社内情報を法的保護の対象とするための管理規程。不正競争防止法第2条第6項の秘密管理性・有用性・非公知性の要件充足を目指します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
営業秘密管理規程
第1部: 書式本文
営業秘密管理規程
【株式会社○○】(以下「当社」という。)は、当社が保有する技術上及び営業上の情報を適切に保護し、事業活動の基盤である知的財産的価値を維持するため、次のとおり営業秘密管理規程(以下「本規程」という。)を定める。
第1条(目的) 本規程は、当社が保有する営業秘密を不正競争防止法第2条第6項に定める秘密管理性、有用性及び非公知性の各要件を充足する形で管理し、不正取得・不正使用・不正開示を防止することを目的とする。
第2条(定義) 1 「営業秘密」とは、当社が秘密として管理する生産方法、販売方法その他の技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。 2 「秘密情報」とは、営業秘密のほか、当社が業務上開示・共有すべきでないと判断した情報を含む、本規程による管理の対象となる情報の総称をいう。
第3条(適用範囲) 本規程は、当社の役員、従業員(嘱託・パート・アルバイトを含む。)、派遣労働者及び委託先の担当者であって当社の秘密情報に接する者(以下「対象者」という。)に適用する。
第4条(秘密情報の指定及び区分) 1 情報管理責任者は、秘密情報を【極秘・秘・社外秘】の区分に従って指定し、当該情報を記録した書類又は電磁的記録に区分を表示する。 2 区分及び取扱基準の詳細は、別途定める「秘密情報の管理レベル区分表」による。
第5条(秘密管理措置) 1 秘密情報が記録された書類及び記録媒体は、施錠可能な保管庫又は入退室が制限された部屋に保管する。 2 当社は、秘密情報を保管する区画への入退室を【ICカード・生体認証】により管理し、入退室記録を【1】年間保存する。 3 秘密情報である旨を表示していない情報は、本規程による保護の対象とならない場合があることに留意する。
第6条(電子データの管理) 1 秘密情報を含む電子データは、アクセス権限を付与された対象者のみがログインID及びパスワードにより閲覧・編集できるサーバ又はフォルダに保存する。 2 パスワードは【90】日ごとに変更し、第三者に開示してはならない。 3 情報システム部門は、秘密情報へのアクセスログを記録し、不審なアクセスを検知した場合は情報管理責任者に速やかに報告する。
第7条(書類・記録媒体の管理) 秘密情報を記載した書類、USBメモリ、外部記憶媒体等は、使用後直ちに施錠保管し、不要となった場合は復元不可能な方法により廃棄する。
第8条(持出し及び複製の制限) 対象者は、情報管理責任者の事前承認を得ない限り、秘密情報を社外に持ち出し、又は複製してはならない。承認を得て持ち出す場合は、持出簿に日時・目的・持出者を記録する。
第9条(第三者への開示及び提供の制限) 対象者は、当社の事前の書面による承認なく、秘密情報を第三者に開示、提供又は漏えいしてはならない。取引先等に開示する必要がある場合は、原則として秘密保持契約を締結した上で行う。
第10条(従業員の秘密保持義務) 1 対象者は、在職中及び退職後においても、業務上知り得た秘密情報を第三者に開示又は自己の利益のために使用してはならない。 2 当社は、対象者に対し、入社時、異動時及び退職時に秘密保持誓約書(様式【1】)への署名を求める。
第11条(退職者に対する措置) 1 退職予定者に対しては、退職日までに秘密保持誓約書を再徴求するとともに、貸与した記録媒体及び秘密情報を含む資料一式の返還を求める。 2 情報管理責任者は、退職者が有していたアクセス権限を退職日をもって速やかに停止する。 3 競業避止義務を課す場合は、職業選択の自由との関係で合理的な範囲(期間・地域・代償措置の有無)を検討したうえで別途誓約書に定める。
第12条(委託先・取引先の管理) 秘密情報を委託先又は取引先に開示する場合、当社は、秘密保持契約の締結、開示範囲の限定及び委託先における管理状況の確認を行う。
第13条(教育及び研修) 当社は、対象者に対し、年【1】回以上、秘密情報管理に関する教育・研修を実施し、その受講記録を保存する。
第14条(監査及び点検) 情報管理責任者は、年【1】回以上、秘密情報の管理状況について自主点検又は監査を実施し、不備が発見された場合は是正措置を講じる。
第15条(違反時の措置) 対象者が本規程に違反した場合、当社は就業規則の定めるところにより懲戒処分を行うほか、損害が生じた場合は民法第709条に基づく損害賠償請求その他の法的措置を講じることがある。
第16条(規程の改廃) 本規程の改廃は、【代表取締役】の決裁により行う。
附則 本規程は【令和 年 月 日】から施行する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 法務・情報管理部門向け 法務・情報管理部門が主導する場合、第4条の区分基準を客観化するため「秘密情報の管理レベル区分表」を独立様式として整備し、第13条の教育記録・第14条の監査記録を法務部門で一元管理する条項に差し替える。一言解説として、監査記録を体系的に保存しておくことが、後日の秘密管理性の立証において重要な証拠となる。
B節: 製造業向け 製造業では図面・製造ノウハウ・金型データが対象となるため、第6条に「CADデータ及び製造管理システム上のアクセス権限は工程ごとに設定する」旨を追加し、第7条に「工場内における図面の複写機使用履歴を記録する」旨を加える。一言解説として、生産現場は書類の閲覧者が多く、現場レベルでの物理的アクセス制限が特に重要になる。
C節: 中小企業向け簡易運用 専任の情報管理部門を置けない中小企業では、第4条の区分を「社外秘」のみの一段階に簡略化し、第13条の教育を年1回の朝礼での注意喚起に代える簡易条項とする。一言解説として、簡略化しても「秘密である旨の表示」と「アクセス制限の実施」という最低限の秘密管理性の要件は外さないことが必要である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説(解説)
本書式は、自社の技術情報・営業情報を法的保護の対象とするため、社内規程として整備する場面で使用する。すでに個別の秘密保持契約や就業規則で十分な管理体制が構築されている場合、内容が重複・矛盾しないよう既存規程との整合性を確認せずに導入することは避けるべきである。
根拠法令は不正競争防止法第2条第6項であり、営業秘密として保護されるには、①秘密管理性(秘密として管理されていること)、②有用性(事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること)、③非公知性(公然と知られていないこと)の3要件をいずれも満たす必要がある。特に秘密管理性は、単に「秘密である」と社内で認識しているだけでは足りず、アクセス制限や表示等の客観的な管理措置が伴って初めて認められるとされている点に留意が必要である。
実務でよくある失敗の一つは、規程を策定しただけで実際のアクセス制限(施錠管理・ID管理)が伴っていないケースである。この対策として、第5条・第6条のように物理的・電子的な管理措置を具体的に条文化し、規程と実態を一致させることが必要である。二つ目は、退職者からの秘密保持誓約書の徴求を怠り、退職後の情報漏えいに対して法的措置を取りにくくなるケースである。第10条・第11条のように、入社時だけでなく退職時にも誓約書を再徴求する仕組みを組み込むことが対策となる。三つ目は、委託先への開示管理が抜け落ち、取引先経由で情報が拡散するケースであり、第12条のように委託先の管理状況確認まで含めることが望ましい。
なお、労働契約法上、就業規則で従業員に義務を課す場合には周知手続や合理性が求められる点にも留意する必要がある。本規程の導入及び運用にあたっては、業種・情報の性質・組織体制によって適切な管理水準が異なるため、個別事案については弁護士等の専門家に確認しながら進めることが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト(チェックリスト)
- [ ] 保護対象とする情報の範囲(技術情報・営業情報)を具体的に洗い出したか
- [ ] 秘密情報の区分(極秘・秘・社外秘)の基準を定めたか
- [ ] 秘密情報を保管する区画の施錠・入退室管理の方法を決めたか
- [ ] 電子データのアクセス権限設定とパスワード管理ルールを整備したか
- [ ] 秘密情報である旨の表示方法(スタンプ・電子透かし等)を決めたか
- [ ] 入社時・異動時・退職時の秘密保持誓約書の様式を用意したか
- [ ] 退職者のアクセス権限を停止する運用フローを確立したか
- [ ] 委託先・取引先との秘密保持契約の締結状況を確認したか
- [ ] 教育・研修の実施頻度と記録方法を定めたか
- [ ] 監査・点検の実施主体と頻度を定めたか
- [ ] 違反時の懲戒手続と就業規則との整合性を確認したか
- [ ] 規程の内容を全対象者に周知する方法を決めたか