譲渡実行時に授受した株券、印鑑、通帳、契約書原本等の受領を確認する書面です。受領物件を明細化し後日の紛争を防ぎます。提出先や保存期間の目安もあわせて整理しています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
クロージング書類受領書
第1部: 書式本文
受領者〇〇〇〇(以下「買主」という。)は、交付者〇〇〇〇(以下「売主」という。)から、〇年〇月〇日、下記の株式譲渡取引のクロージングに際し、下記各物件を受領したことを確認する。
1. 受領日時及び場所 受領日時:〇年〇月〇日 〇時〇分 受領場所:〇〇〇〇(住所又は施設名)
2. 受領物件の明細(記載項目一覧) 本受領書における受領物件の明細は、次の各区分に従って個別に記載する。 - 株券(株券発行会社の場合):銘柄(対象会社名)、株式数、株券番号、券面の有無を記載する。 - 実印及び銀行印:印章の種類(代表者印・銀行印・角印等)ごとに個数を記載する。 - 通帳及びキャッシュカード:金融機関名、支店名、口座種別、口座番号を記載する(口座番号は下四桁を記載する等、取扱いに配慮することができる)。 - 契約書原本:契約書名、締結日、当事者名、頁数を記載する。 - 許認可証・登録証:許認可等の名称、発行行政庁、許可番号、有効期限を記載する。 - 登記関係書類:登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、定款、株主名簿、取締役会議事録つづり等を記載する。 - その他の重要物件:鍵(事務所・倉庫・金庫等)、社章、その他売主が保有していた対象会社関連の物件を記載する。
3. 原本性の確認方法 買主は、受領した書類が原本であるか写しであるかを本受領書上で区別して記載する。写しを受領した場合は、原本の保管場所及び原本を追って交付する予定日を付記する。
4. 受領物件の確認手続 買主は、受領時に売主立会いのもとで各物件の員数及び内容を確認し、相違がある場合はその場で本受領書の備考欄に記載する。
5. 不足があった場合の追完義務 受領時点で明細記載の物件の一部が交付されなかった場合、売主は、追完すべき物件を特定した上で、本受領書に定める期限(定めがない場合は〇日以内)までに追加で交付する。買主は、当該追完がなされるまで、当該物件に関する部分について受領を留保する旨を本受領書に付記することができる。
6. 提出先及び保存期間の目安 本受領書は、買主及び売主がそれぞれ原本を1通ずつ保管する。買主は、対象会社の登記手続や税務申告等に必要な範囲で本受領書の写しを行政庁又は専門家に提出することがある。保存期間の目安は、対象会社の会社法上の帳簿保存義務(会社法第432条第2項、10年間)に準じ、少なくとも10年間とすることが望ましい。
7. 紛失・毀損時の取扱い 買主が受領物件を紛失又は毀損した場合、その事実及び経緯を売主に通知する。当該物件が株券その他の有価証券である場合、除権決定その他の法定手続の要否を検討する。
8. 署名欄 受領者(買主)〇〇〇〇 印 / 交付者(売主)〇〇〇〇 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 受領者(買主)向けの修正
A-1. 未交付物件のクロージング後の管理責任の明確化
追加条文例:「第5条に基づき追完される物件について、追完期限までの間、当該物件の紛失又は毀損のリスクは売主が負担するものとする。」 一言解説: 交付が完了していない物件については引渡しが未了である以上、リスク負担が売主側に残ることを買主が明記しておく修正である。
A-2. 通帳の残高確認との連動
追加条文例:「通帳の受領にあたり、買主は受領時点の通帳記載残高を確認し、当該残高が別途合意した基準日残高と一致することを本受領書の備考欄に記録する。」 一言解説: 通帳の物理的な受領だけでなく、クロージング時点の資金残高の確認まで一体で行うことで、事後の資金流出等のトラブルを防ぐ買主側の実務対応である。
B. 交付者(売主)向けの修正
B-1. 受領確認による表明保証違反主張の制限
修正後:「買主が本受領書に異議なく署名した書類については、その原本性及び内容の真正性につき、後日、当該書類の記載内容の不備を理由として株式譲渡契約上の表明保証違反を主張することはできないものとする。ただし、書類に記載された内容自体の正確性に関する表明保証違反の主張を妨げるものではない。」 一言解説: 書類の受領確認と表明保証違反の主張とを混同されないよう、売主側が受領確認の効果の範囲を限定する修正である。
B-2. 個人情報を含む書類の取扱いに関する確認
追加条文例:「通帳その他の個人情報又は口座情報を含む物件について、買主は対象会社の運営上必要な範囲でのみ利用し、目的外利用及び第三者への提供を行わない。」 一言解説: 通帳や印鑑証明書等、個人情報を含む書類が授受される場面において、売主側がその後の利用範囲を制限する修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、株式譲渡取引のクロージング(譲渡実行)当日に、株券、印章、通帳、契約書原本、許認可証その他の重要物件を売主から買主に引き渡す場面で用いる。単なる社内資料の受け渡しや、クロージング前の任意の資料提供の場面では通常必要とされず、あくまでクロージングという法的に重要な時点における物件授受を証拠化するための書面である。
根拠法令 株券発行会社の株式譲渡については、会社法第128条により株券の交付が株式譲渡の効力発生要件とされているため、株券の授受を証する本受領書は譲渡の効力発生を裏付ける証拠として重要な意味を持つ。物件の引渡し及び保管に関する一般的な法律関係については、民法上の寄託(民法第657条以下)及び引渡し(民法第182条以下の占有移転に関する規定)の考え方が参考になる。また、対象会社の帳簿及び関係書類の保存については、会社法第432条第2項が会計帳簿及びその事業に関する重要な資料の10年間の保存義務を定めており、受領書及び受領物件の保存期間を検討する際の目安となる。
実務でよくある失敗と対策 第一に、受領物件の明細を作成せず、口頭又は簡易な引継書のみで済ませてしまい、後日「株券を受け取っていない」等の紛争に発展する失敗がある。第2条のように区分ごとに明細を記載することが対策となる。第二に、原本と写しの区別を明確にしないまま受領書に署名し、後日、原本が交付されていなかったことが判明する失敗がある。第3条のように原本性を明示的に区別して記載することが対策となる。第三に、受領時に一部物件が未交付であったにもかかわらずその場で記録せず、追完の履行状況が曖昧になる失敗がある。第5条及びA-1のように追完義務と期限、リスク負担を明確にすることが対策となる。
受領物件の範囲や保存期間の適切な目安は対象会社の業種や許認可の内容によって異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 受領日時及び場所を正確に記載したか
- [ ] 株券発行会社の場合、株券の株式数・株券番号を明細に記載したか
- [ ] 実印・銀行印等の印章の種類及び個数を記載したか
- [ ] 通帳・キャッシュカードの金融機関名及び口座情報を記載したか
- [ ] 契約書原本の名称・締結日・当事者を記載したか
- [ ] 許認可証・登録証の名称・有効期限を記載したか
- [ ] 登記関係書類(定款・株主名簿等)の交付状況を確認したか
- [ ] 各物件について原本か写しかを区別して記載したか
- [ ] 未交付物件がある場合の追完期限とリスク負担を定めたか
- [ ] 受領書の保存期間(会社法上の帳簿保存義務との整合)を確認したか
- [ ] 受領者・交付者双方の署名及び原本の保管方法を確認したか