譲渡実行日に必要な書類と手続を漏れなく管理するチェックリストです。承認決議、株主名簿書換、代金支払、鍵・印章引渡しを網羅します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
クロージングチェックリスト(株式譲渡)
第1部: 書式本文
本チェックリストは、株式譲渡取引におけるクロージング(譲渡実行)当日及びその前後に必要となる書類・手続を、買主側担当者及び売主側担当者が共同で管理するための様式である。各項目の担当当事者、期限及び完了確認欄を設け、漏れのない実行を確保することを目的とする。
1. クロージング前提条件の最終確認 - 株式譲渡契約に定めるクロージングの前提条件がすべて充足されていることの確認(担当:買主・売主双方) - 表明保証の内容が最終確認時点においても真実かつ正確であることの再確認書の取得(担当:買主) - 必要な許認可(業法上の届出・認可等)の取得完了の確認(担当:売主) - 独占禁止法上の企業結合届出に係る待機期間の経過又は排除措置命令を行わない旨の通知の受領確認(担当:買主)
2. 対象会社側の承認決議関係書類 - 対象会社が株券発行会社かつ譲渡制限株式を発行している場合、会社法第136条又は第137条に基づく株式譲渡承認請求書及び対象会社の承認機関(取締役会又は株主総会)による承認決議書の原本確認 - 対象会社の取締役会議事録(本件譲渡に関連する重要財産の処分等がある場合)の確認 - 売主側の会社が法人である場合、当該法人の内部承認手続(取締役会決議書等)の確認
3. 譲渡当事者側の書類 - 株式譲渡契約書の原本(記名押印済み)の確認 - 印鑑登録証明書及び印鑑証明書(発行後3か月以内)の確認 - 委任状(代理人が手続を行う場合)の確認
4. 株主名簿の名義書換関係 - 会社法第132条に基づく株主名簿の名義書換請求書の準備 - 対象会社(名義書換の実施主体)による名義書換の完了確認 - 名義書換後の株主名簿の写しの受領
5. 株券発行会社の場合の株券関係 - 株券が現に発行されているかの確認(会社法上、株券発行会社であっても不発行の場合がある点に留意) - 株券が発行されている場合、当該株券原本の売主から買主への交付及び受領書の取得 - 株券を発行していない会社の場合、株主名簿の記載をもって権利移転の対抗要件とする旨の確認
6. 譲渡代金の支払関係 - 譲渡代金の振込先口座及び金額の最終確認 - 振込実行の指示及び着金確認(買主側での送金手続の実施と売主側での着金確認の相互報告) - 源泉徴収その他の税務上の控除が必要な場合の控除額の確認
7. 印章・重要書類等の引渡し関係 - 対象会社の実印、銀行印及びその他社印の引渡し - 対象会社の登記関係書類(登記簿謄本、定款、株主名簿、取締役会議事録つづり等)の引渡し - 対象会社の事務所又は倉庫の鍵の引渡し
8. クロージング後の対応事項 - 役員変更登記(退任・就任)の申請準備 - 対象会社名義の銀行口座の届出印及び管理権限の変更手続 - 取引先・従業員への通知(必要な範囲で)の実施時期の確認
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 買主側担当者向けの追加確認事項
A-1. 表明保証再確認書の取得を必須項目とする追加
追加項目例:「クロージング当日、売主から『クロージング日現在においても株式譲渡契約に定める表明保証がすべて真実かつ正確である』旨を記載した確認書(ブリングダウン・サーティフィケート)の原本を取得したことを確認する。」 一言解説: 契約締結時点とクロージング時点の間に生じた事情変更を把握するため、買主側は再確認書の取得を独立したチェック項目として管理する。
A-2. 送金実行前の最終着金先の二重確認
追加項目例:「譲渡代金の振込実行に先立ち、売主から書面で通知された口座情報について、電話等の別経路で真正性を再確認したことをチェックする。」 一言解説: 振込先を偽装したなりすまし詐欺のリスクに備え、多額の代金決済を伴うクロージングでは口座情報の二重確認を買主側の必須手続とする。
B. 売主側担当者向けの追加確認事項
B-1. 引渡し物件の明細化と受領書との突合せ
追加項目例:「印章・鍵・重要書類の引渡しにあたり、別途作成するクロージング書類受領書の明細と、実際に引き渡した物件を一つずつ突合せたことを確認する。」 一言解説: 引渡し漏れや後日の紛争を避けるため、売主側は引渡し物件の明細と受領書の記載内容を照合する手続をチェックリストに組み込む。
B-2. 個人保証・担保の解除確認の追加
追加項目例:「対象会社の借入債務について売主又は売主の関係者が個人保証又は担保提供をしている場合、クロージングと同時又はその後速やかに当該保証・担保が解除されることを金融機関から確認したことをチェックする。」 一言解説: 株式譲渡後も売主の個人保証が残存すると譲渡後のリスクを負い続けることになるため、売主側は保証解除の確認を独立項目として管理する。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本チェックリストは、非上場会社の株式譲渡取引においてクロージング当日に必要な書類授受及び手続を、買主側・売主側双方の担当者が共同で管理する場面で用いる。事業譲渡や合併等、株式譲渡以外のスキームによるM&A取引では、必要書類や手続の内容が大きく異なるため、そのまま流用することは適切ではない。
根拠法令 株式の譲渡に関しては、対象会社が譲渡制限株式を発行している場合、会社法第136条(株主からの承認請求)及び第137条(株式取得者からの承認請求)に基づき、対象会社の承認機関による承認決議を経る必要がある。株主名簿の名義書換については会社法第130条及び第132条が規律しており、名義書換を行わなければ、株式の譲渡を対象会社その他の第三者に対抗できない。また、株券発行会社においては会社法第128条により株券の交付が株式譲渡の効力発生要件とされており、株券不発行会社との取扱いの相違に留意する必要がある。
実務でよくある失敗と対策 第一に、対象会社が譲渡制限株式を発行しているにもかかわらず、株式譲渡承認決議の取得を失念し、後日、譲渡の効力そのものが争われる失敗がある。第2部A-1及び本文2のように、承認決議書の原本確認を独立したチェック項目とすることが対策となる。第二に、株主名簿の名義書換手続が遅延し、対象会社に対する対抗要件を欠いたまま取引を進めてしまう失敗がある。本文4のように名義書換の完了確認を明確な項目として設けることが対策となる。第三に、印章や重要書類の引渡しが口頭確認にとどまり、後日「受け取っていない」という水掛け論になる失敗がある。B-1のように受領書との突合せを手続化することが対策となる。
対象会社の機関設計や定款の内容によって必要な承認手続は異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] クロージング前提条件の充足状況を最終確認したか
- [ ] 株式譲渡承認決議書(会社法第136条・第137条関係)の原本を確認したか
- [ ] 表明保証再確認書(ブリングダウン・サーティフィケート)を取得したか
- [ ] 株主名簿の名義書換手続(会社法第132条関係)が完了しているか
- [ ] 株券発行会社の場合、株券原本の交付及び受領書を確認したか
- [ ] 譲渡代金の振込先口座を別経路で二重確認したか
- [ ] 譲渡代金の着金確認及び税務上の控除処理を確認したか
- [ ] 実印・銀行印・鍵・重要書類の引渡し明細を作成したか
- [ ] 個人保証・担保の解除見込みを金融機関に確認したか
- [ ] クロージング後の役員変更登記等の準備状況を確認したか