退去後の内装解体やクロス張替えなど原状回復工事を発注する請負契約書。民法第632条以下の請負と第636条の契約不適合責任を踏まえ、工期と追加工事を規定。

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原状回復工事請負契約書

第1部: 書式本文

【発注者】〇〇(以下「甲」という。)と【工事業者】〇〇(以下「乙」という。)は、下記物件(以下「本物件」という。)の退去後原状回復工事(以下「本工事」という。)について、次のとおり請負契約(以下「本契約」という。)を締結する。

第1条(目的) 本契約は、甲が乙に対し本物件の原状回復工事を発注し、乙がこれを請け負い完成させることを約し、甲がその報酬を支払うことを約するものとする。

第2条(工事内容) 本工事の内容は、別紙工事仕様書及び見積書記載のとおりとし、内装解体、クロス張替え、床材補修、設備の点検・修理その他甲乙が別途書面で合意した工事を含むものとする。

第3条(工期) 1. 着工日は令和〇年〇月〇日、完成引渡日は令和〇年〇月〇日とする。 2. 乙の責めに帰すべき事由により工期の遵守が困難となった場合、乙は速やかに甲へ書面で報告し、遅延損害の取扱いについて協議するものとする。

第4条(請負代金及び支払方法) 1. 請負代金は金〇〇円(消費税別)とする。 2. 甲は、着工時に代金の〇割を前払いし、残額は本工事完成引渡し後〇日以内に乙の指定口座へ振り込む方法により支払う。

第5条(追加工事及び設計変更) 1. 施工中に隠れた腐食、シロアリ被害その他当初仕様書に記載のない工事の必要が判明した場合、乙は直ちに甲に報告し、追加代金及び工期延長の要否について書面で協議のうえ合意する。 2. 甲乙間の書面合意なく行われた追加工事の代金は、乙は甲に請求できないものとする。

第6条(契約不適合責任) 1. 引き渡された本工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、甲は乙に対し、民法第562条から第564条までの規定に従い、目的物の修補、代金減額、損害賠償又は契約の解除を請求することができる。 2. 前項の権利は、甲が契約不適合を知った時から1年以内にその旨を乙に通知しない場合、民法第637条の定めるところにより行使することができなくなる。

第7条(検査及び引渡し) 1. 乙は本工事完成後、甲に対し完成検査の実施を求めるものとする。 2. 甲は検査の結果、契約内容に適合すると認めたときは、引渡書に署名押印のうえ本物件の引渡しを受ける。

第8条(産業廃棄物の処理及び発注者所有物の取扱い) 1. 乙は、本工事に伴い発生する産業廃棄物を廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づき適正に処理するものとする。 2. 本物件内に残置された甲又は前入居者の所有物については、事前に甲乙間で処分方法を取り決めるものとする。

第9条(第三者に対する損害) 乙は、本工事の施工に伴い第三者(隣接住戸の居住者等を含む。)に損害を与えたときは、自己の責任と負担においてこれを賠償するものとする。

第10条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の履行を通じて知り得た相手方の営業上・個人情報を、相手方の事前の書面承諾なく第三者に開示してはならない。

第11条(反社会的勢力の排除) 甲及び乙は、自己又は自己の役員が暴力団員等反社会的勢力に該当しないことを表明し、将来にわたっても該当しないことを確約する。

第12条(解除) 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、相当期間を定めた催告後もその違反が是正されない場合、本契約を解除することができる。

第13条(協議事項) 本契約に定めのない事項又は疑義が生じた事項については、甲乙誠実に協議のうえ解決する。

第14条(合意管轄) 本契約に関する紛争については、本物件所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン

A節: 発注者(オーナー・借主)向け

A-1 第4条第2項の修正例 「甲は、着工時に代金の3割、中間検査合格時に3割、完成引渡し後10日以内に残額を支払う。」 一言解説: オーナーが前払い比率を下げ、出来高に応じた分割払いにすることで、業者の未完成放棄・倒産リスクを分散できる。

A-2 第6条第2項の追記例 「なお、乙は本工事完成引渡し後2年間、契約不適合の有無について自主点検を実施し、甲に報告する。」 一言解説: 通知期間を法定の1年より実質的に延ばす代わりに、業者側の自主点検義務を課すことで発注者の負担を軽減する運用が可能である。

B節: 工事業者向け

B-1 第5条第1項の修正例 「甲が追加工事の要否について3営業日以内に回答しない場合、乙は当初仕様書の範囲で施工を継続し、追加費用は発生しないものとみなす。」 一言解説: 発注者の意思決定遅延による工期遅延・追加費用未精算を防ぐため、みなし合意条項を設けることが業者側の防御として有効である。

B-2 第3条第2項の修正例 「甲の指示変更、追加工事の発注、天災その他乙の責めに帰さない事由による遅延日数は、工期に自動的に加算するものとする。」 一言解説: 業者側から見ると、発注者起因の遅延まで自社の債務不履行とされることを避けるため、工期加算の根拠を明記しておく必要がある。

第3部: 書き方と法的ポイント解説

本書式は、賃貸物件の退去に伴い発注者(オーナーや転貸人である借主)が工事業者へ原状回復工事を発注する場面で使用する。逆に、賃借人が賃貸人に対して原状回復義務の履行として自ら業者を手配する場合や、建物の大規模修繕・リフォーム全般など請負代金の規模や工事範囲が大きく異なる場合には、本書式をそのまま流用せず、工事内容に応じた別途の請負契約書を用いるべきである。

根拠法令としては、民法第632条(請負)により、乙が仕事を完成することを約し甲がその報酬を支払うことを約することで請負契約が成立する。工事目的物に契約内容との不一致があった場合の責任については、民法第636条が、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた契約不適合について請負人は原則として責任を負わない旨を定めており、隠れた瑕疵が既存建物の経年劣化に起因するのか施工不良に起因するのかを区別する必要がある。また、契約不適合責任の具体的内容は民法第559条により売買の規定(第562条から第564条)が準用され、通知期間については第637条が適用される。

実務上よくある失敗の第一は、工期と追加工事の取扱いを曖昧にしたまま口頭で施工範囲を拡大し、完成後に追加代金の請求可否をめぐって紛争化することである。本書式第5条のように、追加工事は必ず書面合意を要件とし、無承諾の追加工事代金は請求できない旨を明記することで防止できる。第二に、原状回復工事の場合は前入居者の残置物や産業廃棄物の処理責任の所在が不明確になりやすく、後日不法投棄や処分費用の請求をめぐるトラブルに発展することがあるため、第8条のように処理主体と根拠法令を明記しておくことが望ましい。第三に、検査・引渡しの手続を定めずに代金を支払ってしまい、契約不適合の主張が事実上困難になるケースもあるため、第7条のような検査手続を必ず設けるべきである。個別の工事内容や取引金額によって適切な条項の調整は異なるため、実際の契約締結にあたっては専門家に確認することを推奨する。

第4部: 使用前チェックリスト

  • [ ] 本物件の所在地・区画・工事範囲が仕様書と一致しているか確認したか
  • [ ] 請負代金の内訳(材料費・施工費・諸経費)を見積書で確認したか
  • [ ] 着工日・完成引渡日を具体的な日付で記載したか
  • [ ] 前払金・出来高払い・完成後払いの比率が自社のリスク許容度に合っているか
  • [ ] 追加工事が発生した場合の書面合意手続を明記したか
  • [ ] 契約不適合責任の通知期間及び免責範囲を確認したか
  • [ ] 産業廃棄物・残置物の処理責任者を明確にしたか
  • [ ] 検査及び引渡しの手続・基準を定めたか
  • [ ] 第三者への損害発生時の賠償責任の所在を確認したか
  • [ ] 反社会的勢力排除条項を挿入したか
  • [ ] 合意管轄裁判所が実務上対応可能な場所になっているか