ゲームの開発を外部に委託する契約書。民法第632条の請負とマイルストン検収を定め、著作権法第27条・第28条を含む権利譲渡と二次利用条件を規定。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
ゲーム開発委託契約書
第1部: 書式本文
〇〇〇〇(以下「甲」という。開発会社)と〇〇〇〇(以下「乙」という。パブリッシャー)とは、ゲームソフトウェア〇〇〇〇(以下「本ゲーム」という。)の開発について、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(目的) 甲は、民法第632条に定める請負契約として、乙が提示する企画仕様書に基づき本ゲームを開発し、これを完成させて乙に納品する。
第2条(開発範囲及びマイルストン) 1. 開発範囲は別紙の企画仕様書のとおりとする。 2. 甲は、別紙に定めるマイルストン(プロトタイプ、アルファ版、ベータ版、マスター版)ごとに成果物を乙に提出し、乙の検収を受ける。 3. 各マイルストンにおける検収基準は別紙のとおりとし、乙は検収期間内に合否を通知する。
第3条(開発委託料) 乙は、各マイルストンの検収合格を条件として、別紙に定める開発委託料を分割して甲に支払う。
第4条(仕様変更) 開発途中で乙から仕様変更の要望があった場合、その規模に応じて甲乙協議のうえ、開発委託料及び納期の見直しを行う。
第5条(権利の帰属) 1. 本ゲームのプログラム、シナリオ、キャラクターデザイン、音楽その他の構成要素にかかる著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む。)は、開発委託料の完済を条件として乙に譲渡される。 2. 甲は、著作権法第59条に定める著作者人格権を、乙又は乙が指定する者に対して行使しない。 3. 甲が本ゲームの開発に利用したミドルウェア、エンジン(ゲームエンジンを含む。)その他の汎用性のある技術要素にかかる権利は、前項の譲渡の対象外とし、その利用条件は別紙のとおりとする。
第6条(二次利用及び続編開発) 1. 乙は、本ゲームのキャラクター、世界観その他の要素を用いた続編、スピンオフ作品、商品化(マーチャンダイジング)その他の二次利用を、甲の追加の許諾を要せず行うことができる。 2. 甲が本ゲームの続編開発に優先的に関与できるか否かについては、別紙に定めるところによる。
第7条(プラットフォーム認証) 甲は、本ゲームが配信されるプラットフォーム(コンシューマー機、PC、モバイル等)の技術基準(ロットチェック、TRC等)に適合するよう開発を行う。プラットフォーム認証に不通過となった場合、甲は速やかに是正対応を行う。
第8条(バグ修正及びアップデート対応) 甲は、本ゲームのリリース後〇か月間、重大な不具合(ゲームの進行を妨げるもの、データ破損を伴うもの等)について無償で修正対応を行う。軽微な不具合及び追加コンテンツの開発については別途協議する。
第9条(景品表示法上の留意) 本ゲームにガチャ等の抽選要素を実装する場合、甲及び乙は、景品表示法上のカード合わせ(いわゆるコンプガチャ)規制その他の景品規制に抵触しない設計とするよう相互に確認する。
第10条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の履行の過程で知り得た相手方の営業上の秘密情報(未発表の企画内容を含む。)を第三者に開示してはならない。
第11条(契約不適合責任) 納品された本ゲームに契約の内容に適合しない状態がある場合、乙は民法第562条から第564条までの規定に従い、甲に対し履行の追完、報酬減額、損害賠償又は契約の解除を請求することができる。
第12条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己が暴力団その他反社会的勢力に該当せず、これらと関係を有しないことを表明し、保証する。
第13条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A. 開発会社向けの修正
A-1. マイルストン未達時の解除猶予期間の確保
修正後:「あるマイルストンが検収不合格となった場合であっても、乙は直ちに契約を解除することはできず、甲に対し是正のための合理的な期間(30日以上)を付与しなければならない。」 一言解説: ゲーム開発は仕様の解釈にずれが生じやすいため、開発途中の一時的な不合格を理由とする即時解除を避け、是正機会を確保する開発会社側の修正である。
A-2. 続編開発への優先交渉権の明記
追加条文例:「乙が本ゲームの続編を開発する場合、乙は甲に対し優先的に開発委託の交渉機会を与えるものとし、甲と同等の条件を提示する第三者がある場合を除き、甲を優先して選定するよう努める。」 一言解説: シリーズものの企画の場合、初代の開発を担った会社が続編開発から排除されることを防ぐための努力義務規定である。
B. パブリッシャー向けの修正
B-1. 二次利用の無制限化と対価不発生の明記
修正後:「乙は、本ゲームのキャラクター、世界観、シナリオその他の構成要素を用いたあらゆる二次利用(グッズ化、映像化、他媒体展開を含む。)を、甲への追加対価の支払を要せず行うことができる。」 一言解説: パブリッシャー側がIP(知的財産)としての本ゲームを幅広く展開したい場合、開発会社への追加対価の発生を防ぎ、事業展開の自由度を確保する修正である。
B-2. プラットフォーム認証不通過時の違約金条項の追加
追加条文例:「プラットフォーム認証の不通過が甲の開発上の重大な不備に起因する場合であって、これによりリリーススケジュールに遅延が生じたときは、甲は乙に対し、遅延日数に応じた違約金を支払う。」 一言解説: リリース日の遅延がマーケティング計画全体に影響するパブリッシャーにとって、開発会社の責に帰すべき遅延に対する金銭的な牽制を設ける修正である。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
使う場面/使ってはいけない場面 本書式は、パブリッシャーが企画を主導し、外部の開発会社にゲームソフトウェアの開発を委託する場面で用いる。開発会社自身が企画から販売まで一貫して行う自社パブリッシングの場合には本契約は不要であり、また、既存のリリース済みゲームの運営・保守のみを委託する場合には、別途運営保守委託契約書を用いるべきである。
根拠法令 本契約は、仕事の完成を目的とする請負契約(民法第632条)としての性質を有し、マイルストンごとの分割検収が実務上一般的である点にゲーム開発特有の特徴がある。権利処理については、ゲームソフトウェアがプログラムの著作物、キャラクターデザインが美術の著作物、シナリオが言語の著作物、音楽が音楽の著作物として、それぞれ著作権法上保護されうる複合的な著作物である点に留意が必要であり、権利譲渡にあたっては著作権法第61条第2項に基づき、同法第27条(翻案権等)及び第28条(二次的著作物の利用に関する権利)を含めて譲渡する旨を明記しなければ、これらの権利は譲渡人(開発会社)に留保されたものと推定される。ガチャ等の抽選による有償アイテム提供については、景品表示法上、絵合わせ・カード合わせの手法によって別の景品を提供する、いわゆる「コンプガチャ」が同法上の懸賞規制及び告示により実質的に禁止されている点に留意する必要がある。
実務でよくある失敗と対策 第一に、マイルストンごとの検収基準が曖昧で、「合否」の判断がパブリッシャーの主観に委ねられ、開発会社が繰り返し手戻り対応を強いられる失敗がある。第2条第3項のように検収基準を別紙で具体化し、A-1のような是正猶予期間を設けることが対策となる。第二に、著作権譲渡条項に著作権法第61条第2項の明記を欠いたため、パブリッシャーが続編やスピンオフを企画する際に、原著作物であるキャラクターの二次的著作物の利用権が開発会社に留保されたままとなっている失敗がある。第5条第1項及びB-1のように明記することが対策となる。第三に、ガチャ等の抽選要素の実装において、景品表示法上のコンプガチャ規制への該当性を検討せず、リリース後に指摘を受け大幅な仕様変更を強いられる失敗がある。第9条のように開発段階から相互確認する条項を設けることが対策となる。
コンプガチャ規制その他の景品規制への該当性はゲームの具体的な仕様によって判断が分かれるため、個別事案は専門家に確認することが望ましい。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] マイルストンごとの成果物及び検収基準を別紙で具体的に定めたか
- [ ] マイルストン不合格時の是正猶予期間を定めたか
- [ ] 著作権譲渡条項に著作権法第27条・第28条の譲渡を明記したか
- [ ] 著作者人格権の不行使特約を定めたか
- [ ] ゲームエンジン・ミドルウェアの利用条件及び権利関係を確認したか
- [ ] 続編・スピンオフ等の二次利用の範囲及び対価の要否を定めたか
- [ ] プラットフォーム認証不通過時の対応及び責任分担を定めたか
- [ ] リリース後のバグ修正対応期間及び範囲を定めたか
- [ ] ガチャ等の抽選要素における景品表示法上のリスクを確認したか
- [ ] 未発表の企画内容に関する秘密保持義務を定めたか