納入後に発見された不良品の返品・交換・代金減額を定める取決書。民法第562条の追完請求と商法第526条の通知義務を踏まえ、処理期限と費用負担を規定します。
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不良品対応・返品に関する取決書
第1部: 書式本文
不良品対応・返品に関する取決書
買主【買主名】(以下「甲」という。)及び売主【売主名】(以下「乙」という。)は、乙が甲に納入する下記商品(以下「本商品」という。)について、納入後に不良品が発見された場合の対応に関し、以下のとおり取り決める。
記 商品名称:【商品名称】 基本契約:【取引基本契約の名称・締結日(ある場合)】
第1条(目的) 本取決書は、本商品の納入後に品質不良、数量不足その他契約内容に適合しない事由(以下「不良」という。)が判明した場合における検査、通知、返品、交換及び代金減額の手続を定めることを目的とする。
第2条(検査義務) 1. 甲は、本商品の受領後、遅滞なくこれを検査する。 2. 甲が商人である場合、本条の検査及び次条の通知は、商法第526条第1項に基づく買主の検査及び通知義務を具体化するものとする。
第3条(通知期限) 1. 甲は、検査により不良を発見したときは、直ちに乙に通知しなければならない。 2. 直ちに発見することができない不良については、受領後【6】か月以内に発見し、乙に通知したときに限り、次条以下の請求をすることができる。 3. 乙が本商品に不良があることを知って納入したときは、前二項の期間の制限を受けない。
第4条(不良の内容と選択できる請求) 1. 甲は、不良の内容に応じ、次の各号のいずれかを選択して乙に請求することができる。 一 修補、代替品の納入その他の方法による履行の追完(民法第562条) 二 相当の期間を定めて追完を催告し、その期間内に追完がないときの代金減額(民法第563条第1項) 三 追完が不能であるとき等、民法第563条第2項各号に該当するときの、催告を要しない代金減額 四 不良により契約をした目的を達することができないときの契約解除及び損害賠償(民法第564条、第541条、第542条、第415条) 2. 甲が追完の方法を指定した場合であっても、甲に不相当な負担を課すものでないときは、乙は、甲が指定した方法と異なる方法による追完をすることができる。
第5条(返品・交換の手続) 1. 甲が本商品の返品を求めるときは、不良の内容、数量及び発見日を記載した返品依頼書を乙に交付する。 2. 乙は、返品依頼書を受領した日から【5】営業日以内に、返品の可否及び交換品の納期を甲に回答する。 3. 返品対象商品の乙への返送費用は、乙の負担とする。ただし、不良の原因が専ら甲の保管方法又は使用方法にある場合は、この限りでない。
第6条(代金減額及び支払時期) 1. 代金減額を行う場合、乙は、減額後の代金額及び算定根拠を記載した書面を甲に交付する。 2. 既に代金の支払が完了している場合、乙は、減額分を【15】営業日以内に甲に返還し、又は次回以降の代金請求から控除する。
第7条(不良品の処分) 1. 返品された不良品の所有権は、乙が返品を承諾した時点で乙に復帰する。 2. 甲は、乙の指示があるまで不良品を保管するものとし、乙の指示なく廃棄してはならない。 3. 乙が返品依頼書の受領から【10】営業日以内に指示をしないときは、甲は、乙の費用負担において不良品を廃棄することができる。
第8条(処理期限徒過の効果) 乙が第5条第2項の回答期限又は第6条第2項の支払期限を正当な理由なく徒過したときは、甲は、遅延日数に応じた遅延損害金(年【3】%)を請求することができる。
第9条(数量不足への準用) 本商品の納入数量が発注数量に不足する場合、その不足部分については、本取決書中の不良に関する規定を準用する。
第10条(協議事項) 本取決書に定めのない事項については、甲乙誠実に協議の上、これを解決する。
以上を証するため、本取決書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。
【作成日】
甲(買主) 住所: 名称: 代表者: 印
乙(売主) 住所: 名称: 代表者: 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節 買主(返品する側)向け
多品種を頻繁に発注する買主の立場では、検査に時間を要する商品(組み込んで初めて不具合が判明する部品等)を想定し、第3条の通知期限を長期化し、かつ起算点を明確にする。 before:「直ちに発見することができない不良については、受領後【6】か月以内に発見し、乙に通知したときに限り、次条以下の請求をすることができる。」 after:「直ちに発見することができない不良(他の製品への組込み後又は稼働後に初めて顕在化する不良を含む。)については、受領後【1】年以内に発見し、乙に通知したときに限り、次条以下の請求をすることができる。起算点は本商品の受領日とし、組込み先製品への搭載時期にかかわらない。」 買主としては、検査可能性が現実的に限られる商品類型について、通知期限の起算点と長さを明記し、後日「発見が遅い」との抗弁を受けにくくしておくことが望ましい。
B節 売主(引き取る側)向け
多数の買主に定型品を大量供給する売主の立場では、返品受入れの条件を限定し、代替品在庫がない場合の対応を明確化する。 before:「乙は、返品依頼書を受領した日から【5】営業日以内に、返品の可否及び交換品の納期を甲に回答する。」 after:「乙は、返品依頼書を受領した日から【5】営業日以内に、乙の在庫状況を踏まえた交換品の納期又は交換品の手配が困難な場合における代金減額若しくは返金の提案を甲に回答する。乙は、本商品と同一仕様の代替品の供給を保証するものではない。」 売主としては、常に同一仕様の代替品を即時に用意できるとは限らないため、交換以外の解決手段(代金減額・返金)を選択肢として明記しておくことでリスクを分散できる。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、継続的な物品売買取引において、納入後に発見された不良品の返品・交換・代金減額の実務手続を、民法及び商法上の権利義務を前提に具体化する場面で使用する。取引基本契約に不良品対応の詳細手続が定められていない場合や、個別の取引条件書だけでは処理期限・費用負担が不明確な場合に、補完的に締結することが想定される。他方、消費者を相手方とする販売(BtoC)には特定商取引法上のクーリングオフ等の別の規律が適用されるため、本書式はBtoB取引を前提とする点に留意し、消費者向け取引にはそのまま流用しない。
根拠法令は、買主の追完請求権を定める民法第562条、代金減額請求権を定める民法第563条、履行遅滞・履行不能に基づく解除及び損害賠償を定める民法第541条、第542条、第415条、並びに商人間売買における買主の検査・通知義務を定める商法第526条である。商法第526条第2項の規定により、直ちに発見できない不良についても6か月以内に発見・通知しなければ権利行使ができなくなる点が、本取決書における通知期限設定の出発点となる。
実務でよくある失敗として、第一に、検査・通知の期限を定めないまま取引を継続し、不良発見が遅れた場合に商法第526条の趣旨により買主が権利行使できなくなるケースがある。対策として第3条のように通知期限と起算点を明記する。第二に、返品後の不良品の所有権・処分権の所在が曖昧なまま放置され、保管コストや廃棄責任を巡って争いになるケースがある。対策として第7条のように所有権の復帰時期と処分手続を明確にする。第三に、代金減額の算定根拠を示さずに一方的に減額処理を行い、相手方が納得せず支払を巡る紛争に発展するケースがある。対策として第6条のように算定根拠を記載した書面の交付を義務付ける。
なお、不良の程度が契約解除に足りるか(契約目的達成不能の該当性)は個別の事実関係によって判断が分かれるため、個別事案は専門家に確認の上で対応方針を決定することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 検査の実施時期及び方法を明記しているか
- [ ] 通知期限とその起算点(受領日か発見日か)を明確にしているか
- [ ] 商法第526条が適用される商人間取引かどうかを確認したか
- [ ] 追完・代金減額・解除の選択順序及び要件を民法の条文に沿って整理しているか
- [ ] 返品依頼書の記載事項(不良内容・数量・発見日)を明記しているか
- [ ] 返品可否・交換品納期の回答期限を定めているか
- [ ] 返送費用の負担者(原因が買主にある場合の例外を含む)を明記しているか
- [ ] 代金減額の算定根拠の開示方法及び返還・控除の時期を定めているか
- [ ] 不良品の所有権復帰時期及び処分手続を定めているか
- [ ] 処理期限徒過時の遅延損害金その他の効果を定めているか
- [ ] 数量不足その他の不適合類型への準用の要否を検討したか