設備をリースで導入し実質的に全額を支払うフルペイアウト型の契約書。民法の賃貸借規定の特則的な取扱いと中途解約禁止・危険負担条項を整理します。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
ファイナンス・リース契約書
第1部: 書式本文
【リース会社商号】(以下「甲」という。)、【ユーザー商号】(以下「乙」という。)及び【連帯保証人氏名】(以下「丙」という。)は、甲が別紙物件目録記載の設備(以下「本物件」という。)を乙に賃貸することに関し、次のとおりファイナンス・リース契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 甲は、乙が指定したサプライヤー【サプライヤー商号】(以下「サプライヤー」という。)から本物件を買い受け、これを乙に賃貸し、乙は本物件を使用する対価としてリース料を甲に支払う。
第2条(契約の性質) 本契約は、本物件の取得価額、付随費用及び利息相当額の合計をリース期間中のリース料の総額として乙が実質的に負担するフルペイアウト方式のファイナンス・リース契約であり、乙は本契約の効力について、民法上の賃貸借契約(第601条以下)に関する規定のうち、本契約の性質に反する規定(修繕義務、中途解約権等)の適用がないことを了解する。
第3条(引渡し及び検収) 1. サプライヤーは本物件を乙の指定場所に納入し、乙は納入後【7】日以内に検収を行う。 2. 乙は、検収完了をもって甲に対し検収完了通知書を交付し、以後、本物件の種類、品質又は数量に関する契約不適合の主張は、サプライヤーに対してのみ行うものとし、甲に対しては行わない。
第4条(リース期間) 本契約に基づくリース期間は、検収完了通知書記載の引渡日から【60】か月間とする。
第5条(リース料) 1. 乙は、甲に対し、リース料として月額金【〇〇円】(消費税別)を、毎月末日までに翌月分を甲の指定口座へ振り込む方法により支払う。 2. リース料の総額は、本物件の取得価額、付随費用及び利息相当額を基礎として算定されたものであり、本物件の使用の対価にとどまらないことを乙は了解する。
第6条(中途解約の禁止) 1. 乙は、リース期間中、甲の書面による承諾なく本契約を中途解約することができない。 2. 乙が甲の承諾を得て中途解約する場合、乙は残存リース料相当額から甲が本物件の処分等により回収した額を控除した金額を、違約金として甲に支払う。
第7条(危険負担) 本物件の引渡し後に生じた滅失、毀損その他の危険は乙が負担するものとし、乙は当該事由の発生にかかわらずリース料の支払義務を免れない。
第8条(保守及び保険) 1. 乙は、自己の費用と責任において本物件を善良な管理者の注意をもって保守し、本物件に係る損害保険を付保する。 2. 乙は、本物件の修繕、改造その他の変更を行おうとするときは、あらかじめ甲の書面による承諾を得る。
第9条(所有権及び物件の表示) 1. 本物件の所有権は甲に帰属し、乙はこれを第三者に譲渡、貸与、担保設定その他の処分をしてはならない。 2. 乙は、甲の指示に従い、本物件に甲の所有権を示すプレート等を貼付し、これを維持する。
第10条(期限の利益喪失) 乙について、リース料の支払遅滞、破産手続開始の申立てその他信用不安を生じさせる事由が発生した場合、乙は甲からの通知催告を要せず期限の利益を喪失し、甲は残存リース料の全額を一括して請求できる。
第11条(連帯保証) 丙は、乙の甲に対する本契約に基づく一切の債務について、乙と連帯して保証する。
第12条(リース期間満了時の取扱い) リース期間満了時、乙は本物件を甲の指定する場所へ乙の費用負担で返還する。ただし、甲乙間で別途再リース又は買取りに関する合意をした場合はこの限りでない。
第13条(反社会的勢力の排除) 甲、乙及び丙は、自己が暴力団その他の反社会的勢力に該当しないことを表明し保証する。
第14条(協議及び合意管轄) 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上の合意を証するため本書3通を作成し、甲乙丙記名押印の上、各自1通を保有する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
(甲) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】 印 (乙) 住所:【 】 商号:【 】 代表者:【 】 印 (丙) 住所:【 】 氏名:【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. リース会社向け
A-1. 高額設備で残存リース料の回収可能性を高めたい場合
第6条2項修正例:「違約金の額は、残存リース料相当額の【90】パーセントから、甲が本物件を処分等により回収した額を控除した金額とする。」 解説: 高額設備は中途解約時の処分価額が読みにくいため、割合方式で違約金の下限を確保する。
A-2. サプライヤーとの契約不適合責任の切り分けを徹底したい場合
第3条2項追加例:「甲は、本物件のサプライヤーに対する契約不適合責任その他の請求権を乙に譲渡し、乙は自己の名及び費用でこれを行使できるものとする。」 解説: リース会社は物件の瑕疵に関与しないため、請求権の譲渡構成を明記し紛争の当事者を明確にする。
B. ユーザー(借主)向け
B-1. 事業計画の見直しにより解約の可能性がある場合
第6条2項修正例:「乙は、リース期間の3分の2を経過した後に中途解約する場合、残存リース料の【50】パーセントを違約金の上限として甲に支払う。」 解説: 早期解約時の負担が過大にならないよう、経過期間に応じた違約金の上限を設定する交渉例。
B-2. 保守費用の負担を明確にしたい場合
第8条1項修正例:「本物件の通常の使用に伴う消耗品の交換費用は乙が負担し、本物件の構造上の欠陥に起因する修繕費用は甲が負担する。」 解説: 保守義務の範囲があいまいだと修繕費の負担者を巡る紛争が生じやすいため、原因別に負担を切り分ける。
C. 連帯保証人向け
C-1. 保証極度額を設定したい場合(個人保証)
第11条修正例:「丙の保証は、民法第465条の2に基づく個人根保証契約とし、極度額を金【〇〇円】とする。」 解説: 丙が個人である場合、極度額の定めのない根保証契約は無効となるため、極度額の明記が必須である。
C-2. 保証期間・情報提供を明確にしたい場合
第11条追加例:「甲は、丙の請求があったときは、民法第458条の2の定めに従い乙の債務の履行状況に関する情報を丙に提供する。」 解説: 保証人保護の観点から、主債務者の履行状況に関する情報提供請求権があることを明記し丙の予見可能性を高める。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面の解説 本書式は、リース会社が設備を購入して事業者に賃貸し、リース期間中のリース料総額によって取得価額及び利息相当額をユーザーが実質的に負担するフルペイアウト型のファイナンス・リース取引で用いる。リース会社が物件の保守やメンテナンスサービスを継続的に提供するオペレーティング・リースや、途中解約が自由な短期賃貸借には本書式はなじまない。
根拠法令の解説 ファイナンス・リースは民法上の典型契約である賃貸借契約(第601条)とは異なり、判例上、その実質は物件の取得資金を分割で融通する金融取引に近いものと評価されている(最高裁平成7年4月14日判決参照)。そのため、民法の賃貸借規定のうち賃貸人の修繕義務(第606条)や賃借人の中途解約権の保護規定は、フルペイアウトの趣旨に反するとして適用が排除される旨を第2条で明記する必要がある。また、物件の契約不適合に関する責任は、リース会社ではなくサプライヤーに対して追及する構成(第3条2項)が実務上一般的である。
実務でよくある失敗と対策 第一に、中途解約禁止規定を置きながら違約金の算定方法を定めず、解約時の請求額を巡って紛争化する失敗がある。第6条のように残存リース料を基礎とする算定式を明記する。第二に、危険負担の帰属を曖昧にし、物件の滅失後もリース料債務が存続するか争いになる失敗がある。第7条のように引渡し後の危険を乙に負担させる旨を明記する。第三に、連帯保証人が個人である場合に極度額の定めを欠き、保証契約自体が無効となる失敗がある。第11条のように民法第465条の2に基づく極度額を明記する。個別の物件特性や税務上の取扱い(リース会計基準の適用等)については専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] フルペイアウト方式である旨及び民法賃貸借規定の適用排除を明記したか
- [ ] サプライヤーへの契約不適合責任の請求権譲渡構成を定めたか
- [ ] リース期間及びリース料の算定根拠を明記したか
- [ ] 中途解約禁止及び違約金の算定方法を具体的に定めたか
- [ ] 引渡し後の危険負担が乙に帰属することを明記したか
- [ ] 保守・保険付保の義務者及び費用負担を定めたか
- [ ] 所有権の帰属及び物件表示(プレート等)の義務を定めたか
- [ ] 期限の利益喪失事由及び一括請求権を明記したか
- [ ] 連帯保証人が個人である場合、極度額を定めたか(民法第465条の2)
- [ ] リース期間満了時の物件返還又は再リースの取扱いを定めたか