eスポーツ選手の所属と活動条件を定める契約書です。大会出場義務、配信活動、賞金の分配、使用機材と守秘義務を規定します。押さえるべき法令上の要件を反映した記載としています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
eスポーツ選手契約書
第1部: 書式本文
甲(【チーム名称】。以下「甲」という。)と乙(選手。以下「乙」という。)は、乙が甲の運営するeスポーツチームに所属し競技活動を行うことに関し、次のとおりeスポーツ選手契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(契約の目的) 甲は乙に対し、甲が運営するチーム【チーム名】の【対象タイトル名】部門の選手として活動する機会を提供し、乙はこれを受諾する。
第2条(契約期間) 本契約の期間は【契約開始日】から【契約終了日】までの【期間】とする。期間満了の【2か月】前までに甲乙いずれからも終了の申出がない場合、本契約は同一条件で【1年間】自動更新される。
第3条(大会出場義務) 1 乙は、甲が指定する公式大会及びリーグ戦に出場する義務を負う。 2 乙の負傷、疾病その他正当な事由により出場が困難な場合、乙は速やかに甲に報告し、甲乙協議のうえ対応を定める。
第4条(配信活動) 1 乙は、甲の指定するプラットフォームにおいて、月間【時間数】時間以上の配信活動を行う。 2 配信活動により生じる収益(投げ銭、サブスクリプション収益等)の甲乙間の分配割合は【分配割合】とする。
第5条(報酬) 甲は乙に対し、活動報酬として月額【金額】円(消費税別)を、毎月【支払日】までに乙が指定する口座に振り込む方法により支払う。
第6条(賞金の分配) 1 乙が本契約に基づく活動として大会に出場し獲得した賞金は、いったん甲が主催者から受領し、甲【割合】%、乙【割合】%の割合で分配する。 2 大会の賞金が景品表示法上の景品類に該当するか、あるいは同法の規制対象外である役務の対価又は仕事の報酬等に該当するかは大会規約及び賞金の性質によって異なるため、甲は大会ごとに当該取扱いを確認し、乙に説明する。
第7条(使用機材・肖像権) 1 甲は乙に対し、競技活動に必要なゲーミングデバイス等の機材を貸与することができる。貸与機材の所有権は甲に留保され、乙は契約終了時にこれを返還する。 2 乙は、本契約に基づく活動の範囲において、甲が乙の氏名、写真、映像及びゲーマータグを使用することを許諾する。
第8条(スポンサー関連義務) 乙は、甲がスポンサー契約に基づき指定する用具の使用、ロゴの着用及びプロモーション活動への参加に協力する。
第9条(SNS・メディア対応) 乙は、SNSその他のメディアにおいて、甲及び関係するスポンサーの信用を毀損する言動を行ってはならない。
第10条(秘密保持) 乙は、チームの戦術情報、契約条件その他甲の営業上の秘密を、甲の書面による承諾なく第三者に開示してはならない。
第11条(専属義務) 乙は、本契約期間中、甲の書面による承諾なく、他のチームに所属し、又は個人として甲の指定する大会以外の公式大会に出場してはならない。
第12条(就業実態の確認) 1 甲及び乙は、本契約が業務委託契約であり、乙が甲の労働者に該当しないことを前提として本契約を締結する。 2 ただし、実際の活動実態(指揮命令の程度、勤務時間・場所の拘束性、報酬の性質等)によっては、労働基準法上の労働者性が認められる場合があり、その場合には同法に基づく規制が適用され得ることを甲乙は確認する。
第13条(契約解除) 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、催告後【14日】以内に是正されないときは、本契約を解除することができる。
第14条(損害賠償) 甲又は乙が本契約に違反し相手方に損害を与えた場合、違反当事者は相手方に対しその損害を賠償する責任を負う。
第15条(協議・合意管轄) 1 本契約に定めのない事項及び疑義については、甲乙誠実に協議のうえ解決する。 2 本契約に関する紛争については、【管轄裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。
【契約締結日】
甲(ゲーミングチーム) 住所: 名称: 代表者: 印
乙(選手) 住所: 氏名: 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節 ゲーミングチームの立場から有利にする修正
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専属義務の強化(第11条の書き換え) 「乙は、本契約期間中及び契約終了後【6か月間】、甲の書面による承諾なく、甲と競合するチームへの加入又は移籍活動を行ってはならない。」 一言解説: 契約終了直後の引き抜きによる主力選手流出を防ぐ。
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賞金分配割合の見直し権限(第6条の書き換え) 「甲乙間の賞金分配割合は、乙の年間出場実績及びチームの投資額を踏まえ、甲が年1回見直しを提案でき、乙はこれに誠実に協議する。」 一言解説: チーム運営コストの増減に応じて分配を柔軟に調整できるようにする。
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機材返還義務の担保(第7条の書き換え) 「乙が貸与機材を契約終了後【14日】以内に返還しない場合、乙は甲に対し、機材相当額を違約金として支払う。」 一言解説: 貸与機材の未返還リスクを金銭的に担保する。
B節 選手の立場から有利にする修正
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報酬の最低保証と賞金分配率の引き上げ(第5条・第6条の書き換え) 「甲は乙に対し、月額報酬を最低保証額として支払うほか、乙が獲得した賞金については乙【80%】、甲【20%】の割合で分配する。」 一言解説: 競技活動の主体である選手側の取り分を確保する。
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専属義務の対価明示(第11条の書き換え) 「乙が専属義務を負う対価として、甲は乙に対し月額報酬とは別に専属手当【金額】円を支払う。」 一言解説: 移籍・副業の自由を制限する対価を明確化し、無償の拘束を防ぐ。
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就業実態の定期確認(第12条の書き換え) 「甲乙は、乙の活動実態について【6か月】ごとに確認を行い、指揮命令の程度が労働者性を基礎付ける状態にあると認められる場合、甲乙は速やかに契約形態の見直しについて協議する。」 一言解説: 実態が労働契約に近づいた場合に是正する機会を契約上確保する。
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契約終了時の補償(第13条の書き換え) 「甲の都合により契約期間中に本契約を解除する場合、甲は乙に対し、残存期間に対応する報酬相当額を補償として支払う。」 一言解説: チーム都合の一方的な契約打切りによる収入喪失を補償する。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、eスポーツチームが選手と所属契約を締結し、大会出場、配信活動及び賞金分配などの活動条件を定める場面で用いる。選手がチームに雇用される正社員である場合や、単発のイベント参加のみを依頼する場合には、雇用契約書や単発の出演契約書など別の書式を検討すべきであり、実態に合わない業務委託契約を用いると後述の労働者性の問題が顕在化しやすい。
賞金の取扱いについては、景品表示法上の景品類規制との関係が問題となる。同法が規制する「景品類」は、事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する経済上の利益を指すところ、大会主催者が興行の主催者として参加者の技量を競わせ、その結果として賞金を交付する場合、消費者庁の見解等を踏まえると、取引付随性がないものとして景品類規制の対象外と整理される場合がある一方、物品購入等を参加条件とする大会では景品類規制が問題となり得るため、大会ごとの実態確認が必要である。労働基準法との関係では、選手契約を業務委託として構成しても、実際の指揮命令の程度、勤務時間・場所の拘束性、報酬の労務対償性等の実態から労働者性(労働基準法第9条にいう労働者に該当するか)が判断されるため、契約書の名称だけで労働者性を否定することはできない。また、選手個人が特定受託事業者に該当する場合には、フリーランス新法に基づく取引条件の明示義務等が及ぶ可能性がある。
よくある失敗として、第一に、賞金の分配割合や受領方法を定めず、大会後に取り分をめぐって紛争になる例がある。第6条のように受領主体と分配割合を明記することで防止できる。第二に、業務委託契約としながら実質的に毎日の練習時間や生活スケジュールまで細かく指定し、労働者性が肯定されるリスクを抱えたまま運用している例がある。第12条のように活動実態を定期的に確認する仕組みを設けることが対策となる。第三に、専属義務のみを課し対価を明示しないまま契約し、選手のモチベーション低下や離脱を招く失敗もある。専属義務に見合う対価を明記することが望ましい。景品表示法上の景品類該当性や労働者性の判断は個別の事情により結論が変わり得るため、専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 契約期間・自動更新条件を明記したか
- [ ] 大会出場義務の範囲(甲が指定する大会か、乙の任意出場を含むか)を明確にしたか
- [ ] 配信活動の頻度・時間・収益分配割合を定めたか
- [ ] 月額報酬の金額・支払日・最低保証の有無を明記したか
- [ ] 賞金の受領主体・分配割合・支払時期を定めたか
- [ ] 賞金が景品表示法上の景品類に該当するかを大会ごとに確認する運用があるか
- [ ] 貸与機材の所有権・返還義務・未返還時の対応を定めたか
- [ ] 肖像・氏名・ゲーマータグの使用範囲を明記したか
- [ ] 専属義務の範囲及びその対価を明記したか
- [ ] 選手の活動実態が労働者性を基礎付けないか、定期的に確認する仕組みを設けたか
- [ ] 契約解除事由及びチーム都合解除時の補償を定めたか
- [ ] SNS・メディア対応に関する遵守事項を明記したか