土地建物を無償で譲渡し所有権移転登記を行う場面の書式。民法第549条に基づく贈与の意思表示と登記手続・費用負担、負担の有無を明記します。

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不動産贈与契約書

第1部: 書式本文

【贈与者氏名】(以下「甲」という。)と【受贈者氏名】(以下「乙」という。)とは、甲が所有する下記不動産(以下「本不動産」という。)を乙に無償で譲渡することに関し、次のとおり贈与契約(以下「本契約」という。)を締結する。

記 所在:【〇〇市〇〇区〇〇】 地番:【〇〇番〇】 地目:【宅地】 地積:【〇〇〇.〇〇平方メートル】 家屋番号:【〇〇番】 種類:【居宅】 構造:【〇〇造〇階建】 床面積:【〇階〇〇.〇〇平方メートル】

第1条(贈与の合意) 甲は、本不動産を乙に無償で贈与することを約し、乙はこれを受諾した。

第2条(所有権の移転時期) 本不動産の所有権は、本契約締結日をもって甲から乙に移転する。

第3条(負担のないことの確認) 本贈与は、乙に何らの債務の履行その他の給付を負わせるものではなく、負担のない単純贈与であることを甲乙相互に確認する。

第4条(所有権移転登記) 1. 甲は、本契約締結後速やかに、乙に協力して本不動産につき贈与を原因とする所有権移転登記の申請手続を行う。 2. 甲は、前項の登記手続に必要な登記識別情報(又は登記済証)、印鑑証明書、固定資産評価証明書その他乙又は乙が依頼する司法書士から求められる書類を速やかに交付する。

第5条(引渡し) 甲は、本契約締結後【〇〇日】以内に、本不動産を現状有姿のまま乙に引き渡す。

第6条(登録免許税及び不動産取得税の負担) 1. 本不動産の所有権移転登記に係る登録免許税は、乙が負担する。 2. 本不動産の取得に伴い乙に課される不動産取得税は、乙が負担する。 3. 前2項に定めるほか本契約に関して生じる登記関連費用(司法書士報酬を含む。)は乙が負担する。

第7条(公租公課の精算) 本不動産に係る固定資産税及び都市計画税は、本契約締結日の前日までの期間に対応する分を甲が、当日以降の期間に対応する分を乙がそれぞれ負担するものとし、甲乙間で日割計算の上精算する。

第8条(契約不適合責任の限定) 本贈与は無償契約であることに鑑み、甲は、本不動産の種類又は品質に関する契約不適合について、民法第551条第1項の規定に従い、贈与の目的として特に定めた場合を除き責任を負わない。

第9条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団その他の反社会的勢力に該当せず、これらと関係を有しないことを表明し保証する。

第10条(協議及び合意管轄) 1. 本契約に定めのない事項は、甲乙誠意をもって協議し解決する。 2. 本契約に関する紛争については、本不動産の所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

以上の合意を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各自1通を保有する。

【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】

(甲) 住所:【     】   氏名:【     】  印

(乙) 住所:【     】   氏名:【     】  印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A. 贈与者(所有者)向け書き換え

A-1. 生活を保障してほしいので同居を条件にしたい場合

第3条修正例:「本贈与は、乙が甲と同居し扶養することを条件とする負担付贈与とし、負担の内容は別途負担付贈与契約書による。」 解説: 同居・扶養等の義務を課す場合は単純贈与ではなく負担付贈与に該当するため、本書式ではなく負担付贈与契約書を用いるべきである。

A-2. 持分の一部のみを贈与したい場合

第1条修正例:「甲は、本不動産のうち甲の共有持分【2分の1】を乙に贈与する。」 解説: 持分贈与の場合は登記申請時に持分割合の記載が必要となるため、契約書上も持分を明確にしておく必要がある。

B. 受贈者向け書き換え

B-1. 住宅ローンの残債がある不動産を受け取る場合

第6条追加例:「本不動産に設定された抵当権の被担保債務の承継又は完済については、甲乙間で別途協議し、その内容を覚書として残す。」 解説: 抵当権付き不動産の贈与は債務の扱いが不明確だと負担付贈与と評価される余地があるため、別途明確化しておく。

B-2. 遠方に住んでおり手続を司法書士に一任したい場合

第4条2項追加例:「乙は、登記手続を司法書士【氏名】に依頼するものとし、甲は当該司法書士からの資料提供の求めに速やかに応じる。」 解説: 受贈者が遠方に居住する場合、司法書士とのやり取りの窓口を明確にしておくと登記手続が滞りにくい。

C. 司法書士・実務担当者向け書き換え

C-1. 登記識別情報を紛失している場合

第4条2項修正例:「甲が登記識別情報を提供できない場合、甲は司法書士による本人確認情報の作成又は事前通知制度の利用に必要な協力を行う。」 解説: 権利証を紛失しているケースは実務上多く、代替手続があらかじめ契約書に規定されていると準備がしやすい。

C-2. 始期付所有権移転仮登記も検討する場合

第2条注記例:「本契約に基づく所有権移転登記が贈与税の申告期限までに完了しない見込みがある場合、甲乙は仮登記の可否について司法書士と協議する。」 解説: 登記完了の遅延が見込まれる案件では、仮登記の要否を早期に司法書士へ相談できるよう手当てしておくと安心である。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

使う場面・使ってはいけない場面の解説 本書式は、土地又は建物の所有権を無償かつ負担なしで移転し、所有権移転登記を行う場面で用いる。受贈者に扶養や債務引受等の義務を課す場合は負担付贈与契約書を、贈与者の死亡を条件に承継させる場合は死因贈与契約書をそれぞれ用いるべきであり、本書式では対応できない。

根拠法令の解説 贈与契約は民法第549条により諾成契約として成立する。不動産の権利変動は不動産登記法に基づく登記を経なければ第三者に対抗できないため(民法第177条)、本書式では登記手続への協力義務を明記している。所有権移転登記に係る登録免許税は登録免許税法に基づき課され、不動産取得税は地方税法に基づき都道府県が課す税である。いずれも法令上の納税義務者と契約上の負担者は必ずしも一致しないため、第6条のように負担者を特約で明確にする必要がある。

実務でよくある失敗と対策 第一に、登記識別情報や印鑑証明書などの必要書類が贈与者の手元で散逸し、司法書士への引継ぎが遅れて登記が滞る失敗がある。第4条2項のように交付すべき書類を明記する。第二に、登録免許税や不動産取得税の負担者を定めずに贈与を実行し、後日どちらが支払うかで揉める失敗がある。第6条のように負担者を明記する。第三に、扶養や介護といった条件を口頭で付けながら契約書上は単純贈与としてしまい、贈与の性質(単純贈与か負担付贈与か)が争われる失敗がある。第3条のように負担の有無を明確に確認する。個別の登記手続や税額の詳細は司法書士・税理士等の専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 不動産の表示(所在・地番・地目・地積、建物の家屋番号等)を登記記録どおり正確に記載したか
  • [ ] 負担のない単純贈与であることを明記したか(負担がある場合は別書式を使用したか)
  • [ ] 所有権移転登記への協力義務と必要書類の引継ぎ方法を定めたか
  • [ ] 登記識別情報(権利証)を紛失している場合の代替手続を想定したか
  • [ ] 登録免許税及び不動産取得税の負担者を明記したか
  • [ ] 固定資産税・都市計画税の日割精算の起算日を明記したか
  • [ ] 抵当権等の担保権が設定されていないか登記事項証明書で確認したか
  • [ ] 契約不適合責任の範囲(民法第551条)を確認したか
  • [ ] 持分のみを贈与する場合、持分割合を明記したか
  • [ ] 司法書士への依頼予定の有無と依頼先を確認したか
  • [ ] 登記完了までの見込み期間と贈与税申告期限との関係を確認したか