建物の所有を目的として土地を貸す通常の借地契約書。借地借家法第3条の存続期間30年、第5条の更新、第13条の建物買取請求権を前提に地代や増改築を定める。

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普通借地権設定契約書

第1部: 書式本文

土地賃貸借契約書(普通借地権)

地主【地主氏名・名称】(以下「甲」という。)と、借地人【借地人氏名・名称】(以下「乙」という。)は、次のとおり土地賃貸借契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的) 甲は乙に対し、乙が建物を所有する目的で下記土地(以下「本件土地」という。)を賃貸し、乙はこれを賃借する。

第2条(対象土地) - 所在地: 【土地所在地】 - 地番: 【地番】 - 地目・地積: 【地目】・【地積】平方メートル

第3条(存続期間) 1. 本件借地権の存続期間は、【始期】から30年間とする。 2. 前項の期間は、借地借家法第3条に基づく最短存続期間であり、契約でこれより長い期間を定めた場合はその期間による。

第4条(建物の種類・用途) 乙は、本件土地上に木造・非堅固建物である【建物種類・用途】を所有するものとする。

第5条(地代) 1. 乙は甲に対し、地代として月額金【 】円を、毎月末日までに翌月分を甲の指定口座に振り込んで支払う。 2. 公租公課の増減、地価の変動、近隣の地代相場の変動その他の事情により、甲又は乙は、借地借家法第11条に基づき将来に向かって地代の増減額を請求することができる。

第6条(更新) 1. 本契約の存続期間満了に際し、乙が更新を請求したとき、又は期間満了後も土地の使用を継続するときは、建物がある場合に限り、借地借家法第5条及び第6条に基づき、甲に正当事由がない限り従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。 2. 更新後の存続期間は、最初の更新は20年、それ以降の更新は10年とする(借地借家法第4条)。 3. 更新に際し、乙は甲に対し更新料として【 】円を支払う。

第7条(建物の滅失・再築) 1. 存続期間中に建物が滅失した場合、乙は、甲の承諾を得て残存期間を超えて存続すべき建物を再築することができる。この場合、借地借家法第7条に基づき、甲の承諾があった日又は建物築造の日のいずれか早い日から20年間、借地権の存続期間が延長される。 2. 甲が乙の再築に承諾しない場合、乙は借地借家法第18条に基づき裁判所に借地条件変更の許可を申し立てることができる。

第8条(増改築) 乙が本件土地上の建物を増築、改築、大修繕又は建替えしようとするときは、事前に甲の書面による承諾を得るものとし、承諾に際し甲は承諾料として【 】円を請求することができる。

第9条(借地権・建物の譲渡) 1. 乙が本件借地権又は建物を第三者に譲渡しようとするときは、事前に甲の書面による承諾を得なければならない。 2. 甲がこれを拒否する場合、乙は借地借家法第19条に基づき裁判所に対し甲の承諾に代わる許可を申し立てることができる。 3. 甲が譲渡を承諾する場合、乙は甲に対し譲渡承諾料として【 】円を支払う。

第10条(契約終了時の建物買取請求) 本契約が期間満了により終了し、更新がない場合、乙は、借地借家法第13条に基づき、甲に対し建物その他の乙が権原により土地に付属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

第11条(協議事項) 本契約に定めのない事項は、甲乙誠実に協議して定める。

以上、本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。

【締結日】

甲: 【住所】 【氏名・名称】 印 乙: 【住所】 【氏名・名称】 印

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 地主向け(更新拒絶の正当事由を補強したい場合)

A-1 第6条への追加例 「甲が更新を拒絶するに当たり正当事由の判断に資する事情として、甲は本件土地の自己使用の必要性、乙の土地利用状況、これまでの経過及び甲が乙に対し提供する立退料の額を総合的に考慮するものとし、立退料の提供は正当事由を補完する一事情として扱う。」 一言解説: 借地借家法第6条の正当事由は自己使用の必要性を中心に総合判断されるため、立退料の提供が補完要素となる旨を契約書上でも整理しておくと、更新拒絶時の交渉方針が明確になる。

B節: 借地人向け(建替え承諾を得やすくしたい場合)

B-1 第8条の修正例 「乙が老朽化した建物を同一用途・同程度の規模で建替える場合に限り、甲は承諾料を【減額後の金額】に軽減するものとし、増築又は用途変更を伴う建替えについては第8条本文のとおりとする。」 一言解説: 借地人としては、単純な老朽化対応の建替えと、規模拡大や用途変更を伴う建替えを区別して承諾料の水準に差を設ける交渉をすることで、維持管理コストを抑えられる。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、建物の所有を目的として土地を貸借し、更新のある通常の借地権(普通借地権)を設定する場面で使用する。更新を排除したい場合は一般定期借地権(借地借家法第22条)や事業用定期借地権(同法第23条)を検討すべきであり、本書式は更新排除のニーズには適さない。

根拠法令は借地借家法第3条から第13条までである。第3条は存続期間を30年(これより長い期間の合意は有効)と定め、第4条は更新後の存続期間(最初の更新20年、以降10年)を定める。第5条・第6条は法定更新の要件と正当事由の考慮要素(土地利用の必要性、従前経過、利用状況、立退料提供の有無等)を定め、地主に正当事由がなければ更新を拒絶できない点が借地人保護の核心である。第7条は建物滅失・再築時の存続期間延長を、第11条は地代等増減請求権を、第13条は建物買取請求権を、それぞれ定める。第18条・第19条は増改築・譲渡について地主の承諾が得られない場合の借地非訟手続(裁判所による許可)を定めており、地主の意向のみで借地人の建替え・譲渡が一方的に阻害されない仕組みとなっている。

実務でよくある失敗の一つ目は、地主が更新料や承諾料の支払を法律上当然の権利であるかのように契約書に記載することである。更新料や承諾料の支払義務は借地借家法上の法定義務ではなく、あくまで契約(特約)に基づく合意であるため、特約として明記し、金額や算定方法を具体的に定める必要がある。

二つ目の失敗は、建物滅失後の再築について地主の承諾の有無や存続期間延長の扱いを契約書に定めておらず、再築時に紛争化することである。第7条のように、承諾手続と延長期間の起算点を明記しておくことが重要である。

三つ目の失敗は、借地人が増改築や譲渡について地主の承諾を得られない場合に借地非訟手続という法的救済手段があることを知らず、事実上土地の有効利用や換価ができなくなることである。第9条のように承諾拒否時の対応(借地非訟手続の申立て)を契約書上にも記載し、当事者双方が手続の存在を認識できるようにしておくとよい。

更新料・承諾料の相場や、正当事由の判断における立退料の水準については地域や個別事情により大きく異なるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 存続期間を30年以上で設定したか(30年未満になっていないか)
  • [ ] 更新後の存続期間(最初20年、以降10年)を契約書に反映したか
  • [ ] 更新拒絶の正当事由の考慮要素(自己使用の必要性・立退料等)を整理したか
  • [ ] 更新料・承諾料が法定義務ではなく特約に基づくことを理解し金額を明記したか
  • [ ] 建物滅失時の再築承諾手続と存続期間延長の起算点を定めたか
  • [ ] 増改築時の承諾手続と承諾料を定めたか
  • [ ] 借地権・建物の譲渡承諾手続と借地非訟手続の存在を記載したか
  • [ ] 建物買取請求権(借地借家法第13条)の扱いを確認したか
  • [ ] 地代改定(借地借家法第11条)の請求方法を定めたか
  • [ ] 一般定期借地権・事業用定期借地権など他の類型との比較検討を行ったか