背景出演者から出演と映像利用の承諾を得る書式です。無償か有償かの区分、肖像の利用範囲、安全上の遵守事項を確認します。ひな型をもとに数分で自社仕様に調整できます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
エキストラ出演承諾書
第1部: 書式本文
【制作者名】(以下「甲」という)は、【作品名】(以下「本作品」という)の撮影に背景出演者(エキストラ)として参加する【エキストラ参加者氏名】(以下「乙」という)との間で、次のとおり出演及び映像利用に関する承諾書(以下「本承諾書」という)を取り交わす。
第1条(目的) 乙は、本作品の撮影において背景出演者として参加し、その映像・写真が本作品に収録・使用されることを承諾する。
第2条(参加内容) 1. 参加日時は【撮影日時】、参加場所は【撮影場所】とする。 2. 乙の役割は【背景出演の内容(例:街頭シーン通行人、観客席等)】とし、台詞を伴わない範囲の出演とする。
第3条(有償・無償の区分) 1. 本参加は【有償・無償の別】とする。 2. 有償の場合、甲は乙に対し金【謝礼額】を、参加当日又は【支払期日】までに支払う。 3. 無償の場合であっても、甲は乙に対し交通費として【交通費の有無・金額】を支給することがある。
第4条(拘束時間) 拘束時間は【時間数】を目安とし、甲は合理的な範囲で休憩を設けるよう配慮する。
第5条(映像・写真の利用範囲) 1. 乙は、本参加により撮影された映像・写真に乙の容姿が映り込むことについて、本作品及びその宣伝・広報活動(【利用媒体・範囲(例:劇場公開、配信、テレビ放送、予告編、ポスター、SNS告知)】)における利用を承諾する。 2. 前項の利用地域は【利用地域】、利用期間は【利用期間(例:本作品の著作権存続期間中)】とする。 3. 乙の容姿が主たる被写体として特定的に大写しとなるカット(いわゆるクローズアップ)を使用する場合、甲は事前に乙の追加の承諾を得るよう努める。
第6条(肖像権等の不行使) 乙は、本条に定める利用範囲内での容姿の利用について、肖像権及びパブリシティ権に基づく異議を申し立てないものとする。ただし、乙の名誉又は評判を不当に毀損する態様での利用については、この限りでない。
第7条(取得する個人情報) 1. 甲は、本参加の手続に必要な範囲で乙の氏名、連絡先等の個人情報を取得する。 2. 甲は、取得した個人情報を、参加確認、緊急連絡、謝礼支払手続、次回撮影の案内以外の目的に利用しない。 3. 乙から個人情報の利用停止又は削除の求めがあった場合、甲は本作品の完成・公開に支障のない範囲で合理的に対応する。
第8条(安全上の遵守事項) 1. 乙は、撮影現場において甲又は現場責任者の指示に従い、危険を伴う行為、立入禁止区域への進入等を行わないものとする。 2. 乙は、自己の健康状態、既往症等について、危険を伴う演出への参加に支障がある場合は事前に甲に申告するものとする。 3. 撮影中の事故等について、甲は現場の安全管理に合理的な注意を払うものとし、乙の故意又は重大な過失による事故については甲は責任を負わない。
第9条(撤回・辞退) 乙は、撮影開始前であればいつでも参加を辞退することができる。ただし、既に確定した謝礼の支払義務や交通費精算については別途協議する。
第10条(労働者性に関する確認) 本承諾書に基づく参加は、甲の指揮命令下で継続的・専属的に労務を提供するものではなく、単発の出演協力であることを甲乙間で確認する。ただし、実態として労働基準法上の労働者に該当すると評価される場合には、同法及び関連法令の適用があり得る。
第11条(本承諾書の効力) 本承諾書は、乙が署名又は記名押印した時点で効力を生じる。乙が未成年者である場合は、親権者の署名又は記名押印をもって有効とする。
本承諾書の内容を確認し、以下のとおり署名する。
承諾日: 【承諾日】
甲(制作者) 住所: 名称: 代表者: 印
乙(エキストラ参加者) 住所: 氏名: 印 (未成年の場合)親権者氏名: 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 制作者(甲)側から見た有利な書き換え
-
利用範囲の無期限・包括化 「乙は、本参加により撮影された映像・写真について、本作品の著作権存続期間中、世界中のあらゆる媒体において甲が利用することにあらかじめ同意する。」 一言解説: 将来の海外配給や配信媒体追加のたびに個別承諾を取り直す手間を避けるための書き方だが、無償参加者に対しては説明責任が重くなる点に注意する。
-
クローズアップ利用の事前承諾不要化 「乙は、撮影されたカットの構図・使用箇所を問わず、甲が本作品に使用することについてあらかじめ包括的に承諾する。」 一言解説: 編集段階での柔軟性を確保する条項。ただし本人の予期しない露出につながりトラブルの原因にもなるため運用上の配慮が必要である。
-
事故対応の免責範囲拡張 「撮影現場における乙の負傷その他の事故については、甲の故意又は重過失による場合を除き、甲は一切の責任を負わないものとする。」 一言解説: 安全配慮義務を軽減しすぎる書き方であり、実際の紛争では公序良俗や過失責任の観点から効力が制限され得る点に留意が必要である。
B節: エキストラ参加者(乙)側から見た有利な書き換え
-
クローズアップ利用の個別承諾必須化 「乙の容姿が識別可能な形で大写しとなるカットを使用する場合、甲は使用前に当該カットを乙に提示し、書面による個別の承諾を得るものとする。」 一言解説: 背景出演の想定を超えた露出については本人確認を必須とする、参加者側の防御条項である。
-
個人情報の目的外利用禁止の明確化 「甲は、乙の氏名・連絡先を本承諾書に明記された目的以外に利用してはならず、第三者へ提供する場合はあらかじめ乙の同意を得るものとする。」 一言解説: 個人情報保護法の趣旨を契約上具体化し、名簿の転用や第三者提供を防ぐ書き方である。
-
交通費・拘束時間超過分の実費保障 「拘束時間が【4時間】を超える場合、甲は乙に対し実費相当額として金【一定額】を追加で支給する。」 一言解説: 無償参加を前提とする場合でも、長時間拘束に対する最低限の実費補償を確保する条項である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
解説: 使用場面と適用範囲
本書式は、映画・ドラマ・広告等の撮影において、通行人役や観客役など背景として出演するエキストラから出演と映像利用の承諾を得る場面での使用を想定している。台詞のある役や継続的な出演を伴うキャスティングについては、より詳細な報酬・権利条項を備えた出演契約書を用いるべきであり、本書式は簡易な承諾取得を目的とする点に注意する。また、参加者が実質的に長時間かつ継続的に指揮命令を受けて稼働するような場合には、単なる承諾書ではなく雇用契約又は業務委託契約としての整理を検討する必要がある。
解説: 根拠法令の説明
肖像権及びパブリシティ権は判例法理により形成されてきた人格的・経済的利益であり、無断での容姿の撮影・公表は不法行為責任の問題となり得るため、本承諾書のように事前の承諾を明確に取得しておくことが重要である。個人情報保護法は、個人情報取扱事業者が個人情報を取得する際に利用目的をできる限り特定し、本人に通知又は公表することを求めており(同法第18条等)、氏名や連絡先を取得するエキストラ管理においてもこの規律への配慮が必要になる。また、参加形態によっては労働基準法上の労働者性が問題となり得るため、業務の実態(指揮命令の程度、時間的場所的拘束の程度、報酬の労務対償性等)に照らして労働者に該当すると評価される可能性がある場合は、賃金や労働時間規制等の適用を検討する必要がある。
解説: よくある失敗と対策
第一に、無償参加であることのみを口頭で説明し、書面での承諾を取得しないまま撮影を進め、後日利用範囲について認識の齟齬が生じる失敗がある。第5条のように利用媒体・地域・期間を明記し、書面で承諾を取得することが対策になる。第二に、クローズアップ等の想定外の露出が生じ、参加者から異議が出るケースがある。第5条第3項及びB節のように、大写しとなるカットについては別途承諾を得る運用を組み込むことが有効である。第三に、大量の参加者情報を管理目的以外に流用してしまう失敗がある。第7条のように利用目的を限定し、削除請求への対応方法をあらかじめ定めておくことが望ましい。参加形態によっては労働関係法令の適用可能性など判断が分かれる論点もあるため、個別の事案については弁護士等の専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 参加日時・場所・背景出演の内容が具体的に記載されているか
- [ ] 有償・無償の区分及び謝礼額・交通費の有無が明記されているか
- [ ] 拘束時間の目安と休憩への配慮が記載されているか
- [ ] 映像・写真の利用媒体・地域・期間が具体的に定められているか
- [ ] クローズアップ等想定外の露出への追加承諾手続があるか
- [ ] 取得する個人情報の項目と利用目的が明記されているか
- [ ] 個人情報の目的外利用禁止・削除請求対応が定められているか
- [ ] 撮影現場での安全上の遵守事項が記載されているか
- [ ] 未成年者参加時の親権者同意取得欄が用意されているか
- [ ] 参加撤回・辞退の取扱いが明記されているか
- [ ] 労働者性が問題となり得る参加形態でないか確認されているか