代表取締役が辞任する際に会社へ提出する辞任届。商業登記規則第61条第8項により登記所届出印または個人実印と印鑑証明書の添付が求められる点に対応した書式です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
代表取締役の辞任届(印鑑証明書添付用)
第1部: 書式本文
本書式は、代表取締役が自らの意思により職を辞する場面において、会社に対する辞任の意思表示を書面化し、かつ、その後の代表取締役変更登記の添付書面として利用できる体裁に整えたものである。辞任は相手方への意思表示到達により効力を生じる単独行為であるため、口頭のみで済ませることも理論上は可能であるが、登記実務上は書面と印鑑証明書の提出が求められるため、以下のひな形を用いる。
辞任届本体
辞任届
【会社名】 御中
私は、【就任年月日】に貴社の代表取締役に就任し、これまで職務を遂行してまいりましたが、この度、一身上の都合により、【辞任年月日】をもって貴社代表取締役の職を辞任いたします。あわせて、取締役としての地位についても【継続する・同日付で辞任する】ことを申し添えます。
【辞任年月日】
【提出者住所(印鑑証明書に記載された住所と一致させること)】 提出者(前代表取締役) 【氏名】 ㊞
添付書類: 印鑑証明書 1通
記載必須項目一覧
商業登記規則第61条第8項の定めに対応させるため、本書には次の10項目を過不足なく記載する。
- 宛先(辞任届の提出先である会社名)。単に「御中」とせず正式な商号を用いる。
- 辞任の意思表示を明確な文言で記載する箇所。「辞任いたします」等、撤回の余地のない断定表現を用いる。
- 辞任の効力発生日。会社への到達日ではなく、届出文中に明示した年月日をもって効力発生日とする実務が一般的である。
- 提出者の住所。印鑑証明書に記載された住所と一字一句一致させる。
- 提出者の氏名。旧姓併記や通称を用いる場合は登記簿上の表記との整合を確認する。
- 押印欄。登記所届出印(会社実印)を保有している者はこれを用い、保有しない者は市区町村発行の印鑑登録に基づく個人実印を用いる。
- 添付書類目録(印鑑証明書の通数・作成後の有効期間の記載)。
- 就任年月日の記載(必須ではないが在任期間を明らかにする趣旨で記載することが望ましい)。
- 辞任理由の記載欄(任意。「一身上の都合」で足りるが、健康上の理由等を明記する場合もある)。
- 会社側の受領印・受領日を記入する社内控え用の欄(登記所提出用の原本には不要)。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 登記申請用(添付書面として提出する場合)
修正条文例:
私は、【辞任年月日】をもって貴社代表取締役を辞任し、本届出書に押印した印鑑に係る印鑑証明書(作成後3か月以内のもの)を添付する。なお、本届出は商業登記規則第61条第8項に定める添付書面としての要件を満たすことを目的として作成するものである。
一言解説: 登記申請の添付書面とする場合は、押印した印鑑の種類(実印か登記所届出印か)と印鑑証明書の発行時期を届出書自体に明記しておくと、司法書士や登記官による形式審査の際に照合作業がしやすくなる。
B節: 実印押印(登記所届出印を保有していない者が個人実印を用いる場合)
修正条文例:
提出者は、貴社に印鑑を届け出た者ではないため、本届出書には提出者個人の実印を押印し、【市区町村名】長発行に係る印鑑登録証明書を添付する。
一言解説: 辞任する代表取締役が会社実印(登記所届出印)の届出人でない場合や、複数代表制で自らは印鑑を届け出ていない場合には、個人の実印と印鑑証明書の組み合わせで足りる。ただし発行日から登記申請日までの期間について会社の運用ルールを確認しておくことが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、代表取締役が任期途中または任期満了前に自らの意思で代表取締役の職を辞する場合に、会社に対する意思表示を書面化し、かつ商業登記の添付書面として利用することを想定している。他方で、株主総会や取締役会の決議によって解任される場合や、任期満了により当然に退任する場合には、辞任届ではなく解任決議の議事録や重任・退任を証する書面を用いるべきであり、本書式を流用してはならない。また、代表取締役の地位のみを辞し取締役の地位は維持する「代表権のみの辞任」なのか、取締役の地位ごと辞める「役員そのものの辞任」なのかによって、後続の登記手続(代表取締役変更登記のみか、役員変更登記も要するか)が異なるため、この点を書面上で明確にしておく必要がある。
根拠法令としては、辞任の意思表示そのものは会社法第330条により準用される民法の委任の規定(委任契約の解除に関する規定)に基づくものと整理される。また、登記実務上の添付書面としての要件は商業登記規則第61条第8項に定められており、辞任した代表取締役が登記所に届け出た印鑑を押印した場合を除き、市区町村に登録した印鑑に係る証明書の添付を求めている。
実務でよくある失敗として、第一に、印鑑証明書の有効期限切れが挙げられる。登記申請時点で発行後3か月を超えている場合は添付書面として認められないため、辞任届作成時と登記申請時の間隔が空きそうな案件では、印鑑証明書を登記申請の直前に取得し直す運用を対策とする。第二に、辞任年月日と登記申請日の前後関係の齟齬である。辞任の効力発生日を将来の日付にしてしまうと、その日までは辞任の効力が生じておらず登記原因日付との整合が取れなくなるため、届出書上の日付表現を作成日と一致させる形にするか、将来日を用いる場合はその趣旨を明確にする対策が必要である。第三に、住所表記の不一致であり、住民票上の表記(丁目・番地の書き方等)と印鑑証明書上の表記が異なると照合に手間を要するため、事前に両書類を突き合わせておくことが望ましい。第四に、辞任により代表取締役が欠けてしまい会社の業務執行に支障が生じる事態であり、後任者の選定手続を辞任届の受理と並行して進めるといった段取りの調整が対策として有効である。加えて、複数の代表取締役を置く会社において一部の代表取締役のみが辞任する場合、残存する代表取締役が引き続き会社を代表できるため業務執行自体は継続できるものの、登記簿上は辞任した者の抹消登記のみを行えば足り、新たな代表取締役の選定決議までは不要であるという整理を誤解し、不要な取締役会決議まで行ってしまう例も見られる。反対に、代表取締役が一名のみの会社では、辞任と同時に後任者を選定しておかなければ、会社の業務執行機関が空白となる期間が生じかねない。なお、個別の事案における適否や登記申請の可否については、司法書士等の専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 辞任する代表取締役の氏名・住所が登記簿上の記載と一致しているか確認したか
- [ ] 辞任年月日を明確な文言で記載したか
- [ ] 押印した印鑑が登記所届出印か個人実印かを特定したか
- [ ] 添付する印鑑証明書が発行後3か月以内のものであるか確認したか
- [ ] 印鑑証明書上の住所表記と辞任届上の住所表記が一致しているか確認したか
- [ ] 辞任後も取締役として在任するか、同時に取締役も辞任するかを明記したか
- [ ] 会社が受理した日付を社内控えに記録する体制があるか
- [ ] 辞任により役員が最低員数を欠くことにならないか確認したか
- [ ] 後任の代表取締役選定の手続(取締役会決議等)が並行して進んでいるか確認したか
- [ ] 登記申請までのスケジュールと印鑑証明書の有効期限が整合しているか確認したか