利用者と業者のみで売掛債権を買い取り回収は利用者が代行する契約書。民法第466条の債権譲渡と貸金業法上の貸付該当性の線引きに配慮しています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
二者間ファクタリング契約書
第1部: 書式本文
【ファクタリング会社商号】(以下「甲」という。)と【利用企業(譲渡人)商号】(以下「乙」という。)とは、乙が保有する売掛債権を甲に譲渡し、その回収は乙が代行することに関し、次のとおり二者間ファクタリング契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(債権譲渡) 乙は、乙が下記第三債務者に対して有する下記売掛債権(以下「本件債権」という。)を、甲に確定的に譲渡し、甲はこれを譲り受ける。本件債権の譲渡は民法第466条以下に定める債権譲渡とする。 記 1. 第三債務者:【商号】 2. 発生原因:【継続的取引基本契約に基づく売買代金債権】 3. 債権額:金【 】円 4. 支払期日:【〇〇年〇〇月〇〇日】
第2条(買取代金) 甲は、乙に対し、本件債権の買取代金として金【 】円(本件債権額から手数料を控除した額)を、本契約締結日から【 】営業日以内に、乙の指定する口座に振り込む方法により支払う。
第3条(ファクタリング手数料) 本件債権額と買取代金の差額は、本件債権の買取りに係る手数料(以下「本件手数料」という。)とし、金【 】円(本件債権額の【 】パーセントに相当)とする。
第4条(取引の性質) 1. 本契約は、乙が甲に対して負担する返済義務を生じさせる金銭消費貸借契約ではなく、本件債権を確定的に甲に譲渡する売買契約であることを甲乙確認する。 2. 甲は、第三債務者の資力による回収不能のリスクを負担し(ノンリコース)、乙は本件債権が甲に履行されなかった場合であっても、原則として買取代金相当額を甲に返還する義務を負わない。
第5条(回収代行) 1. 乙は、甲から本件債権の回収を受託し、乙の名において第三債務者から本件債権相当額を回収した上で、これを甲に引き渡す(回収代行方式)。 2. 乙は、第三債務者から回収した金銭を自己の固有財産と分別して管理し、回収後【 】営業日以内に甲の指定する口座に引き渡す。
第6条(第三債務者への通知の留保) 甲及び乙は、本契約締結時点において第三債務者に対する債権譲渡の通知を行わない(いわゆるサイレント方式)。乙は、甲の求めがあるとき、又は乙が本契約上の義務を履行しないときは、甲が第三債務者に対し確定日付ある証書による通知を行うことに異議を述べない。
第7条(乙の表明保証) 乙は、本契約締結日において、本件債権が有効に存在し、二重譲渡、質権設定その他の負担が付されていないこと、及び第三債務者との間で本件債権の存否又は金額について争いがないことを表明し保証する。
第8条(回収金引渡義務違反時の責任) 乙が第5条の回収金引渡義務に違反したときは、甲は乙に対し、未引渡額及びこれに対する年【 】パーセントの割合による遅延損害金を請求することができる。
第9条(貸金業該当性の確認) 甲及び乙は、本契約が売掛債権の売買であり、乙による返済義務を伴う金銭の貸付けに該当しないことを相互に確認する。
第10条(協議及び合意管轄) 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各自1通を保有する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
(甲) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】 印 (乙) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. ファクタリング会社向け書き換え
A-1. 回収代行における金銭の分別管理を徹底したい場面
第5条修正例:「乙は、第三債務者から回収した金銭を専用の回収金口座で管理し、甲は当該口座の入出金明細を随時確認できるものとする。」 解説: 回収金が乙の他の資金と混同されることによる引渡遅延・紛失のリスクを避けるため、専用口座による管理を求める。
A-2. 手数料の算定根拠を明確にしたい場面
第3条追加例:「本件手数料は、第三債務者の信用状況、本件債権の支払期日までの期間及び乙の取引実績を考慮して算定したものであることを甲乙確認する。」 解説: 手数料が著しく高額な場合に貸付けとの類似性を指摘されるリスクがあるため、算定根拠を記録し合理性を示す。
B. 利用企業(譲渡人)向け書き換え
B-1. 取引先に知られずに資金化したい場面
第6条修正例:「甲は、乙が本契約上の義務を履行している限り、乙の書面による事前の承諾なく第三債務者への通知を行わない。」 解説: サイレント方式による資金調達を希望する事業者の要望に応え、通知権限の行使に乙の承諾を要件とする。
B-2. 手数料水準について透明性を求める場面
第3条修正例:「甲は、本件手数料の算定根拠(基準となる年率換算値を含む)を乙の求めに応じて開示する。」 解説: 手数料が実質的な金利に相当する水準になっていないかを乙が確認できるよう、開示請求権を明記する。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面 本書式は、事業者が保有する売掛債権を、ファクタリング会社と当該事業者のみの二者間で譲渡し、回収は事業者が代行して行う取引の場面で用いる。第三債務者を含めた三者間で行うファクタリング(三者間ファクタリング)の場合は、第三債務者に通知又は承諾を得た上で直接回収を行う構成となり、本書式とは前提が異なる。また実質的にみて回収リスクを譲渡人が負担し、期日に売掛先から入金がない場合に譲渡人が支払う義務を負う(償還請求権付き、いわゆるウィズリコース)構成となっている場合、経済的実質は金銭消費貸借に近く、貸金業法上の貸付けに該当するおそれがあるため、本書式のようなノンリコース構成を前提とする取引にのみ用いるべきである。
根拠法令 ファクタリングにおける債権の譲渡は民法第466条以下の債権譲渡の規定に基づく。金融庁は、ファクタリングが債権の売買である場合には貸金業に該当しないが、償還請求権付き(乙が第三債務者の不払時に買戻し又は支払義務を負う)であるなど実質的に金銭の貸付けと同視できる場合には貸金業法の規制対象となり得るとの考え方を示している。したがって本契約では、第4条のようにノンリコースである旨(甲が資力リスクを負担し、乙に買戻し義務がないこと)を明確にすることが極めて重要である。回収代行方式(乙が第三債務者から回収し甲に引き渡す)は、債権譲渡の効力自体には影響しないが、通知を伴わないサイレント方式と組み合わされることが多く、その場合の第三債務者対抗要件の具備方法にも留意が必要である。
実務でよくある失敗と対策 第一に、契約書上は債権譲渡としながら、実質的に第三債務者が不払いの場合に乙が買い戻す義務を負う条項を含めてしまい、貸金業法上の貸付けと評価されるリスクを生じる失敗がある。第4条のようにノンリコースであることを明確にし、買戻し義務を定めない。第二に、回収代行の仕組みにおいて回収金の分別管理を徹底せず、乙の資金繰り悪化時に回収金が他の債務の弁済に流用されてしまう失敗がある。第5条及びA-1修正例のように分別管理と引渡期限を明記する。第三に、手数料が著しく高額(実質年率換算で利息制限法の上限を大きく超える水準)となり、後日その適法性が争われる失敗がある。手数料水準の設定にあたっては、個別の取引実態を踏まえ、貸金業該当性を含め専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 本件債権(第三債務者・発生原因・金額・支払期日)を具体的に特定したか
- [ ] 買取代金及びファクタリング手数料の金額を明記したか
- [ ] ノンリコースである旨(買戻し義務を負わないこと)を明確に規定したか
- [ ] 回収代行の方法及び回収金の引渡期限を定めたか
- [ ] 回収金の分別管理の方法を定めたか
- [ ] 第三債務者への通知の要否・タイミングを整理したか(サイレント方式か)
- [ ] 乙による表明保証(債権の存在、負担の不存在等)を求めたか
- [ ] 手数料水準が実質的な金利規制との関係で適正か検討したか
- [ ] 本契約が貸金業法上の貸付けに該当しないか確認したか