書体データを製品や広告に組み込む際のライセンス契約書。プログラムの著作物として著作権法第10条第1項第9号の保護を前提に条件を設定。

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フォントライセンス契約書

第1部: 書式本文

フォントライセンス契約書

【フォントベンダー名】(以下「甲」という)と【利用企業名】(以下「乙」という)は、甲が制作又は販売する書体データ「【フォント名】」(以下「本フォント」という)の使用許諾に関し、次のとおり契約を締結する。

第1条(定義) 本契約において「本フォントデータ」とは、本フォントのアウトラインデータ、ヒンティング情報、グリフ情報及びこれらを構成するプログラムファイル(OpenType、TrueType、WOFF、WOFF2その他の形式を含む)の一切をいう。

第2条(許諾の範囲) 1. 甲は乙に対し、本契約の定める条件に従い、本フォントデータを【使用目的:印刷物/広告/UI/製品組込み等を具体的に列挙】の範囲で使用する非独占的な権利を許諾する。 2. 前項の許諾は、乙が指定する【使用媒体】に限定され、それ以外の媒体での使用は別途甲の書面による承諾を要する。

第3条(ライセンス形態) 本契約におけるライセンス形態は、次のいずれかとし、本契約書末尾の別紙において選択された区分を適用する。 (1) デスクトップライセンス(インストール台数【 】台まで) (2) Webフォントライセンス(月間ページビュー又は配信ドメイン数による従量制) (3) 組込み(埋込み)ライセンス(製品又はアプリケーションへの搭載) (4) パッケージ製品同梱ライセンス

第4条(禁止事項) 乙は、甲の書面による事前の承諾がない限り、次の各号の行為を行ってはならない。 (1) 本フォントデータそのものの複製、譲渡、貸与、再配布又は第三者への提供 (2) 本フォントデータの改変(文字追加、字形変更、ヒンティング調整を含む) (3) 本フォントデータを抽出可能な形式のまま製品に組み込むこと (4) 本フォントを用いたロゴ又は商標としての恒常的使用(別途第5条の定めによる)

第5条(埋込み・組込み利用及びサブセット化) 1. 乙が本フォントデータを電子書籍、アプリケーション又はウェブサイトに埋め込んで利用する場合、乙は使用に必要な文字のみを抽出したサブセットフォントを作成し、これを埋め込むことができるものとする。ただし、サブセット化後のデータからオリジナルの本フォントデータ全体を復元し得る形での提供は禁止する。 2. Webフォントとして配信する場合、乙は自社が管理するドメイン又は甲が別途承諾したCDNからの配信に限り本フォントデータを利用できるものとし、フォントファイル単体を直接ダウンロード可能な状態で公開してはならない。

第6条(ロゴ・商標利用) 本フォントを用いて作成した文字をロゴマーク又は商標として恒常的に使用する場合、乙は別途甲の定めるロゴ利用許諾条件に従い、追加のライセンス料を支払うものとする。

第7条(使用料及び支払方法) 乙は甲に対し、本契約の対価として使用料金【 】円(税別)を、【一括/年額/従量】の方法により、甲の指定する口座に振り込んで支払う。振込手数料は乙の負担とする。

第8条(著作権表示) 乙は、本フォントデータを組み込んだ製品又は媒体において、甲が別途指定する著作権表示又はクレジット表記を、甲が定める方法により付す。

第9条(保証の否認) 甲は、本フォントデータが第三者の著作権、意匠権その他の権利を侵害しないことを保証するものではない。ただし、甲は本フォントデータの制作過程において知り得た第三者の権利侵害の事実を速やかに乙に通知する。

第10条(契約期間) 本契約の有効期間は、契約締結日から【 】年間とし、期間満了の【 】か月前までに双方いずれからも書面による終了の申出がない限り、同一条件でさらに【 】年間更新されるものとする。

第11条(解除) 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、相当の期間を定めた催告後もその違反が是正されない場合、本契約を解除することができる。

第12条(契約終了後の措置) 本契約が終了した場合、乙は速やかに本フォントデータを自己の管理する全ての機器、サーバ及び媒体から削除し、甲の求めに応じて削除完了の報告を行う。ただし、契約終了前に適法に頒布された印刷物等については、この限りでない。

第13条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の履行を通じて知り得た相手方の技術上・営業上の秘密を、相手方の書面による事前の承諾なく第三者に開示又は漏洩してはならない。

第14条(損害賠償) 甲又は乙が本契約に違反し、相手方に損害を与えた場合、違反当事者は相手方に対しその損害(逸失利益を含む)を賠償する責任を負う。

第15条(準拠法及び管轄) 本契約は日本法に準拠し、本契約に関する紛争については【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: フォントベンダー向け

フォントベンダーの立場では、無断複製・改変・再配布のリスク管理と、利用範囲を超えた使用の抑止が最重要である。第4条・第5条を強化し、次のような書き換えが有効である。

書き換え例(第4条に追加): 「乙は、本フォントデータの全部又は一部をリバースエンジニアリング、逆コンパイル又は逆アセンブルしてはならない。また、フォント編集ソフトウェアを用いて本フォントデータのアウトライン情報を抽出する行為も禁止する。」

一言解説: プログラムの著作物(著作権法第10条第1項第9号)としての保護を前提に、解析行為そのものを契約上明示的に禁止することで、著作権侵害の立証が困難な改変・抽出行為にも契約責任で対応できるようにする。

B節: 利用企業向け

利用企業(発注側)の立場では、想定利用範囲(媒体・期間・台数)を契約書上で具体的に確定し、将来の事業拡大時に追加費用が発生する条件を明確にしておくことが重要である。

書き換え例(第2条第1項に追加): 「本許諾の範囲には、乙及び乙の子会社(乙が議決権の過半数を保有する会社に限る)による使用を含むものとする。」

一言解説: グループ会社での利用可能性がある場合、契約締結時に対象範囲を明示しないと、後日「無許諾利用」と指摘されるリスクがある。グループ利用を想定するなら許諾範囲に明記すべきである。

C節: 組込み・埋込み利用対応

製品やアプリにフォントを組み込んで配布する事業者の立場では、配布後にエンドユーザーの端末上にフォントデータが残存する点への対応が論点となる。

書き換え例(第5条に追加): 「乙が本フォントデータを組み込んだ製品を第三者に販売又は頒布する場合、当該製品からの本フォントデータの単体抽出を防止する技術的措置(暗号化、難読化等)を講じるものとする。」

一言解説: 組込み配布では、著作権法上のプログラムの著作物としての複製権(第21条)侵害を第三者エンドユーザーが行うリスクがあるため、技術的防止措置を契約上の義務として明記し、ベンダー・利用企業双方のリスクを低減する。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

この書式を使う場面/使ってはいけない場面

本書式は、フォントベンダーが自社の書体データを企業や制作会社に有償で使用許諾する場面、及び利用企業がフォントを製品・広告・アプリに組み込む場面を想定している。オープンソースライセンス(SIL Open Font License等)が既に付与されているフォントについては、当該ライセンス条件が優先するため本書式をそのまま適用すべきではない。また、フリーフォントの規約変更や商用利用範囲の確認を伴わない安易な流用にも本書式は適さない。

根拠法令の解説

書体そのもの(タイプフェイス)については、最高裁判所平成12年9月7日判決(ゴナ書体事件)が示すとおり、実用的機能を離れて独立の美的鑑賞の対象となるといえる独自の創作性を備えていない限り、著作物性は否定される傾向にある。他方で、書体を生成・表示するためのアウトラインデータやヒンティング情報を含むフォントプログラムは、著作権法第10条第1項第9号の「プログラムの著作物」として保護され得る。したがって、フォントライセンス契約は著作権法上の権利保護に加え、契約(債権)による利用条件の設定が中心的な役割を果たす。複製・改変への対応としては第21条(複製権)、第27条(翻案権)も関係し得る。

実務でよくある失敗と対策

第一に、Webフォントの配信形態を明確にしないまま契約し、CDN経由の第三者配信や複数ドメインでの共用が「範囲外利用」として後日問題化するケースがある。対策として第5条第2項のように配信ドメインやCDNの範囲を具体的に定める。

第二に、サブセット化(必要な文字のみを抽出する処理)を「改変」として一律禁止してしまい、実務上のWebフォント最適化ができなくなる契約が散見される。対策として第5条第1項のように、サブセット化を許容しつつ元データの復元可能性を排除する条件を付す形で調整する。

第三に、ロゴとしての恒常的使用と一時的な広告表示利用を区別せずに許諾してしまい、ブランドとしての商標的使用に対する追加対価を得られないケースがある。対策として第6条のようにロゴ利用を別枠のライセンスとして切り出す。

個別事案は専門家に確認してください。特にライセンス料の算定方式や、グループ会社・委託先での二次利用の扱いは事業モデルにより大きく異なる。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 許諾の対象となる媒体(印刷物・Web・アプリ・製品組込み等)を具体的に特定したか
  • [ ] ライセンス形態(デスクトップ/Web/組込み/パッケージ同梱)を選択し明記したか
  • [ ] Webフォントの配信ドメイン・CDN利用の可否を定めたか
  • [ ] サブセット化の可否と復元防止の条件を定めたか
  • [ ] ロゴ・商標としての恒常的使用の可否と追加ライセンス料の要否を確認したか
  • [ ] インストール台数・同時使用ユーザー数の上限を明記したか
  • [ ] グループ会社・委託先での利用を許諾範囲に含めるか確認したか
  • [ ] 契約終了後のフォントデータ削除義務と既発行物の扱いを定めたか
  • [ ] 著作権表示・クレジット表記の方法を確認したか
  • [ ] 使用料の算定方式(一括/年額/従量)と支払条件を確認したか