法務DDで対象会社に提出を求める資料の一覧表です。定款、株主名簿、重要契約、訴訟、許認可、労務関係を分野別に整理しています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
法務デューデリジェンス資料依頼リスト
第1部: 書式本文
【対象会社名】御中
【買収側名称】は、貴社の株式又は事業の取得を検討するにあたり、対象会社の法的リスクを把握するための法務デュー・ディリジェンス(以下「法務DD」という。)を実施いたします。つきましては、下記記載の資料をご準備のうえ、【提出期限】までに【提出方法(バーチャルデータルーム名等)】によりご提出くださいますようお願い申し上げます。
1. 会社の基本情報・機関設計に関する資料 - 現行定款及び過去【3】年間の定款変更履歴 - 商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書) - 株主総会議事録(過去【3】年分) - 取締役会議事録(過去【3】年分、設置していない場合は稟議書等の意思決定記録) - 組織図及び主要な社内規程一覧(取締役会規程、稟議規程等)
2. 株式・株主に関する資料 - 株主名簿(直近時点及び過去の異動履歴が分かるもの) - 新株予約権・ストックオプションの発行状況及び行使条件が分かる資料 - 種類株式を発行している場合、その内容及び発行に関する契約書 - 株式の担保設定・質権設定の有無が分かる資料 - 名義株・実質株主の有無に関する確認資料
3. 重要契約に関する資料 - 主要取引先との基本契約書及び個別契約書(直近取引額上位【10】社分) - 継続的な業務委託契約、ライセンス契約、フランチャイズ契約 - 借入契約書及び担保設定契約書(金融機関からの借入がある場合) - チェンジ・オブ・コントロール条項(支配権変動条項)を含む契約の一覧 - 賃貸借契約書(本社・営業所・工場等)
4. 知的財産に関する資料 - 保有する特許権・商標権・意匠権の一覧(出願中を含む) - 第三者からのライセンス許諾契約及び第三者へのライセンス供与契約 - 知的財産権に関する係争・警告状受領の有無が分かる資料
5. 訴訟・紛争に関する資料 - 過去【5】年間に提起された、又は提起した訴訟・仲裁の一覧及び関連書類 - 係争中の紛争の内容、請求額、進行状況が分かる資料 - 行政庁からの是正勧告、行政指導、行政処分の有無が分かる資料
6. 許認可・コンプライアンスに関する資料 - 事業遂行に必要な許認可の一覧及び有効期限が分かる資料 - 独占禁止法、下請法その他業法に関する社内調査・違反歴の有無 - 反社会的勢力との関係の有無に関する確認資料(誓約書等) - 内部通報制度の運用状況が分かる資料
7. 労務関係の全社的資料(概要) - 従業員数の推移及び雇用形態別の内訳が分かる資料 - 労働組合の有無及び労使協定の締結状況の一覧 ※賃金台帳、36協定、未払残業等の詳細な人事労務資料は、別途「人事労務デューデリジェンス資料依頼リスト」により依頼する。
以上
記載要領
- 提出期限及び提出方法(バーチャルデータルーム、電子メール等)を冒頭で明確にする。
- 資料の対象期間(過去何年分か)を項目ごとに具体的に指定し、対象会社の準備負担と網羅性のバランスを取る。
- 重要契約は件数上限を設けることで、初期段階での網羅的な提出負担を軽減しつつ重要度の高いものから優先的に確認する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 買収側(依頼者)向けの修正
A-1. 開示不足時のフォローアップ質問事項の追加
追加条文例:「提出資料に不足又は不明点がある場合、買収側は【期限】までに質問事項を対象会社に送付し、対象会社は【期限】以内に書面又は口頭で回答する。」 一言解説: 一度の資料提出で全ての疑問点が解消されることは少ないため、追加質問のやり取りをあらかじめ手続化しておくことで法務DDの遅延を防ぐ修正である。
A-2. 上場会社を対象とする場合の開示資料の追加
追加条文例:「対象会社が金融商品取引法上の開示義務を負う場合、有価証券報告書、内部統制報告書及び直近の適時開示資料を追加で提出すること。」 一言解説: 対象会社が上場会社である場合、金融商品取引法に基づく開示書類には未公表の重要事実が含まれ得るため、法務DDにおいても確認対象に加える修正である。
B. 対象会社(提出者)向けの修正
B-1. 秘密性の高い資料の閲覧限定
修正後:「訴訟に関する資料のうち、相手方との和解内容など特に秘密性の高い資料については、バーチャルデータルームでの一般閲覧に代えて、対象会社の事務所における限定的な閲覧に切り替えることができる。」 一言解説: 訴訟の和解内容等は取引先との関係上開示範囲を絞りたい場合があるため、閲覧方法を限定できる余地を残す修正である。
B-2. 提出資料の目的外利用禁止の明記
追加条文例:「本資料依頼への対応として開示した資料の利用は本取引の実行可否の検討に限定されるものとし、他の事業活動や第三者との交渉における参照には供しないものとする。」 一言解説: 法務DDで開示する資料には重要な営業秘密が含まれるため、提出者側から目的外利用の禁止を明記しておく修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、株式譲渡、事業譲渡、合併等のM&A取引において、買収側が対象会社の法的リスクを網羅的に把握するために資料提出を求める場面で用いる。契約書ではなく資料の一覧表であるため、これ自体に法的拘束力を持たせる必要はないが、秘密保持に関する事項は別途締結済みの秘密保持契約に基づき運用する必要がある。小規模な資産の個別売買のように、会社そのものの法的リスクを包括的に承継しない取引では、本書式のような網羅的な資料依頼は過剰であり、必要な資料に絞った簡易な確認で足りる。
根拠法令 株主名簿、定款、株主総会議事録及び取締役会議事録は会社法第121条、第31条、第318条及び第371条にそれぞれ備置き・閲覧に関する規定があり、法務DDにおいてもこれらの原本又は写しの提出を求めることが基本となる。対象会社が金融商品取引法上の開示義務を負う会社である場合、有価証券報告書等の継続開示書類(金融商品取引法第24条)も重要な確認資料となる。株式の譲渡制限や種類株式の内容は会社法第107条及び第108条に関わるため、定款及び株主名簿の確認と併せて権利関係を精査する必要がある。契約上のチェンジ・オブ・コントロール条項の有無は、対象会社を吸収合併方式又は株式取得方式のいずれで取得するかにより実務上の重要性が変わる点にも留意する。
実務でよくある失敗と対策 第一に、資料の対象期間を指定せずに依頼した結果、対象会社から古い資料まで大量に提出され、確認作業が非効率になる失敗がある。各項目に対象期間を明記することが対策となる。第二に、チェンジ・オブ・コントロール条項の確認を怠り、取引実行後に主要取引先から契約解除を通知される失敗がある。第3項のように当該条項を含む契約の一覧提出を明示的に求めることが対策となる。第三に、訴訟・紛争資料の提出範囲を「係争中のもの」に限定し、既に和解済みだが継続的な支払義務を負う事案を見落とす失敗がある。第5項のように過去の提起分も含めて依頼することが対策となる。何をどこまで依頼すべきかは取引の類型や対象会社の業種によって異なるため、リストの網羅性に不安がある場合は弁護士等の専門家に事前レビューを依頼するとよい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 提出期限及び提出方法(データルーム等)を明記したか
- [ ] 定款・株主名簿・議事録の対象期間を具体的に指定したか
- [ ] 種類株式・新株予約権の有無を確認する項目を含めたか
- [ ] 重要契約のうちチェンジ・オブ・コントロール条項の有無を確認する項目を含めたか
- [ ] 知的財産権の一覧及び係争の有無を確認する項目を含めたか
- [ ] 訴訟・紛争は係争中のものに限定せず過去分も対象としたか
- [ ] 許認可の有効期限及び業法違反歴の確認項目を含めたか
- [ ] 反社会的勢力との関係の有無を確認する項目を含めたか
- [ ] 対象会社が上場会社の場合、金融商品取引法上の開示書類を追加したか
- [ ] 財務DD・人事労務DDのリストとの重複・役割分担を整理したか
- [ ] 提出資料の目的外利用禁止について秘密保持契約との整合を確認したか