勤務地や職務を限定して採用する企業向け。転換手続や処遇差の根拠を定め、労働契約法第4条の趣旨と2024年改正の労働条件明示義務に対応します。
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限定正社員(勤務地・職務限定社員)規程
第1部: 書式本文
第1条(目的) 本規程は、【株式会社〇〇】(以下「会社」という。)が、勤務地又は職務内容を限定して雇用する正社員(以下「限定正社員」という。)の労働条件、通常の正社員(以下「無限定正社員」という。)との相互転換の手続及び処遇の決定方法を定め、多様な働き方の選択肢を確保することを目的とする。
第2条(定義) 1. 「勤務地限定正社員」とは、就業の場所を【本社及び〇〇支店等、具体的な事業場】に限定して雇用契約を締結する正社員をいう。 2. 「職務限定正社員」とは、従事する職務の内容を【 】の職種に限定して雇用契約を締結する正社員をいう。 3. 前2項の限定の内容は、雇用契約書及び労働条件通知書に明記する。
第3条(適用対象) 本規程は、限定正社員として採用され、又は無限定正社員から限定正社員へ転換した従業員に適用する。
第4条(限定の内容と労働条件明示) 会社は、限定正社員の採用及び転換に際し、労働基準法第15条及び労働基準法施行規則第5条に基づき、就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含め、書面又は電磁的方法により労働条件を明示する。
第5条(配置転換の範囲) 1. 勤務地限定正社員に対しては、本人の同意なく、第2条第1項に定める事業場を超える転勤を命じない。 2. 職務限定正社員に対しては、本人の同意なく、第2条第2項に定める職種を超える配置転換を命じない。 3. ただし、事業所の廃止その他やむを得ない事業上の事由がある場合は、会社は本人と協議のうえ、配置転換又は退職勧奨等の取扱いを検討することができる。
第6条(賃金) 1. 限定正社員の基本給は、無限定正社員の基本給水準から、勤務地又は職務の限定に応じて【 】パーセントを控除した額を基準として定める。 2. 前項の控除割合は、限定の範囲、転勤の免除により会社が負担を回避できる異動コスト等を考慮のうえ合理的な範囲で定めるものとし、賃金規程第【 】条に定める。
第7条(賞与・退職金) 限定正社員の賞与及び退職金の算定は、賃金規程及び退職金規程の定めるところにより、無限定正社員との職務内容、責任の程度及び人材活用の仕組みの差異に応じた合理的な内容とする。
第8条(無限定正社員への転換) 1. 限定正社員は、勤続【 】年以上経過した後、無限定正社員への転換を希望するときは、所定の転換試験又は面談を経て、会社の承認を得て転換することができる。 2. 会社は、少なくとも年【 】回、転換の希望を確認する機会を設ける。
第9条(無限定正社員から限定正社員への転換) 1. 無限定正社員は、育児、介護、その他会社が認める事情があるときは、限定正社員への転換を申し出ることができる。 2. 会社は、業務上の支障がない限り、前項の申出を承認する。
第10条(転換に伴う労働条件の変更) 転換が承認されたときは、会社は転換の日から適用される労働条件を記載した労働条件通知書を交付し、転換前の労働条件は転換の日をもって終了する。
第11条(人事評価) 限定正社員の人事評価は、職務の範囲及び責任の程度に応じた評価基準により行い、無限定正社員と異なる評価基準を用いる場合は、その内容を評価規程に明記する。
第12条(教育訓練) 会社は、限定正社員に対し、その職務又は勤務地における職務遂行に必要な教育訓練を、無限定正社員に準じて実施する。
第13条(記録の管理) 会社は、限定正社員の限定内容、転換の経緯及び処遇決定の根拠を書面又は電磁的記録により保存する。
第14条(改廃) 本規程の改廃は、就業規則の変更手続に準じて行う。
第15条(附則) 本規程は【西暦年】年【 】月【 】日から施行する。
第2部: 立場別・場面別の書き換えパターン
A節: 勤務地限定型向け(転勤のない働き方を制度化したい企業)
A-1 第5条第1項の修正例 「勤務地限定正社員に対しては、本人の同意なく、就業の場所を【通勤圏内、片道〇〇分以内】の事業場を超えて変更しない。ただし、本人が希望する場合はこの限りでない。」 一言解説: 勤務地の限定範囲を通勤時間等の客観的基準で明示すると、事業場の統廃合時の運用トラブルを避けやすい。
A-2 第6条第1項の修正例 「勤務地限定正社員の基本給は、無限定正社員の基本給水準から【5】パーセントを控除した額を基準とする。ただし、控除の適用は転換後【 】年間の激変緩和措置を設ける。」 一言解説: 控除割合を明示しつつ緩和措置を設けることで、転換直後の急激な賃金低下による紛争リスクを抑えられる。
B節: 職務限定型向け(専門職・特定職種を限定雇用する企業)
B-1 第2条第2項の修正例 「職務限定正社員とは、【経理職、システムエンジニア職等】の資格・専門性を要する職種に限定して雇用契約を締結する正社員をいう。当該職務が廃止された場合の取扱いは第5条第3項による。」 一言解説: 職務限定の対象を資格・専門性で特定すると、職務消滅時に配置転換を命じられない範囲が明確になり、整理解雇の要件検討にも資する。
B-2 第11条の修正例 「職務限定正社員の人事評価は、当該職務に固有の専門性及び成果を基準とする評価項目を設け、無限定正社員向けの管理職登用を前提とした評価項目は適用しない。」 一言解説: 職務限定型では昇進の仕組みが無限定正社員と異なることが多く、評価基準を別建てにすることで処遇差の合理性を説明しやすくなる。
第3部: 書き方と法的ポイントの解説
本規程を導入すべき場面は、転勤や職種転換を望まない従業員のニーズに対応し、多様な人材の定着を図りたい企業、あるいは既に事実上勤務地や職務を固定して採用しているにもかかわらず、その根拠が雇用契約書のみで社内規程として整備されていない企業である。逆に、事業所が単一で転勤自体が想定されない企業や、少人数で職種の垣根なく全員が同一の業務に従事する体制の企業では、限定正社員制度を新設してもかえって区分管理の負担が増すだけとなる場合があり、導入の要否を慎重に検討すべきである。
根拠法令としてまず重要なのは、労働契約法第4条であり、同条は労働契約の内容についてできる限り書面により確認することを求めており、限定の範囲を曖昧にしたまま契約すると後の配置転換命令の効力を巡る紛争の火種となる。また、2024年4月施行の労働基準法施行規則第5条の改正により、労働条件通知書には就業の場所及び従事すべき業務の「変更の範囲」を明示することが義務付けられており、第4条はこれに対応するものである。処遇差については、限定正社員と無限定正社員の労働条件の相違が不合理でないことが求められ、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮した合理的な説明ができるよう、第6条・第7条のように賃金・賞与・退職金の算定根拠を規程上明確にしておく必要がある。
実務でよくある失敗の一つ目は、限定の範囲(事業場・職種の特定)を雇用契約書に記載せず口頭合意のみで運用し、事業所閉鎖時に配置転換を命じたところ、限定合意違反として争われることである。第2条・第4条のように限定内容を書面化し労働条件通知書に反映させることで防止できる。
二つ目の失敗は、限定正社員と無限定正社員の賃金差の根拠を説明できず、控除割合が恣意的であるとして不合理性を指摘されることである。第6条のように控除割合の考慮要素を規程上明記しておくことが対策となる。
三つ目の失敗は、転換制度を設けたにもかかわらず運用実績がなく、実質的に転換の機会が存在しないと評価されることである。第8条のように転換の希望確認の頻度を具体的に定め、実際に運用することが必要である。限定範囲の設計や控除割合の水準は、業種・職種によって適正な範囲が異なるため、個別事案は専門家に確認することを推奨する。
第4部: 使用前チェックリスト
- [ ] 勤務地限定・職務限定の範囲を具体的な事業場名・職種名で特定したか
- [ ] 労働条件通知書に就業の場所・業務の変更の範囲を明示する体制があるか
- [ ] 配置転換命令が及ぶ範囲と、及ばない範囲を明確に区分したか
- [ ] 事業所廃止等やむを得ない事由が生じた場合の取扱いを定めたか
- [ ] 賃金の控除割合とその算定根拠(異動コストの有無等)を明記したか
- [ ] 賞与・退職金の算定における処遇差の合理性を説明できる規程としたか
- [ ] 無限定正社員への転換手続と頻度を定めたか
- [ ] 無限定正社員から限定正社員への転換の申出事由を定めたか
- [ ] 限定区分ごとに評価基準・教育訓練の実施方法を整理したか
- [ ] 限定内容・転換経緯の記録管理方法を定めたか