電話でのやり取りを記録する様式です。日時、相手方、要件、回答内容、折返しの要否を残し、言った言わないの紛争を防ぎます。必要事項を埋めるだけで短時間に整えられる書式です。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
電話応対記録票
第1部: 書式本文
本様式は、顧客・取引先その他外部からの電話、又は自社から発信した電話でのやり取りの内容を記録するための書式である。用件の正確な引き継ぎのほか、後日「言った・言わない」の争いが生じた際の記録として、また電話勧誘販売等の規制対象となる架電の適正性を示す資料として用いることを想定する。
A. 記録項目一覧
- 【受付番号】
- 【着信/発信の別】
- 【応対日時】(開始時刻・終了時刻)
- 【応対者氏名】及び【所属部署】
- 【相手方氏名】(判明している範囲。法人の場合は会社名・部署名も記載)
- 【相手方連絡先】(電話番号、判明していれば住所)
- 【用件の種別】(問合せ/苦情/勧誘/契約手続/その他)
- 【通話内容の要旨】(相手方の発言内容を中心に記載)
- 【応対者の回答内容】
- 【録音の有無】(録音している場合はその保存場所・番号)
- 【折返しの要否】及び【折返し予定日時】
- 【担当引継ぎの要否】(引継ぎ先部署・担当者)
- 【対応完了の有無】(未完了の場合は次回対応予定)
- 【特記事項】(相手方の様子、強い口調があった場合の状況等)
B. 記載例(問合せ対応)
- 【受付番号】:【2026-0810-012】/【着信/発信の別】:【着信】
- 【応対日時】:【2026年8月10日 10:15〜10:22】
- 【応対者氏名】:【カスタマーサポート課 山本〇〇】
- 【相手方氏名】:【個人客・鈴木様(会員番号〇〇〇〇)】
- 【用件の種別】:【問合せ(商品の使用方法)】
- 【通話内容の要旨】:「購入した〇〇の使用方法について、取扱説明書のどの部分を参照すればよいか分からないとの問合せ。」
- 【応対者の回答内容】:「取扱説明書〇ページの記載箇所を案内し、併せてウェブサイトの動画マニュアルのURLを案内した。」
- 【折返しの要否】:【不要(その場で解決)】
C. 記載例(電話勧誘販売)
- 【着信/発信の別】:【発信(勧誘)】
- 【通話内容の要旨】:「〇〇サービスについて説明し、契約の意向を確認したところ、相手方より『検討したい、いったん電話を切ってほしい』との申出があった。」
- 【応対者の回答内容】:「相手方の意向を確認し、その場での契約締結の勧誘は行わず、資料送付の希望有無を確認のうえ通話を終了した。」
- 【特記事項】:「相手方より契約締結の意思がない旨の明確な表明があったため、再勧誘は行っていない。」
D. 記録・保存に関する定め
- 応対者は、通話終了後【当日中】に本記録票を作成する。
- 苦情又はクレームに該当する内容を含む場合は、別途定める苦情対応記録票に連携して記録する。
- 電話勧誘販売に該当する架電については、特定商取引法上の記録保存の観点から、本記録票を【3年間】保存する。
- 相手方が契約締結の意思がない旨を明確に表明した場合は、その旨を特記事項欄に必ず記載し、再勧誘の可否判断に用いる。
- 通話を録音する場合、応対者は通話の冒頭で「品質向上のため録音させていただきます」等の告知を行い、告知の有無を記録票の【録音の有無】欄に付記する。
- 個人情報を含む記録票へのアクセス権限は、対応部署の担当者及びその管理者に限定し、社外への提供は法令に基づく場合又は本人の同意がある場合に限る。
E. 補足条項例
- 「本記録票の記載内容は、応対者が聴取した内容を要約したものであり、通話の一言一句を正確に反映するものではない。詳細な確認が必要な場合は録音データを参照する。」
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 応対者側の書き換えパターン
応対者(受電・架電を行う自社担当者)の立場では、A項8号「通話内容の要旨」欄について、相手方の発言をできる限り原文に近い形で記載する運用に修正する。要約しすぎると、後日、不当勧誘や説明義務違反の有無が争われた際に、実際のやり取りを再現できなくなるためである。また、電話勧誘販売に従事する部署では、C項の記載例のように「契約締結の意思の有無」及び「再勧誘の可否」を必ず記録する項目を追加する修正を行う。
B節: 相手方(顧客・取引先)からの申出を受ける場合の書き換えパターン
相手方からの苦情や不当勧誘の指摘を含む電話の場合は、A項14号「特記事項」欄に「【相手方は当社の説明に不満を示し、契約の取消しを求める意向を示した】」のように、相手方の主張・要求を具体的に記載する修正を行う。事後に消費者契約法上の取消し(不実告知・断定的判断の提供等)の主張を受けた際、当時のやり取りを正確に再現できるようにする趣旨である。この場合、B項の折返し予定欄を必須項目とし、対応の遅延が生じないようにする。
場面バリエーション: 高齢者・判断能力に懸念がある相手方への架電の場合
相手方が高齢である等、判断能力への配慮が求められる場面では、A項14号に「【説明の理解度を確認しながらゆっくりと説明した】」「【家族等の同席の有無を確認した】」等の対応状況を記載する運用を追加する。特定商取引法上の適合性原則(相手方の判断力等に照らして不適当な勧誘の禁止)に関連する対応状況を記録上明確にする趣旨である。
場面バリエーション: 社内向け引継ぎのみを目的とする場合
社外に開示する予定がなく、単に部署内の引継ぎのみを目的とする場合は、A項の記載項目のうち法的な証拠化を意識した詳細記載(相手方の発言の逐語的記録等)を簡略化し、用件と対応状況の要点のみを記載する運用に修正して差し支えない。ただし、苦情や勧誘に関する内容が含まれることが判明した時点で、詳細記載の様式に切り替える運用ルールをあらかじめ定めておくことが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本様式は、顧客・取引先等との電話でのやり取りを日常的に記録する目的、及び電話勧誘販売等の規制対象となる架電について法定の記録保存義務を履行する目的で使用する。単なる社内連絡や私的な会話には用いる必要がなく、また、通話内容を録音する場合は、通信の秘密や個人情報保護の観点から、相手方への告知の要否・方法についてあらかじめ社内で方針を定めておく必要がある。
消費者契約法は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をする際に、重要事項について事実と異なることを告げる行為(不実告知)や、将来における変動が不確実な事項について断定的判断を提供する行為等があった場合に、消費者が意思表示を取り消すことができる旨を定めている(同法第4条)。電話でのやり取りは対面と異なり客観的な記録が残りにくいため、本様式による通話内容の記録は、不当勧誘の有無が争われた際に事業者側・消費者側双方にとって重要な証拠となる。また、特定商取引法は電話勧誘販売について、勧誘に先立ち事業者名等を告げる義務(同法第16条)、契約締結の意思がない旨を表示した者に対する再勧誘の禁止(同法第17条)等を定めており、これらの遵守状況を記録上示すことが望ましい。
よくある失敗として、第一に、通話内容を「特に問題なし」等と簡潔に記載しすぎて、後日、実際のやり取りの詳細が分からなくなる失敗がある。A項8号のように相手方の発言を具体的に記載することで対策する。第二に、相手方が契約の意思がない旨を伝えたにもかかわらずその旨を記録に残さず、再勧誘の可否を後任者が判断できない失敗がある。C項の記載例及びD項4号のように、意思表示の有無を明記することで対策する。第三に、折返しの要否や予定日時を記録せず、対応漏れが発生する失敗がある。A項11号を必須記載事項とし、対応状況を管理することで対策する。第四に、録音していることを相手方に告げずに録音を継続し、後日その録音の証拠としての適切性や相手方との信頼関係が問題となる失敗がある。D項5号のように告知の有無を記録に残すことで対策する。不当勧誘の該当性や再勧誘の可否判断に迷う場合は、個別の事案について弁護士等の専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 応対日時(開始・終了時刻)を正確に記載したか
- [ ] 応対者氏名及び相手方の氏名・連絡先を記載したか
- [ ] 通話内容の要旨を要約しすぎずに具体的に記載したか
- [ ] 折返しの要否及び予定日時を記載したか
- [ ] 苦情に該当する内容が含まれる場合、苦情対応記録票への連携を行ったか
- [ ] 電話勧誘販売に該当する場合、事業者名等の告知の有無を記録したか
- [ ] 相手方が契約締結の意思がない旨を表明した場合、その旨を明記したか
- [ ] 録音を行う場合、告知の要否・方法について社内方針に沿って対応したか
- [ ] 高齢者等への配慮が必要な場合、理解度確認等の対応状況を記載したか
- [ ] 記録の保存期間を用件の性質に応じて設定したか
- [ ] 個人情報を含む記録票へのアクセス権限を限定したか
- [ ] 録音データを参照する必要がある場合の参照方法を明記したか