親族や関連会社が債務者に代わって支払う場面で用いる承諾書。民法第474条の第三者弁済と第499条の弁済による代位、求償の範囲を明確にします。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
第三者弁済に関する承諾書
第1部: 書式本文
【債権者商号】(以下「甲」という。)、【債務者商号】(以下「乙」という。)及び【弁済する第三者氏名】(以下「丙」という。)は、乙の甲に対する債務につき丙が弁済することに関し、次のとおり合意する(以下「本合意」という。)。
第1条(対象債務の確認) 甲乙丙は、【〇〇年〇〇月〇〇日】付【契約名】に基づく乙の甲に対する債務(元本金【 】円及びこれに付帯する利息・遅延損害金。以下「本件債務」という。)が存在することを相互に確認する。
第2条(第三者弁済の承諾) 1. 丙は、乙に代わって本件債務を弁済することを申し出、甲及び乙はこれを承諾する。 2. 本弁済は民法第474条第1項に定める第三者弁済に該当する。丙が本件債務について正当な利益を有する第三者に該当するか否かにかかわらず、甲及び乙は本合意により丙による弁済を承諾するものとする。
第3条(弁済の方法及び期日) 丙は、甲に対し、【〇〇年〇〇月〇〇日】限り、本件債務の全額(又は金【 】円)を、甲の指定する口座に振り込む方法により弁済する。
第4条(弁済による代位) 1. 丙が本件債務を弁済したときは、民法第499条の規定により、丙は弁済をするについて正当な利益を有する場合は当然に、そうでない場合は債権者の承諾を得て、甲が乙に対して有していた債権及びこれに付随する担保権を、丙が乙に対して有する求償権の範囲内で行使することができる。 2. 甲は、丙の代位を確保するため、必要な範囲で対抗要件具備のための書類を丙に交付する。
第5条(丙乙間の求償関係) 丙が本件債務を弁済したときは、丙乙間の原因関係(委任、贈与その他)に従い、丙は乙に対し求償することができる。求償権の具体的な範囲は、丙乙間で別途合意する。
第6条(乙の承諾の意義) 乙が本条による弁済を承諾することは、丙の弁済により乙が本件債務を免れることを了承する趣旨であり、乙丙間の求償関係の存否に影響を与えるものではない。
第7条(受領証の発行) 甲は、丙から本件債務の弁済を受けたときは、丙に対し受領証を発行し、本件債務が消滅したことを証明する。
第8条(清算条項) 甲、乙及び丙は、本件債務に関し、本合意に定めるもののほか何らの債権債務のないことを相互に確認する。
第9条(協議及び合意管轄) 本合意に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上を証するため本書3通を作成し、甲乙丙記名押印の上、各自1通を保有する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
(甲) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】 印 (乙) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】 印 (丙) 住所:【 】 氏名(商号):【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 債権者向け書き換え
A-1. 保証意思がない親族による任意の肩代わり弁済の場面
第2条追加例:「甲は、丙が本件債務について正当な利益を有する第三者に該当しないことを確認した上で、乙の意思に反しないことを条件に丙による弁済を承諾する。」 解説: 正当な利益を有しない第三者による弁済は債務者の意思に反してすることができない(民法第474条第2項)ため、乙の意思に反しないことの確認を明記する。
A-2. 関連会社が親会社の債務を弁済する場面
第4条追加例:「甲は、丙が代位取得する担保権について、丙のために担保権移転の付記登記手続に協力する。」 解説: 不動産担保が付されている場合、代位による担保権移転を第三者に対抗するには付記登記が必要となるため、甲の協力義務を明記する。
B. 弁済する第三者向け書き換え
B-1. 求償を確実にしたい場面
第5条修正例:「丙が本件債務を弁済したときは、乙は丙に対し、弁済額及びこれに年【 】パーセントの利息を付した額を、【〇〇年〇〇月〇〇日】までに支払う。」 解説: 求償権の内容(利息の有無・支払期限)を本合意上も具体化し、後日の求償紛争を予防する。
B-2. 代位により取得する担保権を確実に行使したい場面
第4条修正例:「甲は、本件債務に付された担保権の内容(担保目的物、順位、被担保債権額)を丙に開示し、代位に必要な資料を提供する。」 解説: 代位取得する担保権の内容が不明確だと権利行使に支障が生じるため、事前の情報開示義務を課す。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、債務者本人以外の第三者(親族、関連会社等)が債務者に代わって弁済を行い、その効果や求償関係を明確にする場面で用いる。第三者が単に保証人として将来の履行を約束する場合は根保証契約書等の保証書式を用いるべきであり、既に弁済が実行される(又は実行された)場面を前提とする本書式とは性質が異なる。また、弁済をするについて正当な利益を有しない第三者による弁済は、債務者の意思に反してすることができない点に注意が必要である。
根拠法令 第三者弁済は民法第474条に基づき、原則として何人も債務者のために弁済をすることができるが、同条第2項により弁済をするについて正当な利益を有しない第三者は債務者の意思に反して弁済することができない(ただし債権者が知らなかったときは有効)。同条第3項では、正当な利益を有しない第三者は債権者の意思に反して弁済することもできないとされている。第三者が弁済すると、民法第499条に基づき弁済による代位が生じ、代位者は原債権及びその担保権を求償権の範囲内で行使できる。この代位を第三者に対抗するには、民法第500条により債権譲渡の対抗要件の規定(第467条)が準用される。
実務でよくある失敗と対策 第一に、正当な利益を有しない第三者が債務者の意思を確認せずに弁済し、後日弁済の有効性が争われる失敗がある。第2条2項及びA-1修正例のように乙の意思に反しないことを確認する。第二に、弁済による代位の効果を意識せず、丙が代位取得する担保権の対抗要件を具備しないまま放置し、権利行使ができなくなる失敗がある。第4条のように対抗要件具備への甲の協力義務を明記する。第三に、丙乙間の求償関係を口頭のみで済ませ、求償額や利息について後日紛争になる失敗がある。第5条のように求償関係を明文化する。正当な利益の有無の判断や代位の対抗要件具備の手続については専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本件債務の発生原因・金額を具体的に特定したか
- [ ] 丙が本件債務について正当な利益を有するか否かを確認したか
- [ ] 正当な利益を有しない場合、乙の意思に反しないことを確認したか
- [ ] 弁済の方法・期日を明記したか
- [ ] 弁済による代位の範囲(求償権の範囲内)を明記したか
- [ ] 代位取得する担保権の対抗要件具備への協力を定めたか
- [ ] 丙乙間の求償関係(利息の有無等)を明確にしたか
- [ ] 受領証等、弁済の事実を証する書面の発行を定めたか
- [ ] 清算条項により本件債務に関する紛争を防止したか