能力不足や傷病など懲戒以外の理由で労働契約を終了する通知書です。労働契約法第16条の客観的合理性を意識した記載構成としています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
普通解雇通知書
第1部: 書式本文
【〇年〇月〇日】
【対象労働者住所】 【対象労働者氏名】殿
【会社所在地】 【会社名】 代表取締役 【氏名】 印
解雇通知書
貴殿に対し、下記のとおり労働契約を解雇する旨を通知いたします。
第1条(解雇の種別) 本通知は、就業規則【第〇条第〇項第〇号】に定める普通解雇に基づくものであり、懲戒処分としての解雇ではないことを確認する。
第2条(解雇日) 解雇日は【〇年〇月〇日】とする。
第3条(解雇の理由) 貴殿を解雇する理由は、次のとおりである。 1. 【職務遂行能力の著しい不足の具体的内容(例:担当業務における継続的な成果未達、期限徒過の頻発等)】 2. 【上記に対し会社が講じた改善指導の経過(例:〇年〇月〇日から〇回にわたる面談指導、業務改善計画の提示等)】 3. 【改善指導後も改善が認められなかった具体的事実】 4. 【就業規則第〇条第〇号「勤務成績又は業務能率が著しく不良であるとき」等該当条項】
第4条(改善指導の経過) 会社は、【〇年〇月〇日】から【〇年〇月〇日】までの間、次のとおり改善に向けた措置を講じたが、貴殿の勤務状況に改善が認められなかった。 1. 【業務改善計画の提示日及び内容】 2. 【面談・指導の実施日及び回数】 3. 【配置転換等の代替措置の検討結果】
第5条(解雇回避の検討) 会社は、解雇に先立ち、他部署への配置転換、業務内容の見直しその他の解雇回避措置の可能性を検討したが、【検討結果及びその理由】により実施に至らなかった。
第6条(解雇予告) 1. 本解雇は、労働基準法第20条第1項に基づき、解雇日の30日以上前に予告するものである。 2. 【予告期間が30日に満たない場合】会社は、不足日数分【〇日分】に相当する平均賃金【〇円】を解雇予告手当として、解雇日までに貴殿の指定口座に振り込む方法により支払う。
第7条(未払賃金及び退職金の清算) 会社は、解雇日までの未払賃金及び退職金規程に基づく退職金を、【支払期日】までに支払う。
第8条(貸与物の返還及び引継ぎ) 貴殿は、解雇日までに、会社から貸与された【備品・IDカード・資料等】を返還し、担当業務の引継ぎに協力するものとする。
第9条(離職票等の手続) 会社は、雇用保険被保険者離職票、源泉徴収票その他退職に伴い必要な書類を、法令に定める期限内に発行し、貴殿に送付する。
第10条(解雇理由証明書) 貴殿から労働基準法第22条に基づく解雇理由証明書の交付を請求された場合、会社は遅滞なくこれを交付する。
第11条(異議申立ての窓口) 本通知の内容について異議がある場合は、【〇年〇月〇日】までに【会社の担当部署・連絡先】に書面で申し出ることができる。
第12条(守秘義務) 貴殿は、在職中に知り得た会社の営業秘密その他の機密情報について、退職後も第三者に開示又は漏えいしてはならない。
以上
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 会社の立場から
A-1 改善指導の経過を厚く記載する条項 「会社は、〇年〇月から〇回にわたり業務改善計画に基づく個別指導を実施し、各回の指導内容及び貴殿の対応状況を記録した書面を貴殿に交付済みである。」 一言解説: 会社は、能力不足を理由とする解雇が労働契約法第16条の客観的合理性・社会的相当性を欠くと判断されるリスクを最も警戒する立場にあり、改善機会の付与とその記録を厚く残すことで解雇の正当性を基礎づけたい。
A-2 解雇回避努力の記載を具体化する条項 「会社は、貴殿について〇部門への配置転換の可能性を検討したが、当該部門に欠員がなく、かつ貴殿の適性が業務内容と合致しないと判断したため、配置転換を実施しないこととした。」 一言解説: 会社としては、配置転換等の代替措置を検討したという事実だけでなく、検討の具体的経過と結論に至った理由を記載することで、解雇が最終手段であったことを説明できるようにしたい。
B節: 対象労働者の立場から(受領時の確認・対応の視点)
B-1 解雇理由の具体性を求める記載 「本通知に記載された解雇理由について、具体的な事実(日時、業務内容、評価基準)の開示を求める。」 一言解説: 対象労働者の立場では、解雇理由が抽象的な評価にとどまり具体的事実に基づかない場合、解雇の客観的合理性を争う余地があるため、労働基準法第22条に基づく解雇理由証明書の請求を通じて具体的事実の開示を求めることが重要になる。
B-2 改善指導の実態に関する確認事項 「会社が主張する改善指導の実施日、指導内容、貴殿の対応について、当時のやり取りの記録(メール、面談メモ等)の有無を確認する。」 一言解説: 対象労働者としては、会社が主張する指導経過が実態と乖離している場合、指導が形式的であったこと(改善の機会が実質的に与えられなかったこと)を示す証拠を確保しておくことが、後の争いにおいて重要な意味を持つ。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面 能力不足、傷病による就業困難、適格性の欠如など、懲戒処分に該当しない事由により労働契約を終了させる場合に用いる。就業規則上の普通解雇事由に該当する具体的事実が存在し、かつ改善のための機会を一定程度付与した経過がある場合に使用を検討する。
使ってはいけない場面 経営上の必要性(人員削減)を理由とする解雇には用いるべきではなく、その場合は整理解雇として四要素(人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、手続の相当性)に基づく別個の判断枠組みで対応する必要がある。また、懲戒事由に該当する非違行為を理由とする場合は懲戒解雇又は諭旨解雇の手続によるべきであり、本書式を懲戒解雇の代替として使うことも避けるべきである。改善指導や配置転換の検討を全く行っていない段階での解雇実施も避けるべきである。
解説: 判断枠組みと根拠法令 労働契約法第16条は、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効とする旨を定めている。能力不足を理由とする普通解雇においては、単に成果が基準に達しないという事実だけでなく、会社が改善の機会(指導、教育、配置転換等)を相当程度付与したにもかかわらず改善が見られなかったという経過が重視される傾向にある。手続面では、労働基準法第20条に基づき、解雇の30日以上前の予告又は平均賃金に基づく解雇予告手当の支払いが必要となる。また、同法第22条に基づき、労働者から請求があった場合には解雇理由証明書を交付する義務がある。就業規則に定める解雇事由への該当性を欠く解雇は、就業規則自体との整合性の観点からも問題となり得る。
よくある失敗と対策 1. 解雇理由を抽象的な評価語(「能力不足のため」等)のみで記載し、具体的事実を欠く失敗。対策として第3条のように具体的な業務内容・期間・指導経過を記載する。 2. 改善指導や配置転換の検討過程を記録せず、解雇通知時になって初めて経過を主張する失敗。対策として日頃から面談記録・改善計画書を作成・保存し、通知書にも経過を反映させる。 3. 解雇予告手続(労働基準法第20条)を欠落させる失敗。対策として第6条のように予告期間又は予告手当の支払いを明記する。
個別事案は専門家に確認のうえ、就業規則の解雇事由該当性及び改善指導の実態を踏まえて記載内容を調整されたい。
第4部: 使用前チェックリスト
- 解雇理由が就業規則上の普通解雇事由に具体的に該当しているか確認したか
- 解雇理由を抽象的な評価語のみでなく具体的事実で記載しているか
- 改善指導・教育の実施経過(日時・内容・回数)を記録しているか
- 配置転換その他の解雇回避措置の検討経過を記載しているか
- 懲戒解雇事由との混同がないか(非違行為ではなく能力・適格性の問題であるか)確認したか
- 労働基準法第20条に基づく解雇予告又は予告手当の手続を確認したか
- 解雇理由証明書の交付請求への対応体制を整えているか
- 未払賃金・退職金の精算方法と支払期日を明記したか
- 貸与物返還・引継ぎ・守秘義務の条項を含めているか
- 整理解雇に該当する事案でないこと(経営上の人員削減目的でないこと)を確認したか