不妊治療を受ける社員を支援する企業向け。通院への休暇や時差出勤の申出方法を定め、次世代育成支援対策推進法の行動計画と認定取得に活用できます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
不妊治療と仕事の両立支援規程
第1部: 書式本文
第1条(目的) 本規程は、【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)の従業員が不妊治療を受けながら就業を継続できるよう、通院への配慮及び柔軟な勤務制度について定め、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の趣旨に沿って従業員の職業生活と治療の両立を支援することを目的とする。
第2条(定義) 本規程において「不妊治療」とは、不妊症の検査及び治療(生殖補助医療を含む。)をいう。
第3条(適用対象者) 本規程は、不妊治療を受ける従業員であって、両立支援を希望する者に適用する。性別及び雇用形態を問わず適用する。
第4条(不妊治療連絡カードの活用) 1. 従業員は、両立支援の申出に当たり、厚生労働省の様式に準じた「不妊治療連絡カード」又はこれに準じる書面により、主治医の意見を会社に伝えることができる。 2. 会社は、不妊治療連絡カードの提出を必須とせず、従業員からの口頭の申出のみによる対応も妨げない。
第5条(通院休暇) 1. 会社は、不妊治療のための通院に必要な休暇として、1年度につき【5】日(体外受精・顕微授精等、頻回の通院を要する治療を行う場合は【10】日)を限度に通院休暇を付与する。 2. 通院休暇は、半日又は時間単位で取得することができる。 3. 通院休暇は、【有給とし通常の賃金の全額を支払う/無給とする】ものとする。
第6条(時差出勤) 会社は、通院のため始業・終業時刻の調整を要する従業員に対し、始業時刻を【 】時から【 】時の範囲で繰り上げ又は繰り下げることを認めることができる。
第7条(所定外労働の免除) 会社は、不妊治療を受ける従業員から請求があったときは、治療のスケジュールに配慮し、可能な範囲で所定外労働を免除する。
第8条(申請手続) 1. 通院休暇その他の措置を希望する従業員は、【人事部】に対し、取得を予定する日又は期間の【3】日前までに申請するものとする。 2. 治療のスケジュールが直前に変更される特性に鑑み、緊急でやむを得ない場合は、事後速やかな届出による申請を認める。 3. 会社は、通院休暇の申請に当たり、治療内容の詳細な開示や医師の診断書の提出を一律には求めないものとする。
第9条(プライバシーの保護) 1. 会社は、従業員が不妊治療を受けている事実及びその内容を、機微な個人情報として、本人の同意を得た範囲でのみ関係者に共有する。 2. 通院休暇の取得理由について、所属長及び同僚に対し詳細な説明を求めない運用とする。
第10条(不利益取扱いの禁止) 会社は、不妊治療を受けていること又は通院休暇等を取得したことを理由として、当該従業員に対し解雇その他不利益な取扱いを行わない。
第11条(相談窓口) 会社は、【人事部】に不妊治療と仕事の両立に関する相談窓口を設置し、担当者は男女いずれの相談者にも配慮できるよう選任する。
第12条(管理職への周知) 会社は、所属長を含む管理職に対し、不妊治療の特性(通院頻度が不規則であること、精神的負担を伴うこと等)についての研修を実施する。
第13条(行動計画との関係) 会社は、次世代育成支援対策推進法第12条に定める一般事業主行動計画において、本規程に基づく両立支援の取組みを目標の一つとして位置づけ、実施状況を定期的に点検する。
第14条(改廃) 本規程の改廃は、就業規則の変更手続に準じて行う。
第15条(附則) 本規程は【西暦年】年【 】月【 】日から施行する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: くるみん認定取得企業向け(認定基準の充足を目指す企業)
A-1 第13条の修正例 「本規程に基づく通院休暇の年間取得実績及び利用者数は、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の点検項目として毎年度集計し、くるみん認定(同法第13条)又はプラチナくるみん認定(同法第20条)の基準達成状況の確認に用いる。」 一言解説: くるみん認定の取得・更新を目指す企業では、本規程の運用実績を行動計画の点検指標として明確に位置づけることで、認定基準への適合を客観的に説明しやすくなる。
A-2 第5条の修正例 「通院休暇の取得日数及び取得率は、四半期ごとに人事部が集計し、次世代育成支援対策推進法に基づく認定申請に必要な実績データとして保存する。」 一言解説: 認定申請では取組みの実施状況を裏付ける記録が求められるため、規程上で取得実績の集計・保存を明記しておくと申請準備がスムーズになる。
B節: 中小企業向け(専任の人事担当者を置きにくい企業)
B-1 第11条の修正例 「相談窓口は代表者又は総務担当者が兼務するものとし、相談を受けた者は他の従業員に相談内容を伝えないよう特に留意する。」 一言解説: 少人数の企業では相談窓口の専任化が難しいため、兼務であっても守秘義務の徹底を明記し、相談しやすい環境を確保する必要がある。
B-2 第5条の修正例 「通院休暇の日数は、1年度につき【5】日を上限とし、当該休暇を使い切った場合は、保有する年次有給休暇の時間単位取得(労働基準法第39条第4項)により通院時間を確保することができる。」 一言解説: 中小企業では通院休暇の日数を手厚く設定しにくいため、時間単位年休との組み合わせにより実質的な通院時間を確保できる設計とすることで運用負担を抑えられる。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本規程を導入すべき場面は、不妊治療を受ける従業員が通院のたびに私用として年次有給休暇を取得せざるを得ず、治療の頻度や必要性を明かしたくないという事情から取得しづらさを感じている企業、あるいはくるみん認定等の取得・更新に向けて具体的な両立支援策を行動計画に盛り込む必要がある企業である。逆に、従業員数が極めて少なく画一的な休暇制度を設けるより個別の話し合いで柔軟に対応する方が実情に合う企業では、規程化を急がず個別対応を先行させる方が適合する場合もある。
根拠法令としては、次世代育成支援対策推進法第12条が、常時雇用する労働者が101人以上の事業主に対し、仕事と子育て(不妊治療を含む次世代育成支援の取組みを含む)の両立を図るための一般事業主行動計画の策定・届出を義務付けており、100人以下の事業主には努力義務を課している。同法第13条及び第20条は、行動計画に定めた目標を達成する等の基準を満たした事業主について、くるみん認定又はプラチナくるみん認定を厚生労働大臣が行うことを定めており、令和4年度以降の認定基準には不妊治療と仕事の両立に配慮した措置が明示的に含まれている。なお、通院休暇そのものは労働基準法その他の法令上の義務ではなく、あくまで事業主が任意に設ける法定外の休暇制度である点に留意する必要がある。
実務でよくある失敗の一つ目は、通院休暇の取得申請に際して治療内容や通院理由の詳細な説明・診断書の提出を求め、従業員が心理的負担からかえって制度を利用しづらくなることである。第8条・第9条のように、詳細な開示を一律には求めない運用を明記することで対応できる。
二つ目の失敗は、治療スケジュールが医療機関の都合により直前に変更されるという不妊治療特有の事情を考慮せず、事前申請の期限を厳格に運用し、結果として休暇が使われなくなることである。第8条のように緊急時の事後届出を認める例外を設けることが対策となる。
三つ目の失敗は、通院休暇の取得理由が所属長や同僚に伝わり、意図せず職場内で治療の事実が知られてしまうことである。第9条のように取得理由の説明を求めない運用を明記し、休暇申請の処理を人事部内で完結させる等の運用上の工夫が必要となる。
くるみん認定の基準適合や行動計画への具体的な記載方法については、個別事案は専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 不妊治療の定義(検査・治療・生殖補助医療を含むか)を明記したか
- [ ] 通院休暇の日数上限と有給・無給の別を定めたか
- [ ] 通院休暇の取得単位(半日・時間単位)を定めたか
- [ ] 申請手続における事前申請の期限と緊急時の事後届出の例外を定めたか
- [ ] 診断書等の詳細な開示を一律には求めない旨を明記したか
- [ ] プライバシー保護(所属長・同僚への非開示)の運用を定めたか
- [ ] 不利益取扱いの禁止を明記したか
- [ ] 相談窓口の設置と担当者選任の配慮を定めたか
- [ ] くるみん認定等の行動計画との関係を位置づけたか(該当する場合)
- [ ] 管理職向けの研修実施を定めたか