複数社でデータを持ち寄り共同利用する際の契約書。個人情報保護法第27条第5項第3号の共同利用と、成果の権利帰属や独占禁止法上の留意点を定める。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
データ共同利用契約書
第1部: 書式本文
第1条(目的) 参加事業者(甲一、甲二、甲三…)及び幹事事業者(乙)は、各自が保有するデータを持ち寄り、共同で分析・利用する取組み(以下「本共同利用」という。)に関し、本契約のとおり合意する。
第2条(幹事事業者の役割) 乙は、本共同利用の事務局として、参加事業者から提供されるデータの集約、管理及び分析基盤の運営を行う。
第3条(提供データの範囲) 各参加事業者は、別紙に定める範囲のデータ(以下「提供データ」という。)を乙が管理するプラットフォームに提供する。
第4条(個人情報保護法上の共同利用の整理) 提供データに個人データが含まれる場合、参加事業者間の共同利用は、個人情報保護法第27条第5項第3号の要件(共同利用する旨、共同利用者の範囲、利用目的、管理責任者をあらかじめ本人に通知又は容易に知り得る状態に置くこと)を満たすよう実施する。乙を個人情報保護法上の管理責任者とする。
第5条(利用目的の限定) 提供データは、【共同利用の目的】の範囲内でのみ利用するものとし、参加事業者が個別に自社の他の事業のために利用してはならない。
第6条(成果の権利帰属) 本共同利用によって得られた分析結果、統計データその他の成果物(以下「成果物」という。)の権利は、〔選択A: 参加事業者間で共有する/選択B: 乙に帰属し、参加事業者に利用権を許諾する/選択C: 別紙の配分ルールによる〕。
第7条(独占禁止法上の留意) 参加事業者は、本共同利用を通じて、競争関係にある参加事業者間の価格、販売数量その他の競争上重要な情報を共有することのないよう留意し、独占禁止法上のカルテル又は情報交換による協調行為に該当する事態を回避する。
第8条(参加事業者の脱退) 参加事業者は、【〇か月】前の通知により本共同利用から脱退することができる。脱退した参加事業者は、以後の成果物の分配を受けない。
第9条(データの管理措置) 乙は、提供データについて、参加事業者ごとにアクセス権限を設定し、他の参加事業者が個社別の元データに直接アクセスできないよう技術的な措置を講じる。
第10条(費用負担) 本共同利用の運営費用は、〔均等割/参加事業者の規模に応じた按分〕により参加事業者が負担する。
第11条(終了時の措置) 本共同利用が終了した場合、乙は、統合された提供データを速やかに消去し、各参加事業者に提供したデータの返還・消去の状況を報告する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 参加事業者向け
A-1. 自社データの提供範囲の限定
修正条文例:「甲は、提供データのうち機微な競争情報(取引先ごとの単価、原価情報等)を除外して乙に提供する。」 一言解説: 独占禁止法上のリスクが特に高い競争上機微な情報を提供対象から明確に除外する修正である。
A-2. 脱退時の自社データの取扱い
修正条文例:「甲が脱退する場合、乙は、甲が提供したデータを他の参加事業者の分析に用いた統合データから合理的な範囲で分離又は消去する。」 一言解説: 脱退後も自社データが共同利用の枠組みに残り続けることを防ぐための修正である。
B. 幹事事業者向け
B-1. 管理責任の範囲限定
修正条文例:「乙は、個人情報保護法上の管理責任者として通知事項の管理を行うが、各参加事業者が個別に負う安全管理措置の実施状況について保証するものではない。」 一言解説: 管理責任者としての役割を、通知事項の管理という限定的な範囲に留め、参加事業者各自の管理義務まで肩代わりしないことを明確にする修正である。
B-2. 運営費用の未払時の対応
修正条文例:「参加事業者が運営費用の支払いを【〇日】以上遅滞した場合、乙は当該参加事業者へのデータ提供及び成果物の分配を停止することができる。」 一言解説: 費用負担の実効性を確保するための牽制条項である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、複数の事業者が各自の保有データを持ち寄り、幹事事業者が集約・分析する共同のデータ利活用の枠組みを構築する場面で用いる。競争関係にある事業者間での利用の場合、独占禁止法上のリスクが特に高いため、単なる業務提携の一環として安易に導入するのではなく、共有する情報の範囲や利用目的を慎重に設計する必要がある。データを一方から他方へ一方的に提供するだけの取引には、データ提供契約の方が適する。
根拠法令 提供データに個人データが含まれる場合、個人情報保護法第27条第5項第3号は、特定の者との間で共同して利用される個人データであって、その旨並びに共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的及び当該個人データの管理について責任を有する者の氏名等を、あらかじめ本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているときは、第三者提供に該当しない旨を定める。この要件を満たすため、幹事事業者を管理責任者として明確にし、共同利用者の範囲・利用目的をあらかじめ公表しておく必要がある。また、参加事業者間で競争上機微な情報(価格、販売数量、生産数量等)が共有されると、独占禁止法上の不当な取引制限(カルテル、同法第2条第6項、第3条)に該当するリスクが生じるため、共有する情報の範囲や、情報交換の主体が競合事業者に該当するかについて慎重な検討が必要である。
実務でよくある失敗と対策 第一に、個人情報保護法上の共同利用の要件(あらかじめの通知等)を満たさないまま個人データを持ち寄り、第三者提供規制違反として問題視される失敗がある。第4条のように共同利用の要件を契約及び公表事項の双方で満たすことが対策となる。第二に、競争関係にある参加事業者間で、意図せず価格や取引条件に関する機微な情報が共有され、独占禁止法上のカルテルと疑われる情報交換に発展する失敗がある。第7条及びA-1のように機微な情報の提供対象からの除外を明記することが有効である。第三に、参加事業者が脱退した後も、その事業者が提供したデータが統合データの中に残り続け、脱退の実効性が乏しくなる失敗がある。第11条及びA-2のように脱退時のデータ分離・消去の手続を明確にする必要がある。
独占禁止法上のリスク評価は共有する情報の内容や参加事業者間の競争関係の有無によって大きく異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 幹事事業者の役割及び管理責任の範囲を明確にしたか
- [ ] 提供データの範囲を別紙で具体的に定めたか
- [ ] 個人データを含む場合、個人情報保護法上の共同利用の要件(通知・公表事項)を満たしたか
- [ ] 利用目的が共同利用の趣旨の範囲内に限定されているか確認したか
- [ ] 成果物の権利帰属及び配分ルールを定めたか
- [ ] 競争上機微な情報(価格、取引条件等)の提供対象からの除外を検討したか
- [ ] 独占禁止法上のカルテル・情報交換規制への該当性を確認したか
- [ ] 参加事業者ごとのアクセス制限その他のデータ管理措置を定めたか
- [ ] 脱退時の手続及び脱退後のデータ分離・消去を定めたか
- [ ] 運営費用の負担方法及び未払時の対応を定めたか