電子書籍ストアや配信サービス向けに出版権を設定する契約書。平成26年改正著作権法第79条第1項の公衆送信型出版権に対応します。

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電子出版権設定契約書

第1部: 書式本文

【著者名】(以下「甲」という。)と【電子書籍事業者名】(以下「乙」という。)とは、甲の著作に係る下記著作物(以下「本著作物」という。)につき、電子出版権の設定に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

記 著作物名: 【著作物名】 著作物の内容: 【概要】

第1条(目的) 本契約は、著作権法第79条第1項に基づき、甲が本著作物について乙のために電子出版権(公衆送信の方法により本著作物を利用する権利を含む出版権)を設定することを目的とする。

第2条(電子出版権の設定範囲) 1. 甲は乙に対し、本著作物を電磁的記録媒体に記録し、又は公衆送信(自動公衆送信の場合の送信可能化を含む。)を行う方法により電子書籍として複製・頒布する権利を設定する。 2. 前項の権利は、【EPUB形式/PDF形式/その他指定フォーマット】による配信に限定し、紙媒体としての出版権を含まない。 3. 甲は、本著作物の紙媒体による出版権を第三者(甲自身を含む。)に対して別途設定又は許諾することを妨げられない。

第3条(存続期間) 1. 本契約に基づく電子出版権の存続期間は、本契約締結日から【3】年間とする。 2. 期間満了の【3】か月前までにいずれの当事者からも書面による終了の申出がない場合、本契約は同一条件でさらに【1】年間更新されるものとし、以後も同様とする。

第4条(原稿の引渡し及び校正) 1. 甲は、本契約締結後【30】日以内に、電子化に必要な原稿データを乙に引き渡すものとする。 2. 乙は、引渡しを受けた原稿につき校正を行い、甲の確認を得たうえで配信用データを確定する。

第5条(配信開始及び継続的出版義務) 1. 乙は、配信用データ確定後【90】日以内に本著作物の公衆送信による頒布を開始しなければならない。 2. 乙は、著作権法第81条の趣旨に鑑み、本著作物を継続して配信し、慣行に従い電子出版のための取次を行う義務を負う。乙が正当な理由なく配信を中断し、甲の催告後【60】日以内に是正しないときは、甲は本契約を解除できる。

第6条(対価) 1. 乙は甲に対し、本著作物の配信に基づく販売額の【10】パーセントに相当する印税を、電子出版権の対価として支払う。 2. 支払いは毎月末日締め、翌月末日払いとし、乙は甲に対し販売部数・金額を明示した報告書を交付する。

第7条(表示義務等) 乙は、本著作物の配信に際し、甲の氏名又は名称を著作者として表示するものとし、甲の同意なく本著作物の内容を改変してはならない。

第8条(電子出版権の消滅登録等) 本契約が終了したときは、乙は速やかに配信を停止し、電子出版権の設定登録がある場合はその抹消登録手続に協力するものとする。

第9条(再許諾及び譲渡禁止) 乙は、甲の事前の書面による承諾なくして、本契約に基づく電子出版権を第三者に再許諾し、又は本契約上の地位を譲渡してはならない。

第10条(契約解除) 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、相当期間を定めた催告後も是正されない場合、本契約を解除できる。

第11条(協議事項) 本契約に定めのない事項及び疑義が生じた事項については、甲乙誠実に協議のうえ解決する。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 電子書籍事業者向け

A-1 第5条第2項の修正例 「乙は、配信開始後、少なくとも【毎年1回】以上、本著作物の販売促進のための施策(価格改定、プロモーション企画等)を実施するものとし、単に配信を継続するのみで前項の義務を尽くしたとみなされない。」 一言解説: 継続出版義務(著作権法81条)は配信の物理的継続だけでなく実質的な販売努力を含むと解されうるため、事業者側は義務の内容を具体化しておくことで後の紛争を避けやすくなる。

A-2 第2条第2項の修正例 「本条第1項の権利は、乙が指定する複数のストア及びプラットフォームにおける配信を含み、将来新たに普及するフォーマットへの変換及び配信を含むものとする。」 一言解説: フォーマットを個別列挙すると新方式への対応のたびに再契約が必要になるため、事業者は将来技術を包含する文言を入れておくと運用が楽になる。

B節: 著者・原権利者向け

B-1 第3条第2項の修正例 「本契約の更新は、甲による書面での明示的な同意がある場合に限り効力を生じるものとし、自動更新条項は適用しない。」 一言解説: 自動更新は事業者に有利に働きがちであり、著者側は更新のたびに条件見直しの機会を確保する方が権利保護に資する。

B-2 第6条第1項の修正例 「印税率は、本著作物の配信形態(単品販売/サブスクリプション読み放題)に応じて別表のとおり区分して定めるものとする。」 一言解説: 読み放題型サービスでは従量課金と異なる収益構造になるため、単一の印税率のみを定めると著者の取り分が不明確になりやすい。

C節: 紙版との併存対応

C-1 第2条第3項の修正例 「甲が本著作物の紙媒体出版権を第三者に設定する場合、乙は当該紙媒体出版のタイミングに合わせて電子版の販売施策を調整するため、甲は事前に当該紙媒体出版の予定時期を乙に通知するものとする。」 一言解説: 紙版と電子版が別主体で並行する場合、販売時期の連携が取れないと販促効果が薄れるため、情報共有条項を設けておくと双方に有益である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、平成26年著作権法改正により新設された著作権法第79条第1項の「公衆送信の方法により著作物を利用する権利」を対象とする電子出版権の設定契約に用いる。従来の出版権(紙媒体の複製・頒布)とは別個の権利であるため、紙媒体の出版契約とは条文を書き分ける必要がある。本書式は、電子書籍ストアや配信プラットフォームを運営する事業者が著者から直接電子出版権の設定を受ける場面を想定しており、紙版の出版社が別に存在する場合や、著者自ら電子出版を行う場合には利用を避けるべきである。

実務上よくある失敗の一つ目は、電子出版権の範囲をフォーマットや配信方式で限定せずに設定してしまい、後日想定外の媒体(音声読み上げ配信等)にまで権利が及ぶかどうかで紛争になるケースである。第2条第2項のようにフォーマットを具体的に特定し、将来のフォーマット変更に対応する文言を入れておくことが対策となる。二つ目は、著作権法第81条が定める出版権者の継続出版義務を軽視し、配信を事実上放置してしまうケースである。著者側からすれば配信停止は重大な不利益であるため、第5条第2項のように是正のための催告期間と解除条件を明記しておくべきである。三つ目は、電子出版権が著作権法上の物権的な権利であることから、消滅時の登録抹消手続を怠り、名目上の権利者が乙のまま残ってしまうケースであり、第8条のように契約終了時の協力義務を明記しておく必要がある。

なお、電子出版権の設定登録の要否や対抗要件の具体的な扱い、印税率の相場観については取引の個別事情によって大きく異なるため、契約締結前に個別事案について専門家に確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 本著作物の著作権者が甲本人であること(共著・職務著作でないか)を確認したか
  • [ ] 電子出版権の範囲を配信フォーマット・プラットフォーム単位で具体的に特定したか
  • [ ] 紙媒体の出版権が別途存在する場合、その出版社との権利調整を確認したか
  • [ ] 存続期間及び更新条件(自動更新の要否)を当事者の立場に応じて設計したか
  • [ ] 印税率・支払時期・報告書の様式を明記したか
  • [ ] 著作権法第81条に基づく継続出版義務の履行方法と違反時の解除条件を定めたか
  • [ ] 配信開始期限と原稿引渡し期限を具体的な日数で定めたか
  • [ ] 著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権)への配慮条項を設けたか
  • [ ] 契約終了時の配信停止及び設定登録抹消への協力義務を定めたか
  • [ ] 再許諾・地位譲渡の可否とその条件を明記したか