自社が保有するデータを有償提供する契約書。経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」データ提供型と不正競争防止法の限定提供データを踏まえる。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
データ提供契約書
第1部: 書式本文
第1条(目的) 甲(提供者)は、乙(受領者)に対し、甲が保有する【データの名称・概要】(以下「本データ」という。)を、本契約に定める条件で有償提供する。
第2条(契約類型) 本契約は、経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」が示すデータ提供型契約に該当し、甲が本データに対する権利を保持しつつ、乙に利用を許諾する構成による。
第3条(提供方法) 甲は、本データを【提供方法(API連携、ファイル納品、専用ポータルからのダウンロード等)】により乙に提供する。
第4条(利用目的の限定) 乙は、本データを【利用目的】の範囲内でのみ利用し、当該範囲を超えて利用してはならない。
第5条(不正競争防止法上の限定提供データとしての管理) 甲は、本データについて、業として特定の者に提供する情報として電磁的方法により相当量蓄積され、及び管理されていることを前提に、不正競争防止法第2条第7項の「限定提供データ」に該当するよう、アクセス制限その他の管理措置を講じる。
第6条(第三者への再提供の制限) 乙は、甲の事前の書面による承諾なく、本データを第三者に提供し、又は開示してはならない。
第7条(加工・分析結果の取扱い) 乙が本データを加工又は分析して得た派生データ(以下「派生データ」という。)の権利帰属は、〔選択A: 乙に帰属する/選択B: 甲乙共有とする/選択C: 甲に帰属する〕。
第8条(データの品質) 甲は、本データの完全性、正確性、最新性について、〔保証する/保証しない。ただし、既知の重大な誤りがある場合は乙に通知する〕。
第9条(提供対価) 乙は、甲に対し、〔選択A: 固定額/選択B: データ利用量に応じた従量制/選択C: 派生データを用いた事業の売上に応じたレベニューシェア〕による対価を支払う。
第10条(第三者の権利侵害への対応) 本データが第三者の著作権、営業秘密その他の権利を侵害することが判明した場合、甲は速やかに乙に通知し、当該部分の提供を停止する。
第11条(利用期間終了後の措置) 本契約終了後、乙は本データ及びその複製物を甲の指示に従い返還又は消去する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 提供者向け
A-1. データ品質の非保証条項
修正条文例:「甲は、本データの完全性、正確性、特定目的への適合性について、明示又は黙示を問わずいかなる保証も行わない。」 一言解説: データの性質上、完全な正確性を保証することが困難な場合が多いため、非保証の立場を明確にする修正である。
A-2. 派生データからのフィードバック
修正条文例:「乙は、本データの利用を通じて発見した誤り又は改善提案を甲に共有するよう努める。」 一言解説: データ提供者が受領者からのフィードバックを得て、データ品質を継続的に改善するための努力義務条項である。
B. 受領者向け
B-1. 提供停止時の代替措置
修正条文例:「第10条により本データの提供が停止された場合、甲は乙に対し、代替データの提供又は既払対価の返還のいずれかを協議のうえ講じる。」 一言解説: 第三者の権利侵害を理由にデータ提供が停止された場合の受領者の不利益を緩和する修正である。
B-2. 品質保証水準の引上げ
修正条文例:「甲は、本データについて、提供時点における最新の情報であり、甲の把握する範囲で重大な誤りがないことを表明する。」 一言解説: 完全な保証は困難であっても、最低限の品質水準について提供者の表明を得る修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、事業者が自社で収集・蓄積したデータ(顧客属性データ、センサーデータ、市場データ等)を、その権利を保持したまま第三者に有償で利用許諾する場面で用いる。データを共同で収集・分析する共同研究開発型の取引や、複数の事業者が対等にデータを持ち寄る共同利用の場面には適さず、それぞれデータ創出型契約やデータ共同利用契約など別の類型を検討する必要がある。
根拠法令 データそのものは有体物ではなく、所有権(民法第206条)の対象とはならないため、データの利用条件は契約によって設計する必要がある。経済産業省が公表する「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」は、データ提供型、データ創出型、データ共用型(プラットフォーム型)の3類型を示しており、本書式はこのうちデータ提供型の構成を採る。データが不正競争防止法第2条第7項の「限定提供データ」(業として特定の者に提供する情報として、電磁的方法により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報)に該当する場合、同法上の不正取得・不正使用行為に対する差止請求(同法第3条)等の保護を受けることができるため、アクセス制限等の管理措置を適切に講じることが実務上重要となる。本データに個人データが含まれる場合は、個人情報保護法上の第三者提供規制(第27条)にも留意する必要がある。
実務でよくある失敗と対策 第一に、データの管理措置(アクセス制限、パスワード管理等)を十分に講じないまま提供し、不正競争防止法上の「限定提供データ」としての要件(電磁的方法による管理)を満たさず、法的保護を受けられない失敗がある。第5条のように管理措置を具体的に講じ、契約上もその旨を明記することが対策となる。第二に、派生データの権利帰属を定めずに契約し、受領者が本データを加工して得た分析結果の帰属を巡って紛争化する失敗がある。第7条のように派生データの帰属を明確に定めることが有効である。第三に、データの品質について「保証する」と安易に約束し、後日データの誤りが原因で受領者の事業に損害が生じた際に、想定を超える損害賠償責任を負う失敗がある。A-1のように非保証の立場を明確にするか、保証する場合は保証の範囲を限定することが望ましい。
第四に、対価の算定方式(従量制・レベニューシェア等)を選択した際に、対価算定の前提となる利用量や売上の報告義務及び検証手段(監査権等)を定めず、対価の適正性を提供者が事後的に確認できない失敗もある。第9条の対価方式に応じ、受領者に対する利用実績の報告義務や、提供者による監査の機会を組み込むことが対策となる。
限定提供データとしての法的保護の要件充足性や、データ提供契約における責任分担の設計は個別事情によって異なるため、専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本データの範囲及び提供方法を具体的に定めたか
- [ ] 利用目的を具体的に限定したか
- [ ] 不正競争防止法上の限定提供データとしての管理措置(アクセス制限等)を講じたか
- [ ] 第三者への再提供・開示の禁止を定めたか
- [ ] 派生データ(加工・分析結果)の権利帰属を明確にしたか
- [ ] データ品質の保証の有無及び範囲を明記したか
- [ ] 提供対価の算定方法(固定・従量・レベニューシェア)を定めたか
- [ ] 第三者の権利を侵害することが判明した場合の対応(通知・提供停止・代替措置)を定めたか
- [ ] 本データに個人データが含まれる場合の第三者提供規制への対応を確認したか
- [ ] 契約終了時のデータ返還・消去義務を定めたか