電信送金(T/T)による国際決済の前払割合や送金期限、送金手数料の負担を取り決める書式。外為法に基づく支払等の報告義務、為替変動時の価格調整と遅延利息を定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
代金決済条件に関する合意書(T/T送金)
第1部: 書式本文
第1条(目的) 売主【売主商号】(以下「甲」という。)と買主【買主商号】(以下「乙」という。)は、甲乙間の【対象商品名】の国際売買取引(以下「本取引」という。)に係る代金決済の方法及び条件について、本合意書のとおり合意する。
第2条(適用範囲) 本合意書は、甲乙間で個別に締結される売買契約書、注文書及び注文請書(以下併せて「個別契約」という。)に定める代金の決済に適用する。個別契約に別段の定めがある場合は、当該定めが本合意書に優先する。
第3条(決済方法) 本取引の代金は、電信送金(Telegraphic Transfer、以下「T/T」という。)により、乙から甲の指定する銀行口座【銀行名・支店名・口座番号・SWIFTコード】へ送金する方法により決済する。
第4条(前払金及び残金の支払割合) 乙は、個別契約成立後【7】営業日以内に、契約金額の【30】%を前払金として甲に送金する。残金【70】%は、船積書類(船荷証券又は航空運送状の写し)を乙が受領した日から【14】日以内に送金する。
第5条(送金期限及び遅延の効果) 乙が前項の送金期限を徒過した場合、甲は書面による催告を経て、出荷の停止又は個別契約の解除を行うことができる。
第6条(送金手数料の負担) 仕向銀行手数料は乙の負担とし、被仕向銀行手数料及び中継銀行手数料は甲の負担とする(いわゆるSHA方式)。ただし、個別契約において別途OUR方式又はBEN方式を選択した場合はこれに従う。
第7条(通貨及び為替変動時の価格調整) 本取引の代金は【米ドル】建てとする。個別契約成立日の対顧客電信売買相場仲値(TTM)を基準為替レートとし、送金実行日までの間に基準為替レートが【5】%を超えて変動した場合、甲乙は誠実に協議のうえ契約金額を調整することができる。
第8条(遅延利息) 乙が送金期限までに送金を完了しない場合、乙は甲に対し、期限の翌日から支払済みまで年【14.6】%の割合による遅延利息を支払う。
第9条(外国為替及び外国貿易法上の報告義務) 甲及び乙は、それぞれ自国の外国為替関係法令に基づく報告義務を負うことを確認する。特に乙が日本の居住者である場合、外国為替及び外国貿易法第55条及び外国為替の取引等の報告に関する省令に基づき、財務大臣への支払等の報告書の提出が必要となる場合があることに留意する。
第10条(準拠法及び紛争解決) 本合意書の準拠法は【日本法】とし、本合意書に起因し又は関連する一切の紛争は【東京地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第11条(有効期間) 本合意書は、締結日から効力を生じ、甲乙間の基本契約が終了するまで有効に存続する。
第12条(協議事項) 本合意書に定めのない事項及び本合意書の解釈に疑義が生じた事項については、甲乙誠実に協議のうえ解決する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 輸出者(売主)向けの修正例
輸出者の立場では、船積前の代金回収を厚くすることでカントリーリスクや与信リスクを抑える設計が重要である。第4条の前払割合を「50%」に引き上げ、「残金50%は船積書類の呈示と引換えに送金する」という条文に置き換えることで、現物の管理を通じた与信保全が可能となる。また第6条の送金手数料は「仕向・被仕向・中継銀行の手数料はすべて乙の負担とする(OUR方式)」とし、実質受取額の目減りを防ぐ書き換えが有効である。
B. 輸入者(買主)向けの修正例
輸入者の立場では、船積前全額前払を避け、検収後払いの要素を組み込む交渉が現実的である。第4条を「前払金10%、船積書類到着後の検品完了を条件として残金90%を送金する」との条文に置き換え、第5条に「乙は検品の結果、契約不適合を発見した場合、当該不適合部分に相当する金額の送金を留保できる」との一文を追加することが考えられる。第7条の為替変動条項についても、自国通貨建てへの変更や変動幅を「3%」に狭める修正により、為替リスクの偏在を是正する交渉が想定される。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、継続的な国際売買取引において代金決済の方法・時期・手数料負担をあらかじめ枠組みとして固定し、個別の注文ごとに条件交渉を繰り返す手間を省く目的で用いる。単発かつ少額の取引で個別契約書に決済条件を書き込めば足りる場合や、信用状(L/C)取引のように独立の決済スキームを用いる場合には、本書式をそのまま流用すべきではなく、信用状統一規則(UCP600)に対応した別書式を検討する必要がある。
法的根拠としては、送金遅延時の遅延利息について商行為から生じた債務に適用される商事法定利率(民法第404条)、報告義務については外国為替及び外国貿易法第55条に基づく支払等の報告制度が関係する。契約当事者の少なくとも一方が日本の居住者である場合、この報告義務の対象となるかを個別に確認する必要がある。
実務でよくある失敗として、第一に送金手数料の負担方式(OUR・BEN・SHA)を明記しないまま取引を始め、着金額が契約金額を下回るトラブルが挙げられる。これは第6条のように方式を明示することで防止できる。第二に、為替変動への対応を定めずに長期契約を締結し、為替差損を一方当事者のみが負担する結果となる失敗がある。第7条のような基準レートと変動幅による再協議条項を置くことが対策となる。第三に、送金期限を「速やかに」など曖昧な表現で定め、遅延の有無を巡って紛争化する例がある。具体的な日数・起算点を明記することが望ましい。なお、外為法上の報告義務の要否や税務上の取扱いは取引の内容や当事者の属性によって異なるため、個別事案については弁護士・税理士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象となる取引(個別契約)の範囲が明確に特定されているか
- [ ] 送金先口座情報(銀行名・SWIFTコード等)が正確に記載されているか
- [ ] 前払金・残金の割合と各支払時期が具体的な日数で特定されているか
- [ ] 送金手数料の負担方式(OUR・BEN・SHA)を明示しているか
- [ ] 建値通貨と為替変動時の調整ルールを定めているか
- [ ] 遅延利息の利率が法令上妥当な水準に設定されているか
- [ ] 外国為替及び外国貿易法上の報告義務の要否を確認したか
- [ ] 準拠法及び紛争解決機関(裁判所又は仲裁機関)を明記しているか
- [ ] 個別契約との優先関係(本合意書と個別契約のどちらが優先するか)を定めているか
- [ ] 相手方の信用状態やカントリーリスクを踏まえた前払割合になっているか