デリバリー事業者が個人の配達員へ料理の受取と配達を委託する業務委託契約書。フリーランス法の取引条件明示と食品衛生法の運搬時の衛生管理、事故時の責任を定める。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
フードデリバリー配達業務委託契約書
第1部: 書式本文
【 】(以下「甲」といい、フードデリバリー事業を運営する事業者とする)と【 】(以下「乙」といい、個人事業主として配達業務に従事する者とする)は、甲が提供するプラットフォームを通じた料理等の受取及び配達業務の委託に関し、次のとおり契約(以下「本契約」という)を締結する。
第1条(業務委託の内容) 甲は乙に対し、加盟飲食店等における料理の受取及び注文者への配達業務(以下「本件業務」という)を委託し、乙はこれを受託する。乙は業務の遂行方法及び時間配分について裁量を有する個人事業主であり、甲との間に雇用関係は存在しない。
第2条(取引条件の明示) 甲は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「フリーランス新法」という)に基づき、本契約締結時に、業務の内容、報酬の額及び算定方法、支払期日、契約期間その他同法が定める事項を書面又は電磁的方法により明示する。
第3条(業務の遂行) 乙は、甲のプラットフォームを通じて配達依頼を受諾するか否かを自由に決定できるものとし、依頼の受諾を強制されない。乙は自己の所有する車両、バイク又は自転車等を用いて本件業務を遂行し、業務遂行に必要な保険加入は乙の責任において行う。
第4条(運搬時の衛生管理) 乙は、食品衛生法の趣旨を踏まえ、料理の運搬にあたり保温・保冷バッグ等を用いて適切な温度管理を行い、料理を汚損・破損させないよう注意して取り扱うものとする。甲は、保温・保冷用品の基準及び取扱いに関する遵守事項を別途乙に提示する。
第5条(報酬) 甲は乙に対し、配達1件ごとの基本料金、距離加算、繁忙時加算等甲が定める算定方法に基づき算定した報酬を、【週次・月次】で、乙が登録する金融機関口座へ振り込む方法により支払う。報酬の算定方法を変更する場合、甲は事前に乙へ通知する。
第6条(事故発生時の対応及び責任) 乙は、配達中に交通事故その他の事故が発生したときは、直ちに警察及び甲に連絡するとともに、必要な応急措置を講じる。乙が第三者に損害を与えた場合の賠償責任は、自動車損害賠償保障法及び乙が加入する任意保険の定めるところにより、原則として乙が負う。ただし、甲の提供する配達指示システムの重大な不備等、甲の責めに帰すべき事由により事故が生じた場合はこの限りでない。
第7条(料理の毀損・遅延時の取扱い) 配達中の事故その他乙の責めに帰すべき事由により料理が毀損し、又は著しく遅延した場合、乙は甲の定める手続に従い報告するものとし、加盟店及び注文者への対応方針(再調理・返金等)は甲が別途定める規程による。
第8条(業務委託契約と労働者性) 甲及び乙は、本契約が業務委託契約であり、乙が労働基準法上の労働者に該当しないことを前提とすることを確認する。ただし、業務遂行の実態(具体的な業務指示の程度、time管理の拘束性、報酬の労務対償性等)によっては労働者性が認められる場合があることに留意し、甲は乙に対し画一的な時間拘束や業務命令に該当する指示を行わないものとする。
第9条(ハラスメント対応及び相談窓口) 甲は、乙が甲又は加盟店から著しい迷惑行為を受けた場合の相談窓口を設置し、フリーランス新法に基づき必要な体制を整備する。
第10条(中途解除) 甲又は乙は、【 】日前までに書面で通知することにより、本契約をいつでも解除できる。ただし、フリーランス新法の適用がある場合、甲による契約解除等については同法が定める予告期間その他の手続に従うものとする。
第11条(禁止事項) 乙は、本件業務の遂行にあたり、飲酒運転、著しい速度超過その他法令に違反する行為を行ってはならない。
第12条(合意管轄) 本契約に関する紛争は、【 】地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: デリバリー事業者の立場で有利にする修正
- 労働者性否定の補強: 第8条に「乙は複数の配達プラットフォームに同時登録することを妨げられない」旨を追加し、専属性がないことを明確化して労働者性の判断要素を弱める。
- 事故責任の明確化: 第6条に「乙は本件業務遂行前に対人・対物賠償を含む任意保険への加入を証明する書類を甲に提出する」との条項を加え、甲の予期しない賠償リスクを遮断する。
- 品質クレーム対応の乙負担化: 第7条に「乙の運搬方法の不備が原因と甲が合理的に判断した場合、再調理費用相当額を乙の報酬から控除できる」との条項を追加する。
B節: 配達員の立場で有利にする修正
- 取引条件明示の厳格化: 第2条に「報酬の算定方法・単価の変更は、変更日の【14】日前までに書面で通知しなければ効力を生じない」との条項を追加し、フリーランス新法の趣旨を上回る保護を確保する。
- 受諾強制の禁止の明文化: 第3条に「甲は、依頼の受諾率の低さのみを理由に、乙のアカウント停止その他の不利益な取扱いをしてはならない」との一文を加える。
- 保険負担の分担: 第6条に「甲は乙が加入する配達業務用の傷害保険料の一部を負担する」との条項を追加し、事故時の乙の負担を軽減する。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本書式は、デリバリー事業者がプラットフォームに登録する個人の配達員へ料理の受取・配達業務を委託する場面で用いる。配達員を実質的に時間・場所を拘束し、具体的な業務指示に従わせる運用を行う場合は、労働基準法上の労働者と評価され雇用契約に近い規律が及ぶ可能性があるため、業務委託契約書のみで足りるかは実態を踏まえて慎重に判断する必要がある。
根拠法令としては、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)による取引条件の明示義務、募集情報の的確表示、ハラスメント対策等の規定が中心となる。あわせて、労働基準法上の労働者性の判断は、業務諾否の自由の有無、業務遂行上の指揮監督の有無、時間的・場所的拘束の程度、報酬の労務対償性等の要素を総合的に考慮して行われるとされる裁判例・行政解釈の考え方を踏まえる必要がある。また、料理の運搬時の衛生管理については食品衛生法の趣旨に沿った温度管理・容器の衛生確保が求められ、配達中の交通事故については自動車損害賠償保障法や任意保険による処理が基本となる。
実務でよくある失敗として、第一に契約書上は業務委託としながら、実際には出勤シフトの厳格な指定や個別の業務命令に近い指示を行い、労働者性が争われる例がある。指示の内容・頻度を業務委託の枠内にとどめる運用と条項の整合性を保つ対策が必要である。第二に、報酬の算定方法や配達エリアの変更を一方的に行い、フリーランス新法上求められる明示・通知が不十分となる例がある。変更時の事前通知期間を条項化することが有効である。第三に、事故発生時の責任分担が曖昧で、乙が加入する保険の範囲や甲との費用分担についてトラブルになる例が多く、任意保険加入の証明提出義務や責任分担の基準を明記すべきである。労働者性の該当可否は個別の実態に依存するため、運用開始前に専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] フリーランス新法に基づく取引条件明示事項をすべて網羅しているか
- [ ] 乙が依頼を自由に受諾・拒否できる仕組みになっているか(労働者性を否定する実態と整合しているか)
- [ ] 業務遂行方法・時間配分に関する乙の裁量が確保されているか
- [ ] 運搬時の温度管理・衛生管理に関する遵守事項を明記したか
- [ ] 報酬の算定方法・支払時期・変更時の通知ルールを定めたか
- [ ] 事故発生時の連絡手順と責任分担(自賠責・任意保険)を明記したか
- [ ] 乙の任意保険加入状況を確認する仕組みがあるか
- [ ] 料理の毀損・遅延時の対応フローと費用負担を定めたか
- [ ] ハラスメント等の相談窓口を設置しているか
- [ ] 中途解除の手続と予告期間を定めたか