を別途行う。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 発注者向け 注文書の効力発生時期を発注者に有利にするため、「本注文書記載の条件により、貴社が7営業日以内に承諾の回答をされない場合、本注文は撤回されたものとして取り扱う」との規定(不作為による自動不成立)を維持し、無断でのみなし承諾(不作為による契約成立)を避ける。また、注文請書に条件変更が記載されていた場合に備え、「注文請書の内容が注文書の内容と異なるときは、発注者が別途書面で承諾しない限り効力を生じない」旨を明記し、受注者による一方的な条件変更を封じる修正が典型的である。
B. 受注者向け 発注のみなし失効規定(未回答=撤回)を修正し、「発注者が納期を指定した場合であっても、受注者が生産能力等の事情により対応できないときは、注文請書において代替納期を提示できるものとし、発注者が3営業日以内に異議を述べないときは代替納期にて契約が成立する」との規定を追加する。また、単価や納期について自社の標準条件からの逸脱がある場合に備え、注文請書中に「特記事項」欄を設け、追加費用や納期延長の条件を明記できるようにする。さらに、商法第509条のみなし承諾リスクを踏まえ、受注不可の場合は必ず期限内に諾否の通知(拒絶の通知)を行う社内ルールを併記することが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、基本契約に基づく個別発注、又は基本契約を締結しない単発・少額の取引において、発注内容と承諾の事実を書面で確認する場面で使用する。継続的取引において共通条件(検査基準、支払条件、契約不適合責任等)を包括的に定める必要がある場合は、本書式単独ではなく取引基本契約書と併用すべきであり、本書式のみで長期にわたる取引条件を規律することは適さない。
根拠法令としては、民法第522条(契約の成立と方式、申込みと承諾による契約成立)が基本となる。注文書は「申込み」、注文請書は「承諾」の意思表示に該当し、承諾の通知が発注者に到達した時点(到達主義、民法第97条)で個別契約が成立する。加えて、当事者双方が商人である取引では商法第509条の諾否通知義務が適用され、平常取引をする相手方からの契約の申込みについて遅滞なく諾否を通知しないときは、その申込みを承諾したものとみなされる点が本書式固有の重要論点である。また、注文請書が注文書と異なる条件を提示した場合の取扱いについては、民法第528条(申込みに変更を加えた承諾は、申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす)の考え方が参考になる。
実務でよくある失敗として、第一に、注文請書を発行せず口頭やメールの簡単な返信のみで済ませてしまい、成立した契約内容(特に数量・納期)について後日認識の齟齬が生じる例が多い。様式2のように書面(電子データを含む)で正式に確認する運用を徹底することが対策となる。第二に、商法第509条のみなし承諾のリスクを認識せず、受注できない注文に対して回答を放置し、意図せず契約が成立したものとして扱われる例がある。受注者側では期限内の諾否回答を業務フローに組み込む必要がある。第三に、注文請書で条件を一部変更したにもかかわらず、発注者がそれに気づかず異議を述べる機会を逃し、変更後の条件で契約が成立してしまう例がある。様式2のように「一部変更の有無」欄を明示し、発注者の再確認プロセスを組み込むことが有効である。個別の取引慣行や業界の商慣習によって成立時期の解釈は変わり得るため、重要な取引については専門家への確認を行うことが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト(確認事項)
- [ ] 対象取引に取引基本契約書が存在するか、存在する場合その適用関係を注文書に明記したか
- [ ] 品名・仕様・数量・単価・納期・納入場所・支払条件が漏れなく記載されているか
- [ ] 注文書における諾否回答期限(みなし撤回等)を明記したか
- [ ] 商法第509条の諾否通知義務のリスクを踏まえた社内回答フローがあるか
- [ ] 注文請書で条件を変更する場合の記載欄・再確認手続を設けたか
- [ ] 消費税の税込・税別表示を明確にしたか
- [ ] 電子発注・EDI利用時の書面交付の代替方法について合意があるか
- [ ] 注文番号など、注文書と注文請書を紐づける管理番号を付しているか
- [ ] 検収条件(検査基準・検査期間)が注文書に明記されているか
- [ ] 発注・受注の押印又は電子署名の方式が社内規程と整合しているか