産業医の意見等を踏まえ復職の可否と就業上の配慮内容を本人へ伝える場面の書式。労働安全衛生法第66条の5の就業上の措置と安全配慮義務を踏まえて構成する。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
復職可否判定通知書
第1部: 書式本文
宛先:【従業員氏名】殿 差出人:【会社名】【代表者役職・氏名】 作成日:【西暦】年【 】月【 】日
復職可否判定通知書
貴殿より提出された復職申請書(提出日【西暦】年【 】月【 】日)について、下記の通り判定いたしましたので通知いたします。
- 判定の基礎とした資料:主治医診断書(発行日【 】、発行医療機関【 】)、産業医意見書(面談日【 】、産業医氏名【 】)、復職申請書
- 産業医の意見の要旨:【就業可能/条件付き就業可能/現時点では就業困難 等】
- 判定結果:【復職を認める/復職を認めない】
- (復職を認める場合)復職日:【西暦】年【 】月【 】日
- (復職を認める場合)配置部署・職務内容:【従前の部署・職務/配置転換の内容】
- (復職を認める場合)就業上の措置の内容:【労働時間の短縮、時間外労働・深夜業の制限、出張の制限、業務内容の軽減等】(労働安全衛生法第66条の5第1項に基づく措置)
- (復職を認める場合)就業上の措置の実施期間・見直し時期:【 】か月間実施し、【西暦】年【 】月【 】日を目途に産業医面談を再実施して見直す
- (復職を認めない場合)認めない理由の概要:産業医意見および業務内容との照合の結果、現時点で就業可能な状態にないと判断した旨
- (復職を認めない場合)今後の取扱い:休職期間満了日までの取扱い(休職継続、期間満了時の取扱い)を別途「休職期間満了通知書」等で案内する旨
- (復職を認めない場合)再判定の機会:症状の改善等により就業可能となった場合は、再度診断書を添えて復職申請書を提出できる旨
- 本判定に関する説明・面談の希望:判定内容について説明を希望する場合は下記問い合わせ先に連絡すること
- 問い合わせ先:【部署名・氏名・連絡先】
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節:復職を認める場合
- 記載例:項目6に「本措置は本人の同意を得た上で実施するものであり、内容について疑義がある場合は産業医を交えて再度協議する」旨を追記する。
- 一言解説:就業上の措置は使用者が一方的に決定するのではなく、本人の意向や実情も踏まえて調整することが望ましく、その旨を明記することで復職後の運用トラブルを避けやすくする。
- 記載例:項目7の見直し時期に加え、「見直し前であっても体調に変化があれば速やかに連絡すること」を追記する。
- 一言解説:就業上の措置は固定的なものではなく、体調の変化に応じて機動的に見直す必要があるため、あらかじめ随時連絡できる旨を伝えておく。
B節:復職を認めない場合
- 記載例:項目8に「産業医からは、現在の業務内容では〇〇の観点から就業が困難との意見であった」など、業務内容との関係で就業困難と判断した理由の骨子を可能な範囲で具体的に記載する。
- 一言解説:復職を認めない判定は本人にとって影響が大きいため、抽象的な理由のみでなく、産業医意見の要旨と業務内容との関係を示すことで判断過程の説明責任を果たしやすくなる。
- 記載例:項目10に「再判定にあたっては、前回判定からの症状の変化が分かる資料の提出を求める」旨を追記する。
- 一言解説:再判定の基準を明確にしておくことで、単なる時間経過のみを理由とした再申請と、実質的な症状改善を示す申請とを区別しやすくする。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、休職中の従業員から提出された復職申請書を受けて、産業医の意見等を踏まえた復職の可否および復職を認める場合の就業上の措置の内容を本人に伝える場面で使用する。産業医面談や職務内容との照合を経ずに、診断書のみを根拠として機械的に可否を決定した通知として用いるのは適切ではない。復職可否の判定は、休職から通常勤務への移行を左右する重要な意思決定であり、判定の結果次第では休職期間の再延長や、場合によっては休職期間満了に伴う退職の可能性にもつながるため、判定に至る経緯を丁寧に記録し、本人に対して結果と理由を分かりやすく伝えることが、その後の紛争予防の観点からも重要である。労働安全衛生法第66条の5第1項は、事業者が健康診断の結果(復職判定の場面では産業医の意見)に基づき、労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮その他の就業上の措置を講じなければならない旨を定めており、本書式の項目6・項目7はこの規定を踏まえた記載項目として位置付けられる。また、復職後に配慮を欠いた業務に就かせて症状が悪化した場合には、労働契約法第5条の安全配慮義務違反が問題となり得るため、就業上の措置を講じた事実とその見直し時期を記録に残しておくことには証拠上の意味がある。
加えて、就業上の措置は復職時点の一回限りの決定として固定するのではなく、復職後の経過を踏まえて段階的に見直すことが想定されている。復職直後は業務量や労働時間を制限し、産業医のフォローアップ面談の結果を踏まえて徐々に通常勤務に近づけていくという運用は、性急な通常勤務への復帰による再休職を防ぐ観点からも有効であり、項目7の見直し時期の設定にこの考え方を反映させることができる。
実務でよくある失敗の一つは、産業医の意見を聴取せず、主治医の診断書のみで復職の可否を判定してしまうことである。項目1・項目2で産業医意見書の存在と要旨を明記することで、判定過程に産業医の関与があったことを記録として残す。第二に、復職を認める場合に就業上の措置を口頭でのみ伝え、後日その内容や実施期間について本人と会社の認識が食い違う失敗がある。項目6・項目7で措置の具体的内容と見直し時期を書面化することで、この種の齟齬を防ぐ。第三に、復職を認めない場合に理由を一切示さず、本人が納得できないまま休職が継続し、感情的な対立が生じる例がある。B節のように産業医意見の要旨を可能な範囲で示し、再判定の機会と基準を明記することで、判断過程の透明性を確保する。第四に、就業上の措置を決定した後、実際の職場でその措置が守られているかを確認しないまま放置してしまう例もある。項目7で見直し時期を定め、実施状況を定期的にフォローアップする体制を整えておくことが、措置の実効性を確保するうえで欠かせない。
また、本書式は「復職申請書」に対する会社としての最終的な回答に位置付けられるものであり、両者は対をなす書式として運用する必要がある。復職申請書が本人の希望や主治医の診断内容を出発点とするのに対し、本書式は産業医の医学的知見に基づく専門的意見と、実際の職務内容・職場環境とを照合したうえでの会社の最終判断を示すものである点で性質が異なる。この違いを意識せず、復職申請書の内容をそのまま追認するだけの通知としてしまうと、産業医の関与や会社としての独自の検討過程が記録に残らず、後に判定の相当性が問題となった際に説明が困難になる。
就業上の措置の内容についても、抽象的に「配慮する」とだけ記載するのではなく、労働時間、業務内容、通院への配慮等、具体的に何を、いつまで実施するのかを特定して記載することが重要である。労働安全衛生規則第52条の18においても、事業者は産業医から受けた勧告の内容等を衛生委員会等に報告するよう努めるものとされており、就業上の措置を場当たり的にではなく、組織的な検討プロセスを経て決定する運用が望ましいとされている。本書式の項目6・項目7をこうした社内プロセスの記録と連動させることで、措置内容の合理性を説明しやすくなる。
なお、復職可否の判定や就業上の措置の内容は、症状の程度、職種、業務内容等の個別事情によって異なり、本書式のみで適法性が担保されるものではないため、実際の判定にあたっては産業医の意見を踏まえたうえで弁護士等の専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 産業医面談を実施し、産業医意見書を取得したうえで判定しているか
- [ ] 主治医の診断書と産業医意見の内容に齟齬がある場合、その調整過程を記録しているか
- [ ] 判定結果(復職可否)を明確に記載しているか
- [ ] 復職を認める場合、配置部署・職務内容・復職日を具体的に記載したか
- [ ] 就業上の措置(労働時間短縮、業務軽減等)の内容と実施期間を明記したか
- [ ] 就業上の措置の見直し時期・再面談の予定を定めたか
- [ ] 復職を認めない場合、理由の骨子を本人が理解できる程度に記載したか
- [ ] 復職を認めない場合の今後の取扱い(休職継続等)との関連を示したか
- [ ] 再判定の申請方法・提出書類の基準を案内したか
- [ ] 判定内容について本人が説明を求める窓口を明示したか
- [ ] 就業上の措置の内容について本人の同意・意向確認の機会を設けたか