販売店や仕入先にカルテル・談合等を行わない旨を誓約させる書式。独占禁止法の不当な取引制限や私的独占の禁止を踏まえ、競合他社と接触した際の報告手順も定めます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
独占禁止法遵守に関する誓約書
第1部: 書式本文
【会社名】(以下「会社」という)は、独占禁止法の遵守に関する社内方針を定め、【誓約者所属・氏名】(以下「本人」という)は、下記事項を誓約する。
第1条(目的) 本誓約書は、本人が販売店、仕入先その他の取引先との関係において、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)に違反する行為を行わないことを確認することを目的とする。
第2条(カルテル・入札談合の禁止) 本人は、競合他社との間で、価格、数量、販売先、入札における落札予定者その他の取引条件について取り決めを行わない。
第3条(競合他社との接触の制限) 本人は、業界団体の会合その他の場において競合他社の担当者と接触する場合、価格その他の競争上機微な情報の交換を行わない。
第4条(再販売価格の拘束の禁止) 本人は、販売店に対し、正当な理由なく販売価格を指定し、これを遵守させるための制裁を予告し、又は実施しない。
第5条(優越的地位の濫用の禁止) 本人は、取引上優越した地位にあることを利用して、取引の相手方に対し不当な不利益を与える取引条件の設定又は変更を行わない。
第6条(取引拒絶等の禁止) 本人は、正当な理由なく特定の事業者との取引を拒絶し、又は差別的な取引条件を設定しない。
第7条(接触事実の報告義務) 本人は、競合他社の担当者から取引条件に関する情報提供の申し出を受けた場合、これに応じることなく、直ちに法務担当部門又はコンプライアンス担当部門に報告する。
第8条(社内研修の受講) 本人は、会社が実施する独占禁止法遵守に関する研修を受講する。
第9条(違反時の措置) 本人が本誓約に違反した場合、会社は就業規則に基づく懲戒処分その他必要な措置を講じることができる。
第10条(定期点検への協力) 本人は、会社が実施する独占禁止法遵守状況に関する定期的な自主点検及びヒアリングに協力する。
以上、本誓約書の内容を確認し、下記に署名する。
【署名日】 【誓約者所属・氏名】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 法務担当の立場から
法務担当としては、違反行為が疑われる場合の社内相談窓口と、課徴金減免制度(リニエンシー)の適用を検討するための報告経路を明確にしておくことが望ましい。
修正例:「本人は、自らの行為又は自らが把握した事実が独占禁止法に違反するおそれがあると認識した場合、直ちに法務担当部門に報告し、公正取引委員会への課徴金減免申請の要否について会社の判断に従うものとする。」
一言解説:早期に社内で事実を把握できれば、課徴金減免制度の適用可能性が高まるため、報告経路の明確化は違反発覚時の対応コストを左右する重要な要素である。
B. 営業部門責任者の立場から
営業部門では価格交渉や販売店管理の現場で違反リスクが生じやすいため、価格に関する情報の取扱いに関する具体的な禁止行為を追加することが有効である。
修正例:「本人は、自社の見積価格、値引き幅又は販売計画を、競合他社の担当者に対して開示し、又は競合他社からこれらの情報を受領しない。」
一言解説:抽象的な「カルテルの禁止」だけでなく、現場で日常的に接する価格情報の授受を具体的に禁止することで、誓約の実効性が高まる。
C. コンプライアンス担当の立場から
コンプライアンス担当としては、業界団体の会合参加時のルール(議事録の作成、弁護士の同席等)を誓約書と連動させることが望ましい。
修正例:「本人は、業界団体の会合に出席する場合、事前に会社の定める参加ルールを確認し、会合の議題及び発言内容を記録して報告する。」
一言解説:業界団体の会合は競合他社との接触機会であるため、事前ルールの明示と事後記録の徹底が予防策として有効である。
コンプライアンス担当としては、社内調査で違反の端緒をつかんだ場合の証拠保全手順についても、法務担当と連携した対応フローを定めておくことが望ましい。
修正例:「本人は、独占禁止法違反の疑いに関する社内調査が開始された場合、関連する電子データ及び書類を破棄せず、法務担当部門の指示に従って保全に協力する。」
一言解説:調査開始後の証拠破棄は事態を悪化させる要因となるため、平時から証拠保全への協力義務を明確にしておくことが望ましい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、法務担当、営業部門責任者、調達担当者等に対し、競合他社との不当な取引制限(カルテル・談合)及び取引先に対する不公正な取引方法を行わない旨を誓約させる場面で使用する。既に独占禁止法違反の疑いで調査を受けている状況での証拠隠滅を目的とした使用は許されない。
根拠法令としては、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)第2条第6項が不当な取引制限を定義し、第3条がその禁止を規定している。また、同法第2条第9項及び一般指定は、優越的地位の濫用、再販売価格の拘束、取引拒絶等の不公正な取引方法を規定しており、違反した場合には排除措置命令や課徴金納付命令の対象となるほか、私的独占及びカルテルについては刑事罰の対象ともなり得る。課徴金の額は違反行為の類型や違反期間、業種によって算定率が異なるため、社内での予防が結果として大きなコスト削減につながる点も認識しておく必要がある。
実務でよくある失敗として、第一に、業界団体の懇親会等の非公式な場での雑談を通じて価格情報が共有され、それが積み重なって黙示のカルテルと評価されるケースがある。公式・非公式を問わず競合他社との接触時のルールを明確にすることが対策となる。第二に、販売店の値引き販売に対し出荷停止をちらつかせて価格を維持させ、再販売価格の拘束と評価されるケースがあり、価格に関する要請と出荷調整を切り離して運用する必要がある。第三に、取引先からの理不尽な要求に応じてしまい、結果として自社が優越的地位の濫用の当事者となる場合と、逆に自社が取引先に不利益を強いる場合の双方が起こり得るため、双方向のリスクを誓約書上で意識させることが望ましい。
第四に、独占禁止法違反の疑いが生じた際に、証拠となる電子メールや資料を担当者が誤って削除してしまい、後の調査対応や課徴金減免申請の判断に支障が生じるケースがあり、調査開始後の証拠保全手順をあらかじめ定めておくことが対策となる。
独占禁止法の適用範囲や課徴金減免制度の利用可否は個別の事実関係により異なるため、実際の対応にあたっては弁護士等の専門家に個別に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] カルテル・入札談合の禁止を具体的に明記したか
- [ ] 競合他社との接触時の情報交換禁止を明記したか
- [ ] 再販売価格の拘束の禁止を明記したか
- [ ] 優越的地位の濫用の禁止を明記したか
- [ ] 取引拒絶・差別的取扱いの禁止を明記したか
- [ ] 競合他社からの接触を受けた場合の報告義務を定めたか
- [ ] 業界団体会合への参加ルールを定めたか
- [ ] 独占禁止法研修の受講義務を定めたか
- [ ] 課徴金減免制度に関する社内報告経路を整理したか
- [ ] 違反時の懲戒処分等の措置を明記したか
- [ ] 調査開始後の証拠保全への協力義務を明記したか
- [ ] 誓約対象者の範囲(営業・調達・法務等)を明確にしたか