受贈者に介護や借入返済などの義務を課して財産を贈る場面の書式。民法第553条の負担付贈与に対応し、負担不履行時の解除条項まで整えます。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
負担付贈与契約書
第1部: 書式本文
【贈与者氏名】(以下「甲」という。)と【受贈者氏名】(以下「乙」という。)とは、甲が乙に対し財産を贈与するとともに、乙が一定の負担を履行することに関し、次のとおり負担付贈与契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(贈与及び負担の合意) 甲は、乙に対し、下記第2条記載の財産(以下「本贈与財産」という。)を無償で贈与することを約し、乙は、第3条記載の負担(以下「本負担」という。)を履行することを条件としてこれを受諾した。
第2条(贈与の目的物) 本贈与財産は、甲が【〇〇銀行〇〇支店】に対して負う借入金債務(元本残高金【〇〇〇】円、以下「本債務」という。)を除いた、甲名義の預金口座に係る金【〇〇〇】円とする。
第3条(負担の内容) 乙は、本贈与財産の交付を受ける負担として、次の義務を履行する。 1. 本債務について、甲に代わり金融機関所定の手続に従い債務引受け又は返済を行うこと。 2. 前号の返済が完了するまで、その履行状況を【3か月】ごとに甲に報告すること。
第4条(交付の時期) 甲は、乙が第3条第1号の債務引受け又は返済の手続に着手したことを確認した後、【〇〇日】以内に本贈与財産を乙名義の口座に振込送金する方法により交付する。
第5条(双務契約規定の準用) 本契約については、民法第553条の規定により、その性質に反しない限り双務契約に関する規定(同時履行の抗弁、危険負担等を含む。)が準用されることを甲乙は確認する。
第6条(贈与者の担保責任) 甲は、本贈与財産について、民法第551条第2項の規定に従い、本負担の限度において、売主と同様の担保責任を負う。
第7条(負担の不履行と解除) 1. 乙が本負担を履行しないときは、甲は相当の期間を定めてその履行を催告し、その期間内に履行がないときは、民法第541条の規定に準じ本契約を解除することができる。 2. 前項により本契約が解除された場合、乙は既に交付を受けた本贈与財産(既に費消した部分については相当額の金銭)を甲に返還する。
第8条(負担の変更) 本負担の内容を変更する必要が生じた場合、甲乙協議の上、書面によりこれを変更することができる。
第9条(公租公課) 本契約に関連して生じる贈与税その他の公租公課は、法令の定めに従い乙が負担する。ただし、負担付贈与における贈与税の課税価格は、本贈与財産の価額から本負担の価額を控除した金額を基礎とすることを甲乙は確認する。
第10条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団その他の反社会的勢力に該当せず、これらと関係を有しないことを表明し保証する。
第11条(協議及び合意管轄) 1. 本契約に定めのない事項は、甲乙誠意をもって協議し解決する。 2. 本契約に関する紛争については、【〇〇地方裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上の合意を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各自1通を保有する。
【〇〇〇〇年〇〇月〇〇日】
(甲) 住所:【 】 氏名:【 】 印
(乙) 住所:【 】 氏名:【 】 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 贈与者向け書き換え
A-1. 介護・扶養を負担とする場合
第3条修正例:「乙は、本贈与財産の交付を受ける負担として、甲の生存中、甲と同居し、甲の日常生活の世話及び通院の付添いを行う。」 解説: 介護等の役務を負担とする場合、履行の有無を客観的に判定しにくいため、頻度や具体的な内容(週何回の訪問等)をできる限り特定して記載する。
A-2. 負担の履行を分割で確認したい場合
第4条修正例:「甲は、乙による本負担の履行状況を確認できた範囲に応じ、本贈与財産を分割して交付する。」 解説: 負担の履行前に全額を一括交付すると、その後不履行があっても返還請求が実効性を欠くおそれがあるため、履行確認と交付を連動させる。
B. 受贈者(負担を負う側)向け書き換え
B-1. 負担の履行が客観的な事情で困難になった場合の免責
第7条1項但書追加例:「ただし、乙の責めに帰することができない事由により本負担の履行が困難となったときは、甲乙協議の上、本負担の内容を見直すものとし、直ちに解除することはできない。」 解説: 負担の不履行が受贈者の落ち度によらない場合にまで即座に解除・返還を求められると乙に酷であるため、協議による調整の余地を残す。
B-2. 贈与財産に契約不適合があった場合の責任範囲を明確にしたい場合
第6条修正例:「甲の担保責任は、本負担の価額に相当する範囲に限られ、本贈与財産の価額のうち本負担の価額を超える部分については、甲は担保責任を負わない。」 解説: 民法第551条2項が定める担保責任は負担の限度に加重されるにとどまるため、その上限を契約書上でも明確にしておくと紛争を避けやすい。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面・使ってはいけない場面の解説 本書式は、贈与者が財産を無償で譲渡する代わりに、受贈者に介護、扶養、債務の引受け・返済その他の一定の義務を課す場面で用いる。何らの負担も伴わない単純な贈与には第2部の単純贈与型の書式を用いるべきであり、本書式を用いると不要な履行義務や解除リスクを受贈者に負わせることになるため適さない。
根拠法令の解説 負担付贈与は、民法第553条により、その性質に反しない限り双務契約に関する規定が準用される。これにより、贈与者の債務不履行に基づく解除(民法第541条)の考え方が負担の不履行の場面にも及び、本書式第7条はこれを具体化したものである。また、民法第551条第2項は、負担付贈与について贈与者が「その負担の限度において、売主と同様の担保責任を負う」と定めており、無償契約でありながら贈与財産に契約不適合があった場合の責任が一部加重される点で単純贈与と異なる。
実務でよくある失敗と対策 第一に、負担の内容を「介護をすること」等抽象的にとどめ、履行の有無をめぐって当事者間の認識が食い違う失敗がある。第3条のように負担の内容を具体的な作為・給付として特定する。第二に、負担の不履行に備えた解除条項を設けず、受贈者が負担を履行しないまま財産だけを保持する事態が生じる失敗がある。第7条のように催告解除と返還義務を明記する。第三に、民法第551条2項による担保責任の加重を見落とし、贈与財産に契約不適合があった際の責任の所在が不明確になる失敗がある。第6条のように担保責任の範囲を明記する。負担の評価額や解除時の清算方法は個別事情により異なるため、専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 贈与財産と負担の内容をそれぞれ具体的に特定したか
- [ ] 負担が役務(介護等)の場合、頻度・内容など履行の有無を判定できる程度に記載したか
- [ ] 民法第553条により双務契約の規定が準用される旨を確認したか
- [ ] 負担の不履行時の催告解除及び返還義務(民法第541条準用)を明記したか
- [ ] 贈与者の担保責任が負担の限度で加重される点(民法第551条2項)を反映したか
- [ ] 負担の履行状況を確認する方法(報告義務等)を定めたか
- [ ] 贈与財産の交付時期と負担の履行時期の先後関係を整理したか
- [ ] 負担付贈与に係る贈与税の課税価格算定方法(負担額控除)を確認したか
- [ ] 負担の内容を事後的に変更する場合の手続を定めたか
- [ ] 受贈者の責めに帰さない事由による履行困難時の取扱いを検討したか