労働組合が会社に対し団体交渉の開催を求める申入書です。交渉事項、希望日時、出席予定者、回答期限を明示して誠実交渉を促します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
団体交渉申入書
第1部: 書式本文
団体交渉申入書\ 【発信日:西暦】年【月】月【日】日
【会社名】\ 【代表者役職・氏名】殿
【労働組合名】\ 執行委員長 【氏名】 印
団体交渉申入書
貴社におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。当組合は、労働組合法第2条の要件を満たして組織された労働組合であり、貴社に在籍する下記組合員を含む従業員をもって構成されております。
このたび、下記事項につき労働組合法第6条に基づき正当な交渉権限を有する当組合代表者との間で団体交渉を開催されるよう申し入れます。貴社が正当な理由なく本申入れを拒否された場合、労働組合法第7条2号の不当労働行為(団交拒否)に該当するおそれがあることを申し添えます。
1. 交渉事項 【交渉事項1:例 令和【年】年度賃上げに関する事項】 【交渉事項2:例 【氏名】に対する懲戒処分の撤回に関する事項】 【交渉事項3:例 時間外労働の割増賃金未払いに関する事項】
2. 開催希望日時 第一希望:【西暦】年【月】月【日】日【時】時〜 第二希望:【西暦】年【月】月【日】日【時】時〜
3. 開催場所 【場所:例 貴社本社会議室、または当組合事務所】
4. 組合側出席予定者 執行委員長【氏名】、書記長【氏名】、組合員【氏名】、上部団体【名称】担当者【氏名】(必要に応じて)
5. 会社側出席者に関する要望 交渉事項について実質的な決定権限を有する者(【役職名】以上)の出席を求める。
6. 資料の事前提出要請 【要請資料:例 賃金台帳の写し、就業規則の写し、当該処分に関する経緯書】を交渉日の【日数】日前までにご提出願いたい。
7. 回答期限 本申入書到達後【日数】日以内(【西暦】年【月】月【日】日必着)に、開催日時・場所・出席者について書面にてご回答ください。
8. 誠実交渉の要請 貴社におかれては、労働組合法第7条2号及び憲法第28条の趣旨を踏まえ、形式的な対応に終始することなく、実質的な検討・回答をもって誠実に交渉に応じられるよう要請いたします。
9. 連絡先 【組合事務所住所・電話番号・担当者名】
10. 交渉方式に関する希望 対面での開催を原則としつつ、貴社の事情により対面が困難な場合は、【オンライン会議システム名】を用いた開催にも応じる用意があることを申し添えます。ただし、資料の同時提示や逐語的なやり取りの記録が可能な方式に限ります。
11. 緊急性がある場合の申入れ 【緊急性の有無:例 【氏名】の解雇通告日が【西暦】年【月】月【日】日と迫っているため、通常よりも早期の開催を希望する】場合は、その理由を付記し、通常の回答期限よりも短縮した対応を求めることがあります。
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 労働組合の立場からの記載例
労働組合が申入書を作成する際は、交渉事項を抽象的に書かず、会社が争点を特定できる程度に具体化することが重要である。例えば「賃金に関する事項」ではなく「令和【年】年4月分〜9月分の時間外労働割増賃金未払分の支払いに関する事項」のように具体的な期間・対象者を明示すると、会社側の論点整理義務を明確化でき、後の団交拒否の主張立証にも資する。
また、少数組合の場合は、会社が「多数組合との交渉を優先する」との理由で対応を後回しにする例があるため、「貴社における唯一の交渉窓口ではないことは承知しているが、組合間差別的な取扱いは労働組合法第7条3号に抵触し得る」旨を付記し、対応の公平性を牽制する記載を加えることが有効である。
さらに、結成間もない組合や、社外の合同労組・地域ユニオンが個別労働者を組織化した場合には、会社が組合の実在性や交渉権限を疑って初動対応を遅らせる例があるため、規約や役員選任の議事録の写しを添付する、あるいは「求めがあれば規約等を提示する用意がある」旨を記載しておくと、会社側の確認作業を円滑にし、結果として早期の開催につながりやすい。
B節: 会社の立場からの記載例(申入れ受領時の対応方針)
会社側は申入書そのものを起案する立場にはないが、受領時の初動対応として、申入書の記載内容を精査し「交渉事項が特定されているか」「組合の代表者選任・交渉権限の存在(労組法第6条)が確認できるか」をチェックする視点が必要である。回答書作成の前提として、社内稟議で「出席者の決定権限の範囲」「開示可能資料の線引き」を先に固めておくことで、拙速な回答による誠実交渉義務違反の指摘を避けやすくなる。会社側が独自に「団体交渉申入書」を起案することは通常想定されないため、本書式は主に組合側起案文書として整理している。
なお、申入書が社外の合同労組から届いた場合、会社が「当社の従業員代表ではない」との理由のみで一律に対応を拒否する例が見られるが、組織対象に自社の従業員(たとえ一人であっても)が含まれる限り、労働組合法上の団体交渉の相手方としての地位を否定することは困難であるため、まずは規約・組合員資格の確認を行ったうえで対応方針を検討する姿勢が求められる。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、労働組合が使用者に対し団体交渉の開催を求める初動の意思表示として用いる。使用すべき場面は、賃上げ・懲戒処分・解雇・労働条件変更など、組合員の労働条件その他の待遇や団体的労使関係の運営に関する事項について協議を求める場合である。他方、個々の組合員の純粋な私生活上の紛争など義務的団交事項に該当しない事柄のみを目的とする場合には、そのまま用いると会社側から「交渉事項に該当しない」との応答を招く可能性があるため注意を要する。
根拠法令は、日本国憲法第28条(勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利)、労働組合法第6条(交渉権限)、同法第7条2号(使用者が団体交渉を正当な理由なく拒むことを不当労働行為として禁止)である。
よくある失敗の一つは、交渉事項の記載が漠然としすぎて会社側に「何を協議すべきか不明」との口実を与えてしまうことである。対策として、第1部のように交渉事項を項目ごとに分け、対象期間・対象者・求める措置を具体的に記載する。二つ目の失敗は、回答期限を設定しない、または極端に短期間(即日など)に設定し、誠実な検討の機会を奪ったとの反論を招くことである。対策として、業種や事案の複雑さに応じ1〜2週間程度の合理的な期間を設定する。三つ目の失敗は、出席者について「代表者以外は認めない」など過度に限定した要求を行い、かえって開催自体が困難になることである。対策として、出席者は「決定権限を有する者」という機能面での要求にとどめ、氏名の限定は避けることが望ましい。四つ目の失敗として、緊急性のある事案(解雇通告日が迫っている等)であるにもかかわらず、通常の書式のまま提出し、会社側が悠長な検討期間を確保してしまう例がある。対策として、緊急性の理由と根拠となる事実(通告日等)を明記し、短縮した回答期限を求める旨を第1部の記載例のように独立した項目として設ける。なお、団体交渉が義務的団交事項に該当するか否か、また合同労組・地域ユニオンからの申入れに対する会社の対応義務の有無は個別の事実関係により判断が分かれるため、個別事案は専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- 交渉事項が具体的に特定されているか(期間・対象者・求める措置)
- 開催希望日時が複数提示され、会社側の日程調整余地があるか
- 組合側出席予定者の氏名・役職が明記されているか
- 会社側出席者に求める決定権限の範囲が明記されているか
- 事前提出を求める資料の範囲が過不足なく特定されているか
- 回答期限が合理的な日数(概ね1〜2週間程度)で設定されているか
- 連絡先(住所・電話・担当者)が正確に記載されているか
- 発信者(執行委員長等)の記名押印または署名があるか
- 労働組合法第2条の自主性要件を満たす組合として結成されているか
- 送付方法(内容証明郵便・普通郵便・手交)が事案に応じて選択されているか
- 上部団体が関与する場合、その名称・担当者が明記されているか
- 送付前に弁護士等専門家へ内容の確認を行ったか