団体交渉の申入れに対し会社が開催条件や交渉事項の可否を回答する書面です。義務的団交事項の範囲を踏まえた回答例を示します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
団体交渉回答書
第1部: 書式本文
団体交渉回答書\ 【発信日:西暦】年【月】月【日】日
【労働組合名】\ 執行委員長 【氏名】殿
【会社名】\ 【代表者役職・氏名】 印
団体交渉回答書
【西暦】年【月】月【日】日付「団体交渉申入書」を拝受いたしました。内容を検討のうえ、下記のとおり回答いたします。
1. 交渉事項に対する回答 (1) 【交渉事項1:例 賃上げに関する事項】…交渉事項として応諾いたします。 (2) 【交渉事項2:例 懲戒処分の撤回に関する事項】…交渉事項として応諾いたします。 (3) 【交渉事項3:例 個別組合員の私生活上の紛争に関する事項】…義務的団交事項に該当しないと考えるため、本件団体交渉においては取り扱わないものといたします。理由は下記4のとおりです。
2. 開催日時・場所 【西暦】年【月】月【日】日【時】時より、【場所】において開催いたします。
3. 会社側出席者 【役職名・氏名】(交渉事項について一定の裁量権限を有する者として出席)
4. 交渉事項の一部を取り扱わない理由 義務的団交事項とは、組合員の労働条件その他の待遇及び団体的労使関係の運営に関する事項であって使用者に処分可能なものをいうと解されており、上記(3)は組合員個人の私的な事情に関するものであり、労働条件その他の待遇に直接関わらないと判断したため、本件においては交渉事項から除外いたします。もっとも、貴組合において別途具体的な労働条件との関連性をご説明いただける場合には、改めて検討いたします。
5. 資料提出について ご要請いただいた資料のうち、【提出可能資料】については交渉日までにご用意いたします。【提出困難な資料】については、【理由:例 第三者の個人情報を含むため】提出を控えさせていただきます。
6. 継続的な交渉体制について 本件については一回の交渉で妥結に至らない可能性があることを踏まえ、必要に応じて複数回の交渉の機会を設ける所存です。
7. その他 本回答は貴組合との誠実な協議を行う意思の表れであり、今後の交渉においても労働組合法第7条2号の趣旨を踏まえ、誠実に対応してまいります。
8. 開催方式について 貴組合からオンライン開催の提案があった場合、資料の同時提示及び発言記録が可能な方式であることを条件に、これに応じることがあります。ただし、初回の交渉については対面開催を原則といたします。
9. 複数組合が存在する場合の取扱い 貴社に複数の労働組合が併存する場合、いずれの組合との団体交渉についても、労働組合法第7条2号の趣旨に沿い、組合間で扱いに差を設けることなく対応する方針です。
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 会社の立場からの記載例
会社が回答書を作成する際、最も重要なのは「交渉に応じる事項」と「応じない事項(または応じられない理由)」を明確に切り分けることである。単に「検討します」とだけ記載すると、後日その事項について再度交渉を求められた際に応諾義務の有無が争点化しやすい。例えば人事権に基づく配置転換のうち、特定の組合員個人の処遇に直接影響する場合は義務的団交事項に含まれ得るため、「経営専権事項であるため一切応じない」という記載は避け、「労働条件への影響の範囲で協議に応じる」といった限定的応諾の表現にとどめることが望ましい。また出席者について、実務上決定権限のない担当者のみを出席させると誠実交渉義務違反を指摘されるリスクがあるため、一定の裁量を有する者を明記する。
さらに、複数の労働組合が併存する事業所においては、一方の組合には迅速に回答し、他方には長期間放置するといった対応の差が、組合間差別として不当労働行為(労働組合法第7条3号)の問題を生じさせることがある。対策として、回答書の中に「他組合との対応と同様の基準で対応する」旨を明記し、社内的にも対応記録を一元管理しておくことが望ましい。
B節: 労働組合の立場からの記載例(回答受領後の対応)
組合側は本来、回答書を起案する立場ではないが、受領した回答書を評価する視点として、会社が交渉事項の一部を「義務的団交事項に該当しない」として除外した場合、その除外理由が具体的な事実関係に基づくものか、抽象的な経営判断の繰り返しに過ぎないかを精査する必要がある。除外理由が不十分と判断される場合、組合は「当該事項が組合員の労働条件に直接影響することの説明」を追加で行い、再度団体交渉を申し入れる文書を作成することが有効な対応となる。単に「回答内容に不服である」と記載するのではなく、具体的な関連性を示す事実を付記することで、後の労働委員会への申立てにおいても交渉経過を有利に示せる可能性がある。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、労働組合からの団体交渉申入れに対し、会社が開催条件及び交渉事項の取扱いについて回答する場面で用いる。使用すべき場面は、申入れの内容を精査したうえで、応諾する事項・条件付きで応諾する事項・応諾しない事項を区分して伝える必要がある場合である。他方、申入れの検討が十分でない段階で拙速に全面的な応諾または拒否を回答することは、後の紛争において不利な証拠となり得るため避けるべきである。
根拠となる考え方は、労働組合法第7条2号(使用者が雇用する労働者の代表者との団体交渉を正当な理由がなく拒むことを不当労働行為として禁止する規定)、及び判例・労働委員会命令の集積により確立してきた「義務的団交事項」の考え方(組合員の労働条件その他の待遇及び団体的労使関係の運営に関する事項であって使用者に処分可能なもの)である。
よくある失敗の一つは、交渉事項の一部を「経営専権事項だから」という一言のみで拒否し、具体的な理由を示さないことである。対策として、第1部の記載例のように、除外の理由を組合員の労働条件との関連性の有無という観点から具体的に説明する。二つ目の失敗は、出席者に実質的な決定権限を与えず、交渉のたびに持ち帰りを繰り返すことで誠実交渉義務違反と評価されることである。対策として、一定の裁量権限を有する者を出席者として明記し、決裁ルートを事前に整理しておく。三つ目の失敗は、資料提出の可否について理由を示さず一律に拒否することである。対策として、提出できない資料については個人情報保護や営業秘密保護など具体的な理由を付す。四つ目の失敗として、複数組合が併存する場合に組合ごとに回答の速さや内容を変えてしまい、結果として組合間差別(労働組合法第7条3号)の問題を招くことがある。対策として、回答方針を統一的な基準に基づいて決定し、対応記録を社内で一元的に管理する。義務的団交事項の該当性判断や組合間差別の成否は事案ごとに異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- 申入書記載の交渉事項ごとに応諾・条件付応諾・非該当を区分して回答しているか
- 交渉事項を除外する場合、具体的な理由(労働条件との関連性の有無)を記載しているか
- 開催日時・場所が申入書の希望日程を踏まえて設定されているか
- 会社側出席者に一定の決定権限があるか、社内で事前に確認されているか
- 資料提出の可否について理由を付して回答しているか
- 一回の交渉で妥結しない場合の継続協議の姿勢が示されているか
- 回答内容が経営専権事項の一言で全面拒否になっていないか
- 回答書の発信が申入書記載の回答期限内に行われているか
- 回答書の文言が誠実交渉の意思を示す表現になっているか
- 社内の稟議・決裁を経た内容になっているか
- 複数組合が併存する場合、他組合への対応と整合的な内容になっているか
- 送付前に弁護士等専門家へ内容の確認を行ったか