土地取引に先立つ土壌調査の実施条件を定める合意書です。調査範囲、費用負担、結果の開示先、汚染判明時の協議を規定します。記載例と注記を添えており、初めての担当者でも作成できます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
土壌汚染状況調査に関する合意書
第1部: 書式本文
【土地所有者】(以下「甲」という。)と【調査依頼者】(以下「乙」という。)は、下記対象土地の土壌汚染状況調査(以下「本調査」という。)の実施に関し、次のとおり合意する(以下「本合意書」という。)。
第1条(対象土地) 本合意書の対象となる土地は、【対象土地の表示(所在・地番・地目・地積)】(以下「対象土地」という。)とする。
第2条(目的) 本調査は、対象土地の売買契約締結の判断材料とするため、対象土地における特定有害物質による土壌汚染の有無及びその状況を把握することを目的とする。
第3条(調査範囲及び方法) 1. 本調査は、【指定調査機関の名称】(土壌汚染対策法第3条第1項ただし書に規定する指定調査機関)に委託し、次の範囲において実施する。 (1) 資料等調査(地歴調査) (2) 土壌ガス調査及び表層土壌調査【対象範囲・区画数】 (3) 必要と認められる場合のボーリング調査 2. 調査対象物質は、土壌汚染対策法施行令別表第一に定める特定有害物質のうち【対象物質群(第一種・第二種・第三種の別)】とする。
第4条(実施時期) 本調査は、本合意書締結後【〇】日以内に着手し、【年月日】までに完了するよう努めるものとする。
第5条(立入り及び協力) 甲は、乙及び乙が委託する調査機関が対象土地に立ち入り、必要な調査を行うことを許諾し、施設の稼働状況その他調査に必要な資料の開示に協力する。
第6条(費用負担) 本調査に要する費用は、金【〇〇】円(消費税別)を上限とし、【乙が全額負担する/甲乙が別紙のとおり按分する】。追加調査が必要となった場合の費用負担は、その都度甲乙協議のうえ定める。
第7条(調査結果の報告及び開示) 1. 調査機関は、本調査完了後【〇】日以内に調査結果報告書(以下「本報告書」という。)を作成し、甲及び乙に交付する。 2. 甲及び乙は、本報告書を対象土地の売買交渉及び契約書作成の目的の範囲でのみ使用し、事前に相手方の書面による承諾を得ない限り第三者に開示しない。ただし、法令に基づく行政機関への届出・報告はこの限りでない。
第8条(汚染が判明した場合の協議) 1. 本報告書において土壌汚染対策法上の基準値を超える特定有害物質が検出された場合、甲及び乙は速やかに協議の場を設け、次の事項について取り決める。 (1) 追加調査の要否及び費用負担 (2) 都道府県知事等への区域指定に関する対応方針 (3) 売買契約の継続、条件変更又は解除の可否 2. 前項の協議が調わないときは、乙は本合意書を解除することができる。この場合、甲は既に受領した調査協力を理由に乙に金銭等を請求しない。
第9条(指定調査機関等の対応) 甲及び乙は、要措置区域又は形質変更時要届出区域の指定に該当するおそれがあると認めるときは、土壌汚染対策法第3条又は第4条に基づく届出・調査命令の対象となる可能性があることを相互に確認し、必要な行政対応について協議する。
第10条(秘密保持) 甲及び乙は、本調査の実施及び本報告書の内容に関して知り得た相手方の営業上・技術上の情報を、本合意書の目的以外に使用せず、第三者に漏洩しない。
第11条(有効期間) 本合意書は、締結日から本調査完了及び第8条の協議終了までの間、効力を有する。
第12条(準拠法及び管轄) 本合意書は日本法に準拠し、本合意書に関する紛争は【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上の合意を証するため、本合意書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。
【年月日】
甲(土地所有者) 【住所】【氏名又は名称】 印 乙(調査依頼者) 【住所】【氏名又は名称】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節:土地所有者(甲)の視点
土地所有者は、調査によって自己の資産価値が毀損される情報が生成されること、及び調査結果が第三者(将来の買主候補や行政)に流出することを最も警戒する。
Before(乙提示の原案・第7条2項): 「甲及び乙は、本報告書を第三者に開示しない。」
After(甲修正案): 「甲及び乙は、本報告書を対象土地の売買交渉の目的以外に使用せず、事前に甲の書面による承諾を得ない限り、乙は本報告書の全部又は一部を第三者(乙の親会社、融資金融機関を含む。)に開示してはならない。乙が開示を要する場合は、開示先に本条と同等の秘密保持義務を課すものとする。」 一言解説:開示先の範囲(融資金融機関、共同事業者等)を具体的に列挙させないと、実質的に無制限開示を許すことになりやすい。
また、費用負担についても、甲は原則として調査費用を負担しない旨を明記すべきである。
Before:「甲乙が別紙のとおり按分する」 After:「本調査に要する一切の費用は乙の負担とする。ただし、甲の故意又は重過失により調査が阻害され追加費用が生じた場合はこの限りでない。」
B節:調査依頼者(乙)の視点
調査依頼者(多くは買主候補)は、調査範囲が不十分なまま合意されることや、汚染判明時に協議のみで解除できない構成になることを警戒する。
Before(甲提示の原案・第8条2項): 「前項の協議が調わないときは、両者協議のうえ別途定める。」
After(乙修正案): 「前項の協議が【〇】日以内に調わないときは、乙は何らの催告を要せず本合意書を解除し、既払費用の精算のみをもって本件を終了することができる。この場合、甲は乙に対し違約金その他の金銭を請求しない。」 一言解説:協議未了時の帰結を曖昧にすると、汚染判明後も交渉に拘束され続けるリスクがある。解除権を明文化することが重要である。
さらに、乙は立入調査の実効性を確保するため、第5条に「甲が正当な理由なく立入りを拒否した場合、乙は本合意書を解除し、既払費用の返還を請求できる」旨を追記することが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面:土地の売買・賃貸借・開発事業に先立ち、当事者間で任意に土壌汚染の有無を確認したい場合に使用する。売買契約書の一部としてではなく、契約締結前の予備的合意として独立させる場面を想定している。
使ってはいけない場面:既に土壌汚染対策法第3条(有害物質使用特定施設の使用廃止時の調査義務)又は第4条(一定規模以上の土地の形質変更時の都道府県知事等による調査命令)に基づく法定調査義務が発生している場合、本合意書のみで行政上の届出・調査義務を代替することはできない。この場合は行政手続に関する専門的対応が別途必要となる。
根拠法令:土壌汚染対策法第3条・第4条・第5条(指定調査機関による調査、区域指定)、同法施行令別表第一(特定有害物質)、民法第521条以下(契約自由の原則)。土対法は私人間の任意調査実施義務を直接定めるものではないため、本合意書はあくまで民法上の契約として位置づけられる点に留意する。
よくある失敗と対策: 1. 調査範囲・対象物質を曖昧にしたまま合意し、後日「調査が不十分だった」との争いになる。→第3条で対象物質群・調査地点数を具体的に特定する。 2. 汚染判明時の帰結(解除・費用負担)を定めずに調査だけ先行させ、判明後の交渉が長期化する。→第8条のように協議期限と協議不調時の効果をあらかじめ定める。 3. 秘密保持の開示先範囲を定めず、想定外の第三者に情報が渡る。→第10条・第7条2項で開示先の限定と承諾手続を明記する。
なお、対象土地の履歴や周辺の施設状況によって必要な調査項目は大きく異なるため、個別の事案については弁護士・行政書士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象土地の所在・地番・地積が登記事項証明書と一致しているか確認したか
- [ ] 指定調査機関の名称・登録番号を記載したか
- [ ] 調査対象物質(特定有害物質)の範囲を具体的に特定したか
- [ ] 調査費用の上限額及び負担割合を明記したか
- [ ] 追加調査が必要となった場合の費用負担ルールを定めたか
- [ ] 調査結果の開示先・開示条件を具体的に限定したか
- [ ] 汚染判明時の協議期限と協議不調時の帰結(解除権等)を定めたか
- [ ] 立入調査を甲が拒否した場合の対応を定めたか
- [ ] 土壌汚染対策法上の届出・区域指定の可能性について甲乙で認識を共有したか
- [ ] 準拠法及び管轄裁判所を明記したか
- [ ] 記名押印欄の当事者表示(甲乙)に誤りがないか確認したか