広告データ等を秘匿環境で突合分析するサービスの規約。個人関連情報の第三者提供を規律する個人情報保護法第31条を踏まえ出力制御ルールを明記する。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
データクリーンルーム利用規約
第1部: 書式本文
第1条(目的) 本規約は、乙(提供事業者)が運営するデータクリーンルーム(秘匿環境下でのデータ突合分析サービス、以下「本サービス」という。)を甲(利用企業)が利用するにあたっての条件を定める。
第2条(データクリーンルームの仕組み) 本サービスは、甲及び他の参加者が保有するデータを、乙が管理する秘匿環境内でのみ突合・分析させ、参加者相互に生データを直接開示させない技術的な仕組みにより提供される。
第3条(投入データの範囲) 甲は、本サービスへの投入に際し、投入データに含まれる情報の項目及び取得経緯を乙に申告する。乙は、申告内容が本サービスの利用規約及び関連法令に照らして適切であることを確認する。
第4条(個人関連情報の第三者提供規制への対応) 甲が投入するデータが個人情報保護法第2条第7項の個人関連情報(Cookie識別子、閲覧履歴等、個人データに該当しないもの)に該当し、これを他の参加者が個人データとして取得することが想定される場合、甲及び当該参加者は、同法第31条第1項に基づき、提供先において個人データとして取得されることが想定されるときの本人同意の取得その他の要件を満たす。
第5条(出力制御ルール) 乙は、本サービスの分析結果として出力される情報について、次の各号の出力制御を行う。 一 個人を特定できる粒度での結果出力の禁止(統計的な集計値のみの出力) 二 一定の最小人数(k-匿名性)を下回る集計結果の出力禁止 三 他の参加者の生データそのものの出力禁止
第6条(相互の生データ非開示) 甲及び他の参加者は、本サービスの利用を通じて、相互に相手方の投入した生データにアクセスできないものとする。
第7条(分析結果の利用目的) 甲は、本サービスから得た分析結果を、【利用目的(広告効果測定等)】の範囲内でのみ利用する。
第8条(監査ログ) 乙は、本サービスにおける突合・分析処理の実行履歴を記録し、【〇年】保管する。
第9条(利用料金) 利用料金は、【固定額/データ量に応じた従量制】とし、甲は乙に対し【支払サイト】に従い支払う。
第10条(規約違反時の措置) 乙は、甲が投入データについて虚偽の申告を行った、又は出力制御を回避する試みを行ったと認める場合、甲の本サービス利用を停止することができる。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 提供事業者向け
A-1. 投入データの適法性についての甲の表明保証
修正条文例:「甲は、投入データについて、必要な同意取得その他の法令上の要件を満たしていることを表明し保証し、これに反したことにより乙又は他の参加者に生じた損害を賠償する。」 一言解説: 投入データの適法性確保の一次的な責任を投入者(甲)に負わせ、プラットフォーム運営者の責任を限定する修正である。
A-2. 出力制御ルールの技術的限界の明記
修正条文例:「乙は、出力制御ルールを技術的に可能な範囲で実施するが、参加者が集計結果を反復的に取得し組み合わせることによる再識別リスクまで完全に排除することを保証しない。」 一言解説: k-匿名性等の出力制御には技術的な限界があることを明確にし、過大な保証を回避する修正である。
B. 利用企業向け
B-1. 出力制御の最小人数基準の明記
修正条文例:「乙は、集計結果の出力にあたり、最小【〇】人を下回るセグメントについては結果を出力しない。」 一言解説: k-匿名性の基準を具体的な数値で明記し、再識別リスクへの対応水準を可視化する修正である。
B-2. 監査ログへのアクセス権
修正条文例:「甲は、自社の投入データに関する突合・分析処理の実行履歴について、乙に開示を求めることができる。」 一言解説: 自社データがどのように処理されたかを事後的に検証できるよう、利用企業側の監査アクセス権を確保する修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、広告主やメディア事業者等の複数の参加者が、それぞれ保有する顧客データや閲覧履歴データを、秘匿環境(データクリーンルーム)内で突合・分析し、生データを相互に開示することなく広告効果測定等の分析結果のみを得るサービスの利用条件を定める場面で用いる。単純な二者間のデータ提供や共同利用とは異なり、複数の参加者が互いの生データにアクセスできない技術的な統制が前提となる点に特徴があり、この統制が実質的に機能していない場合は本書式の枠組み自体が成立しない。
根拠法令 データクリーンルームでは、ある参加者が投入するデータ自体は個人データに該当しなくても(例えばCookie識別子等の個人関連情報)、突合の結果、他の参加者側で個人データとして取得されることが想定される場合がある。個人情報保護法第31条第1項は、個人関連情報取扱事業者が、個人関連情報を第三者に提供する場合において、提供先の第三者が個人データとして取得することが想定されるときは、あらかじめ本人の同意が得られていること等を確認しなければならない旨を定める(個人関連情報の第三者提供規制)。データクリーンルームの運営にあたっては、この規制の適用可能性を投入データの性質ごとに検討し、必要な同意取得や確認記録の整備を組み込む必要がある。また、出力される集計結果についても、統計的な集計であっても粒度が細かすぎると特定の個人が推知されるおそれがあるため、k-匿名性等の出力制御が個人情報保護法上の「個人に関する情報」に該当しない水準を維持できているかの検討が求められる。
実務でよくある失敗と対策 第一に、投入データに個人関連情報(Cookie識別子等)が含まれるにもかかわらず、個人情報保護法第31条の第三者提供規制の適用を見落とし、提供先での個人データ取得についての本人同意の確認を怠る失敗がある。第4条のように該当性の確認と要件充足を契約上の義務として組み込むことが対策となる。第二に、出力制御の最小人数基準(k-匿名性)を定めずに運用し、少人数のセグメントに絞った集計結果から特定の個人が推知されてしまう失敗がある。第5条及びB-1のように具体的な最小人数基準を明記することが有効である。第三に、投入データの適法性の確認を提供事業者(乙)のみに委ね、利用企業(甲)側が自社データの取得経緯の適法性を十分に検証しないまま投入し、後日の指摘で問題が発覚する失敗がある。A-1のように投入データの適法性について投入者自身の表明保証を求めることが望ましい。
個人関連情報の第三者提供規制の適用可能性や出力制御の妥当性は、投入データの性質や分析手法によって個別に判断されるため、専門家(技術専門家を含む。)に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本サービスの秘匿環境の仕組み(生データの相互非開示)を理解し確認したか
- [ ] 投入データの項目及び取得経緯を申告する手続を定めたか
- [ ] 投入データが個人関連情報に該当する場合、個人情報保護法第31条の要件充足を確認したか
- [ ] 出力制御ルール(統計的集計、最小人数基準等)を具体的に定めたか
- [ ] 相互の生データへの非アクセスが技術的に担保されていることを確認したか
- [ ] 分析結果の利用目的を明確に限定したか
- [ ] 突合・分析処理の監査ログの保管期間及び開示範囲を定めたか
- [ ] 投入データの適法性について投入者自身の表明保証を求めたか
- [ ] 規約違反(虚偽申告、出力制御の回避)への対応措置を定めたか
- [ ] 利用料金の算定方法を定めたか