ドメイン名の登録者名義を移転する契約書。レジストラでの移転手続と対価の支払時期を定め、不正競争防止法第2条第1項第19号の規制にも留意する。

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ドメイン名譲渡契約書

第1部: 書式本文

〇〇〇〇(以下「甲」という。譲渡人)と〇〇〇〇(以下「乙」という。譲受人)とは、甲が登録者となっているドメイン名「【 】」(以下「本ドメイン名」という。)の譲渡について、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(譲渡の合意) 甲は、本契約に定める条件に従い、本ドメイン名の登録者名義を乙に移転し、乙はこれを譲り受ける。

第2条(本ドメイン名の内容) 本ドメイン名の登録情報(登録レジストリ、レジストラ、有効期限及びネームサーバーの設定を含む。)は、本契約締結日時点において別紙「登録情報一覧」に記載のとおりであることを甲は乙に表明する。

第3条(譲渡対価) 乙は、甲に対し、本ドメイン名の譲渡対価として金【 】円(消費税別)を支払う。

第4条(対価の支払時期) 1. 乙は、本契約締結日から【 】日以内に、譲渡対価の全部又は別紙に定める割合の着手金を甲に支払う。 2. 乙は、第7条に定めるレジストラでの移転手続が完了したことを確認した後、残金を甲に支払う。 3. 甲乙間で対価の支払方法につき別段の合意をした場合はその定めによる。

第5条(甲の表明保証) 甲は、乙に対し、本契約締結日において次の各号の事実を表明し、保証する。 一 甲が本ドメイン名の正当な登録者であり、第三者との間で本ドメイン名の帰属又は使用に関する紛争が存在しないこと 二 本ドメイン名について第三者の商標権、氏名権その他の権利を侵害する態様で登録又は使用していないこと 三 本ドメイン名につき第三者に対して質権の設定その他の担保権の設定がなされていないこと

第6条(不正の目的による取得の否認) 甲及び乙は、本契約に基づく本ドメイン名の移転が、図利加害目的その他の不正の目的をもってなされるものではなく、不正競争防止法第2条第1項第19号にいう不正の目的による取得又は保有に該当しないことを相互に確認する。

第7条(移転手続) 1. 甲は、本契約締結後速やかに、本ドメイン名の管理を委託しているレジストラ又は指定事業者に対し、本ドメイン名の移転に必要な認証コード(Auth Code)の発行その他移転手続に必要な情報を乙に提供する。 2. 乙は、前項の情報を用いて、レジストラの定める移転手続を行い、本ドメイン名の登録者名義を乙又は乙の指定する者に変更する。 3. 移転手続に要するレジストラの手数料は、別紙に定めるところに従い甲乙間で分担する。

第8条(付随するウェブサイト・メールアドレスの取扱い) 本契約は、本ドメイン名に紐付くウェブサイトのコンテンツ、著作権及び本ドメイン名を用いたメールアドレスの取扱いを含まない。これらを併せて移転する場合、甲乙は別途その内容を定めた合意書を締結する。

第9条(移転後の甲による使用禁止) 甲は、本ドメイン名の移転完了後、本ドメイン名及びこれと類似する名称を、乙の書面による承諾なく自ら登録又は使用してはならない。

第10条(危険負担) 本ドメイン名の移転完了までの間にレジストリ又はレジストラの都合により本ドメイン名が失効し、又は第三者に不正に移転された場合の取扱いについては、甲乙協議のうえ定める。

第11条(契約不適合責任) 甲が第5条の表明保証に違反し、これにより乙に損害が生じた場合、甲は乙に対しその損害を賠償する。ただし、甲の賠償責任の総額は、乙が甲に支払った譲渡対価の総額を上限とする。

第12条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の締結及び履行の過程で知り得た相手方の情報を、本契約の目的以外に利用し、又は第三者に開示してはならない。

第13条(合意管轄) 本契約に関して甲乙間に生じた紛争は、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 譲渡人向けの修正

A-1. 移転完了前の対価受領の確保

修正後:「乙は、第7条に定める移転手続の申請と同時に、譲渡対価の全額をエスクローサービス又は甲の指定口座に預託し、移転手続の完了をもって甲への支払いが実行されるものとする。」 一言解説: 認証コードを先に渡してしまうと譲渡人が対価を回収できないリスクがあるため、預託の仕組みで支払確保を図る修正である。

A-2. 表明保証の限定

修正後:「甲の第5条の表明保証は本契約締結日時点における甲の認識の限度で真実であることを保証するものであり、甲が知り得なかった第三者の権利侵害の主張については責任を負わない。」 一言解説: 商標権侵害の有無などを完全に把握することが難しい譲渡人の立場から、保証の範囲を認識ベースに限定する修正である。

B. 譲受人向けの修正

B-1. 認証コード提供と対価支払いの同時履行化

修正後:「乙は、甲から認証コードの提供を受けたことを確認した後にのみ、着手金を甲に支払う義務を負う。甲が認証コードを提供しない場合、乙は支払いを留保することができる。」 一言解説: 対価を先払いしたのに移転手続に必要な情報が提供されないリスクを避ける、譲受人側の典型的な防御条項である。

B-2. 事前の第三者権利調査の実施

追加条文例:「甲は、本契約締結に先立ち、乙が本ドメイン名について商標データベース等を用いて実施する第三者権利の調査に必要な情報を提供し、これに協力する。」 一言解説: 移転後に第三者から不正競争防止法違反や商標権侵害を主張されるリスクを事前に低減するための調査協力義務である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、既に登録されているドメイン名の登録者名義のみを移転する場面に用いる。ドメイン名に紐付くウェブサイトのコンテンツの著作権、会員データ、システム一式をまとめて譲渡する場合には、ドメイン名の移転条項だけでは足りず、事業譲渡契約書の形式で著作権・データの承継や会社法上の手続を含めて整理する必要がある。

根拠法令 ドメイン名の登録者名義の移転自体は、レジストリ及びレジストラが定める規約に基づく手続であり、私法上はドメイン名の使用権を目的とする契約上の地位の移転として整理される。不正競争防止法第2条第1項第19号は、不正の利益を得る目的又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、保有し、又はそのドメイン名を使用する行為を不正競争と定めている。したがって、既に第三者の著名な商標等と同一・類似のドメイン名を保有している者からこれを譲り受ける場合、譲受人自身についても不正の目的の有無が問題となり得るため、第6条のような確認条項を設けることが望ましい。また、対価と認証コードの授受の順序については、民法上の同時履行の抗弁(民法第533条)の考え方を参考に、双方の履行時期を明確にしておくことが紛争予防につながる。

実務でよくある失敗と対策 第一に、譲渡人が認証コードを先に譲受人へ渡してしまい、譲受人が移転手続を完了させた後に対価を支払わない失敗がある。第4条及びA-1のように、支払時期と移転完了の順序をエスクロー等の仕組みで明確化することが対策となる。第二に、譲渡対象がドメイン名の名義のみなのか、紐付くウェブサイトやメールアカウントを含むのかがあいまいで、移転後にコンテンツやメールが使用できなくなるトラブルが生じる失敗がある。第8条のように対象範囲を明記することが対策となる。第三に、譲受人が第三者の著名な商標と類似するドメイン名を安易に譲り受け、後に不正競争防止法上の不正競争を主張される失敗がある。B-2のような事前の権利調査協力義務が対策となる。

ドメイン名の移転に伴う不正の目的の有無や第三者権利侵害リスクの評価は個別の事実関係に左右されるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 本ドメイン名の登録レジストリ・レジストラ・有効期限を別紙で特定したか
  • [ ] 譲渡対価の金額及び支払時期(着手金・残金)を定めたか
  • [ ] 認証コードの提供時期と対価支払いの順序を整合させたか
  • [ ] 甲の表明保証(正当な登録者であること、第三者紛争の不存在等)を確認したか
  • [ ] 不正競争防止法第2条第1項第19号にいう不正の目的がないことを確認したか
  • [ ] レジストラの移転手数料の負担者を定めたか
  • [ ] ウェブサイトコンテンツ・メールアドレスが譲渡対象に含まれるか明確にしたか
  • [ ] 移転完了後の甲による同一・類似名称の再登録禁止を定めたか
  • [ ] 表明保証違反時の損害賠償の上限を定めたか
  • [ ] 商標データベース等による事前の第三者権利調査を実施したか