小説や漫画を映像化するための許諾契約書です。許諾範囲、改変の可否、クレジット表示、期間と独占性、対価を規定します。押さえるべき法令上の要件を反映した記載としています。
⚠ 本書式は弁護士監修前の草稿である。監修完了まで販売・配布・公開を禁止する。 本書式は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別・具体的な法律相談に代わるものではない。
原作使用許諾契約書(映像化)
第1部: 書式本文
【原作者・出版社名称】(以下「甲」という。)と【映像製作者名称】(以下「乙」という。)は、甲が権利を有する別紙記載の小説・漫画作品(以下「原作」という。)を乙が映像作品として翻案・製作・利用することに関し、次のとおり原作使用許諾契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(定義) 本契約において「対象作品」とは【対象作品のタイトル】を、「映像化作品」とは対象作品を原作として乙が製作する【映像の種類:劇場用映画・連続ドラマ・配信シリーズ等】をいう。
第2条(許諾の付与) 甲は乙に対し、対象作品について著作権法第27条に定める翻案権及び同法第28条に定める二次的著作物の利用に関する権利の行使を含め、映像化作品を製作、複製、上映、放送、配信及び頒布する権利を許諾する。
第3条(許諾の範囲) 1 本許諾は【独占的・非独占的】とし、許諾地域は【許諾地域】、許諾期間は第6条の定めるところによる。 2 乙は、甲の事前の書面による承諾なく、第三者に対し本許諾に基づく権利の全部又は一部を再許諾してはならない。
第4条(改変) 1 乙は、映像化作品の製作にあたり、脚色、場面設定の変更、登場人物設定の変更その他の改変を行うことができる。ただし、【原作のタイトル・世界観・主要登場人物の人物設定・結末】に関する改変については、事前に甲の書面による承諾を得るものとする。 2 甲は、前項の承諾に際し、著作権法第20条に定める同一性保持権を有することを踏まえ、原作の本質的な特徴を著しく損なう改変について異議を述べることができる。
第5条(氏名表示) 乙は、映像化作品の本編クレジット、宣伝物及び広告において、著作権法第19条に基づき、甲が別途指定する表示方法により原作者の氏名及び原作の題号を表示する。
第6条(許諾期間) 本許諾の期間は本契約締結日から【〇年間】とする。期間満了の【3か月】前までに甲乙いずれからも書面による終了の申出がない場合、本許諾は同一条件で【1年間】自動更新されるものとし、以後も同様とする。
第7条(対価) 1 乙は甲に対し、本許諾の対価として、契約一時金【金額】円を【支払時期】までに支払う。 2 乙は甲に対し、映像化作品の興行収入又は配信収益に応じ、【料率】%の二次的対価を四半期ごとに精算し支払う。
第8条(二次利用及び関連商品化) 映像化作品を原作とする書籍化、舞台化、キャラクター商品化その他の二次利用については、本契約の対象に含まれず、甲乙別途協議のうえ書面により定める。
第9条(原作者の監修) 甲は、脚本の骨子及び最終稿、キャスティングの主要な方針について、乙から提示を受けたうえで意見を述べることができる。乙は、甲の意見を尊重するよう努めるが、甲の意見に法的拘束力があるのは第4条第1項ただし書に定める範囲に限る。
第10条(権利の帰属) 1 対象作品に関する著作権は本契約による許諾によっても甲に留保される。 2 映像化作品に関する著作権(著作権法第28条の権利を含む。)は乙に帰属する。ただし、乙による映像化作品の利用は、本許諾の範囲を超えて原作の著作権を侵害するものであってはならない。
第11条(表明保証) 甲は、対象作品が甲の創作に係る著作物であり、第三者の著作権その他の権利を侵害しないことを表明し保証する。
第12条(契約解除) 甲又は乙は、相手方が本契約に違反し、催告後【14日】以内に是正されないときは、本契約を解除することができる。
第13条(秘密保持) 甲及び乙は、本契約の締結及び履行を通じて知り得た相手方の営業上又は技術上の秘密を、相手方の書面による承諾なく第三者に開示してはならない。
第14条(損害賠償) 甲又は乙が本契約に違反し相手方に損害を与えた場合、違反当事者は相手方に対しその損害を賠償する責任を負う。
第15条(協議・合意管轄) 1 本契約に定めのない事項及び本契約の解釈に疑義が生じた事項については、甲乙誠実に協議のうえ解決する。 2 本契約に関する紛争については、【管轄裁判所】を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙記名押印のうえ各1通を保有する。
【契約締結日】
甲(原作者・出版社) 住所: 名称: 代表者: 印
乙(映像製作者) 住所: 名称: 代表者: 印
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節 原作者・出版社の立場から有利にする修正
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改変制限の強化(第4条の書き換え) 「乙は、対象作品の主要な設定・結末を改変する場合、甲の書面による事前承諾を得るものとし、承諾がない改変が判明した場合、甲は映像化作品の公開差止めを求めることができる。」 一言解説: 差止め請求権を契約上明記することで、著作権法20条の同一性保持権侵害を待たずに契約違反として早期に対応できるようにする。
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対価の最低保証額の追加(第7条の書き換え) 「乙は甲に対し、二次的対価の多寡にかかわらず、年間最低保証額【金額】円を下回らない金額を支払う。」 一言解説: 興行不振時にも原作者の収入を確保する。
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再許諾の禁止強化(第3条の書き換え) 「乙は、いかなる名目によっても、本許諾に基づく権利を第三者に譲渡又は再許諾してはならない。」 一言解説: 権利の又貸しによる管理不能状態を防ぐ。
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監修権限の実質化(第9条の書き換え) 「乙は、脚本の各稿を甲に提示し、甲が【10営業日】以内に修正意見を述べた場合、乙は当該意見を反映するよう誠実に検討し、対応結果を甲に書面で回答する。」 一言解説: 単なる意見聴取に留まらず、回答義務を課すことで監修の実効性を高める。
B節 映像製作者の立場から有利にする修正
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改変裁量の拡大(第4条の書き換え) 「乙は、映像作品としての表現上の必要に応じ、場面設定、時代設定及び登場人物の性別・年齢を含む改変を行うことができるものとし、甲の事前承諾を要する範囲は原作の題号及び主人公の人物像の根幹に限る。」 一言解説: 承諾を要する範囲を限定し、制作の柔軟性を確保する。
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独占的許諾期間の長期化(第6条の書き換え) 「本許諾の期間は【10年間】とし、期間中、甲は第三者に対し対象作品の映像化を目的とする許諾を行わない。」 一言解説: 長期の独占許諾により、続編・シリーズ展開の投資回収を可能にする。
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対価の後払い・成功報酬化(第7条の書き換え) 「契約一時金は支払わず、乙は甲に対し、映像化作品が興行収入【金額】円を超えた場合に限り、超過額の【料率】%を対価として支払う。」 一言解説: 初期投資リスクを抑え、収益連動型の対価構造にする。
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二次利用権のオプション化(第8条の書き換え) 「乙は、映像化作品を原作とする続編・スピンオフの製作について、甲に対し優先交渉権を有し、甲は正当な理由なく協議を拒否してはならない。」 一言解説: シリーズ展開の芽を事前に確保する。
第3部: 書き方と法的ポイント解説
本書式は、小説・漫画等の既存著作物を原作として映画・ドラマ・配信作品等に翻案する際の許諾条件を定めるために用いる。原作者が個人か出版社かにより権利処理の窓口が異なるため、出版社経由で許諾を取得する場合は、出版契約における二次利用条項の有無を事前に確認する必要がある。逆に、原作の著作権が共同著作物である場合や、原作者以外に脚本協力者が既に関与している場合には、本書式のみで権利処理が完結しないため、権利関係を個別に精査したうえで使用すべきである。
根拠法令として、著作権法第27条は翻案権を、第28条は二次的著作物の利用に関する原著作者の権利を定めており、映像化そのものが翻案に該当することから、原作者の許諾なく映像化作品を利用することはできない。また、第20条の同一性保持権及び第19条の氏名表示権は著作者人格権であり、譲渡になじまない権利であるため、契約上は権利の譲渡ではなく行使の同意という形で処理する必要がある。
よくある失敗として、第一に、許諾範囲を「映像化」とだけ記載し、配信・海外展開・二次利用の可否が不明確になるケースがある。対策として、第1条の定義条項で映像化作品の種類(劇場公開・地上波放送・配信・海外配給の別)を具体的に列挙し、第3条で許諾地域を明記することが望ましい。第二に、改変の範囲について「原作のイメージを損なわない範囲」といった抽象的な合意にとどめた結果、公開直前に紛争化する例がある。対策として、第4条のように事前承諾を要する改変対象(タイトル・結末・主要人物設定等)を具体的に列挙することが有効である。第三に、対価条項を一時金のみとし、ヒットした場合の収益還元がないまま契約してしまう失敗もある。第7条のように興行収入・配信収益連動の二次的対価を設けることで、双方の利害を長期的に一致させることができる。なお、契約書の解釈や個別の紛争対応については、専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 対象作品の著作権者(個人か出版社か)を特定し、権利者本人が契約当事者になっているか確認したか
- [ ] 共同著作物・原作協力者など第三者の権利が及んでいないか確認したか
- [ ] 許諾が独占的か非独占的かを明記したか
- [ ] 許諾地域(国内限定か海外配給を含むか)を明記したか
- [ ] 映像化作品の種類(劇場公開・放送・配信等)を具体的に列挙したか
- [ ] 事前承諾を要する改変の範囲(タイトル・結末・主要人物設定等)を具体的に定めたか
- [ ] クレジット表示の方法・順序・文字サイズについて甲乙で合意したか
- [ ] 対価が一時金のみか、興行・配信収益連動の二次的対価を含むかを明確にしたか
- [ ] 許諾期間及び更新条件(自動更新の有無)を定めたか
- [ ] 二次利用・スピンオフ・商品化に関する優先交渉権の要否を検討したか
- [ ] 解除事由と催告期間を具体的に定めたか
- [ ] 合意管轄裁判所を明記したか